第3章 「妖精王の逆襲と応援」
海風を切り裂くように、
ドォン――!!!
戦車砲が空へ向けて威嚇射撃を放った。
轟音は空気を震わせ、花畑の妖精たちの耳をつんざき、森の小動物たちが一斉に木陰へ逃げ込んだ。
「ひぃっ……!」「あれ、なんだよぉ……!」
妖精たちは光を震わせながら、砂浜に押し寄せる鉄の軍勢を見つめる。
海岸線にはオレルアン兵士たちが整然と並び、黒い防弾装甲の上で銃を構えている。
その背後では戦車が三両、ゴゴゴゴと地面を振動させながら前進し、
油と鉄の匂い、エンジンの唸りが妖精島の澄んだ空気を蹂躙するように広がっていった。
「マテ、マテーー!! ココ、妖精ノ島ァ!! 入ッテ、ダメヨォ!!」
妖精王がカタコトの日本語で叫び、
その杖から柔らかな光が溢れ出す。
光の波が兵士たちに向かって広がった。
しかし
「第一小隊、盾構え! 妖精型生物を下がらせろ!」
オレルアン兵士たちが瞬時に防御姿勢を取る。
戦車が砲塔をわずかに傾け、その巨体が妖精王を睨みつけた。
パァン!!
至近距離で炸裂したスタングレネードの閃光。
妖精王の光が一気にかき消され、王は空中でぐらりと傾き、慌てて羽ばたいて体勢を立て直す。
「ウワァァァん!! 眩しイ!! キライ、兵器!!」
「妖精王さま!!」
リーナが泣きながら飛び寄るが、その直後
妖精たちが必死に反撃する。
光の矢、花粉の嵐、つむじ風、小枝や花びらが魔力を帯びて舞う。
「島ヲ荒ラスナ! 帰レッ!!」
「妖精群島、妖精ノ物!!」
「人間のドデカイ鉄クズ、イラナイ!!」
しかし、どれも兵士たちには通じなかった。
重装甲に弾かれ、光は散り、花粉の嵐は大型ファン付きヘルメットに吸い込まれ、
つむじ風は戦車のエンジンの熱気にかき消された。
オレルアン兵士が拡声器で叫ぶ。
「島の管理権はロシアンホールディングスCEO、プーチン・オレルアンに帰属する! 妖精型住人はただちに退避せよ!」
「ダレガ決メタァ!? ワシ聞イテナイヨ!!」
また妖精王が泣き叫ぶ。
兵士たちは迷いもなく前進し、
シールドで妖精たちを押しのけ、
ネット銃で捕まえ、
バタバタと袋小路へ追い詰めていく。
リーナも怯えながら言った。
「こわい……タクミ、どうにかして……! 妖精たち、もう限界なの……!」
茂みからタクミ、ヴァン、カーミラ、ミラが姿を現し、
地面の揺れ、炸裂音、妖精たちの悲鳴を目の当たりにする。
タクミは歯を食いしばった。
「くそ……これが資本力と軍事力の暴力……!」
「やりすぎだろ、プーチン……!」
ヴァンが低く唸る。
「中二病でもこれは怒る……完全に侵略じゃねぇか……!」
カーミラは静かに拳を握った。
「妖精たちを泣かせた者は許さない……」
ミラも震えながら言う。
「タクミさん、交渉しかありません……正面から戦っても勝てません……!」
タクミは深呼吸し、前へ踏み出した。
戦車の影の下、黒いコートを風になびかせながら、
プーチン・オレルアンがタクミの前へ歩み出る。
「やぁ、タクミくん。久しいな。」
その声は重く、冷たく、そして満足げだった。
「ここは妖精の島だ! あんたが勝手に踏み荒らしていい場所じゃない!」
タクミは震える拳を握りしめて叫ぶ。
プーチンは口元だけで笑った。
「君こそ知らねばならない。土地とは、力が持つ者のものだ。
資金、兵力、技術――どれも私が上だ。
つまり、妖精島は私のものになる。」
妖精たちが一斉に「帰れ! 帰れェ!!」と叫ぶが、プーチンはまったく動じない。
「気に入ったよ、タクミ。
決着をつけよう。
私のリゾートホテルと、君のフェアリーホテル……どちらが勝つか。
負けたほうが――この島を去れ。」
タクミは鋭い目で睨み返す。
「……望むところだ。」
妖精王も叫んだ。
「タクミ、負ケナイデ! ワシ、応援スル!」
そして、戦車の砲塔がゆっくりと動き、兵士たちが銃を構えたまま静止する中、
妖精島の空に奇妙な静寂が訪れた。
妖精島リゾート戦争ここに開戦。




