第9章 「詐欺ゼロ特区のリゾート開発スタート! ― だれも嘘をつけない地獄」
詐欺ゼロ特区のリゾート開発スタート!
詐欺ゼロ特区が完成した瞬間、島は静寂につつまれた。
だって
誰も嘘をつけない。
つまり、思ったことをそのまま言ってしまう。
ゆえに全員、ナイフみたいに心が痛む。言葉の暴力!
最初に沈黙を破ったのはカーミラ。
カーミラ「最低」
ミラは即座にこめかみを押さえた。
ミラ「……それ、誰に向けたんですか?」
カーミラ「全員」
タクミ「えぐっ!」
ヴァン「鋼鉄の女だな!?」
それを見て、住民たちも続々と“一言会話”を真似しはじめる。
村人A「ダサい」
村人B「顔」
村人C「態度が腹立つ」
島全体がカーミラ語=暴言一言語に染まっていく。
しかしタクミ、逆にビジネスチャンスを見出す。
ミラ「……タクミ様。この空気、終わってます」
ヴァン「社会としてギリ成立してねえ」
しかしタクミはニヤッと笑う。
タクミ「逆だよ。これ…“エンタメ”だろ?」
ミラ「は?」
ヴァン「お前の脳、どうなってんの?」
タクミ「“嘘つき放題エリア”はこれまで散々あった。でも“嘘禁止エリア”はレアなんだよ。なら…」
バンッと巨大ホワイトボードを立てる。
■詐欺地獄のテーマパーク案
①詐欺され体験アトラクション
入場者「こんにちは~」
スタッフ「あなた、今の笑顔がくそ薄いです。あと財布借ります」
入場者「普通に傷つく!」
スタッフ「返しません」
入場者「詐欺だぁぁ!」
②詐欺契約書迷路
ミラが冷静に説明する。
ミラ「最短1時間。最長“二度と出られません”」
ヴァン「ホラーか?」
中に入った観光客
「A項にサインしたらB項が消えた!?
C項に同意したらA項の裏にD項!?
出口どこ!?」
ミラ「出口は**“諦め”**です」
③“詐欺ギリ回避”スポーツ
ヴァンが実演。
スタッフ「ちょっとサインして?」
ヴァン「危ない!」
スタッフ「これなら?」
ヴァン「もっと危ない!」
スタッフ「じゃ…この無害そうな紙は?」
ヴァン「それが一番危ない!!」
観客「アツい!」
④捕まると借金が増える詐欺鬼ごっこ
逃げる観光客たち。
捕まった者「ぎゃぁぁ!!借金増えたァッ!」
スタッフ「今日はキャンペーンで二倍ですよ~」
捕まった者「なんで倍にした!!!」
タクミ「こんな感じで観光客を呼ぶ!」
ミラ「人道的にギリ…いやアウトでは?」
ヴァン「タクミ、魔王より頭が悪魔じゃない?」
カーミラは、ぼそっと言った。
カーミラ「天才」
タクミ「え、珍しく褒めた…?」
ミラ「違います。“天災”の方です」
タクミ「えぇ!?」
詐欺地獄は観光資源になる
タクミ「嘘がつけないからこそ、全部がリアル。逆にエンタメの宝庫なんだよ!」
ヴァン「いや、お前の前向きさ怖いんだわ」
ミラ「……こんな地獄を観光地に変えるなんて」
タクミ「普通にビジネスだよ?」
カーミラ「狂気」
タクミ「え、短いけど刺さる!」
こうして―
世界初の“詐欺ゼロ×詐欺テーマパーク”が誕生した。
観光客の悲鳴とリアルな誹謗中傷が響きわたる中、
島は今日も元気にカオスだった。




