第6章 「対勇者AI結界の実験とボンミッチー財閥の破綻危機」
魔王領外縁の黒鋼要塞。
タクミが開発した最新兵器対勇者AI結界システム『MAOU-D.E.F』 の試験が始まった。
塔の周囲に展開する無数の魔方陣が、ひとつ、またひとつと起動し、
AIが自律的に判断した“勇者侵入シミュレーション”に応じて、
魔界初の自動ミサイル・ドローン群が空へと解き放たれる。
ドゴォォォォォォン!!
空は爆炎と魔力光で紫に染まり、要塞全体が振動する。
タクミ「うおっ!? 想定より十倍撃ってるんだけど!!」
AI結界《敵対意思を検知。勇者型幻影に飽和攻撃を実施》
タクミ「いやAIくん、勇者1人に対して飽和攻撃やめて! 災害!!」
ミラ「タクミさん! 想定外の魔力消費で要塞の電源が落ちます!」
カーミラ「……暴走兵器は外でやれ」
そこへ
魔界経済の顔・ボンミッチー財閥総帥が、青ざめた顔で駆けこんでくる。
ボンミッチー「ちょっとタクミぃ!?
魔界の財閥系の株価相場が暴落してるんだけど!?
ウチの投資先の“魔導水力タービン会社”が倒産しそうなんだけど!?」
タクミ「え、うちのAI結界と関係あるの?」
ボンミッチー「関係大アリよ!!
勇者撃退兵器が完成寸前って情報が市場に漏れて、
“インフラ投資より軍事だ!”って資金が一斉に移動したの!!
そのせいでインフラ銘柄が死んだのよ!!」
タクミ「知らないよ!? 僕はただ結界つくっただけ!」
ミラ「市場操作のツケです」
カーミラ「……自業自得」
ボンミッチーは床にうずくまり、
「魔界一の財閥がこんな形で破綻なんて…」と嘆きだす。
そこへ、影のような足取りでドロメアが登場した。
ドロメア「財閥破綻は魔界全体にも悪影響です。
そこで、魔王家として“共同開発モデル”を提示します。」
ボンミッチー「共同開発?」
ドロメア「AI結界の量産ラインを、ボンミッチー財閥の工場と統合するのです。
軍事需要が爆増中。インフラから軍需へ事業転換すれば黒字化します。」
タクミ「え、そんな大胆なリストラ策を…」
ミラ「魔界版“国策企業化”ですね」
カーミラ「……効率的」
ボンミッチー「でも…資金が…」
ドロメアは淡々と言った。
ドロメア「魔王家が25%出資します。それ以上はしません。
資本を奪わず、依存もさせず、ちょうど良い距離で救済します。」
ボンミッチー「す、すごい…! 魔王家ってそんなに強かったの!?
てか最初から助けてよ!!」
タクミ「(うわ…やっぱこの人、魔王家の経営担当なんだ…怖っ)」
◆AI結界、試験終了
AI結界《全敵性勇者の殲滅完了。周辺の地形を更地化しました》
タクミ「ちょっと待った!? 何勝手に更地化してるの!?」
ミラ「タクミさん、地図が…地図の線が消えてます!」
カーミラ「……解体費が浮いた」
ボンミッチー「やめてぇぇぇぇ!!
うちの所有地も入ってるぅぅぅ!!」
結界は止まらず、無人でミサイルを量産し始める。
タクミ「誰か止めてぇ!! 魔王さまぁ!!」
魔王降臨、すべてを片手で沈める
バキィン!
天から黒い稲妻が落ち、AI結界の魔方陣ごと大地が静止した。
魔王「……何だ、この騒ぎは。」
その声だけで嵐が止まり、全ての魔力が凍りつく。
ヴァン「ま、魔王様…!」
グラディウス「ひぃっ……」
ボンミッチー「死ぬ…今日死ぬ…」
魔王は無言で
ヴァンの頭、グラディウスの後頭部、そしてボンミッチーのこめかみに
ゴッ!! ゴッ!! ゴッ!!
三連げんこつ。
ヴァン「ぐはぁッ!?」
グラディウス「な、なんで僕までぇぇぇ!!」
ボンミッチー「ぎゃあああああ!!」
魔王「……次、要塞を半壊させたら564(殺し)だ。わかったな?」
ヴァン・グラディウス・ボンミッチー「は、はいぃぃぃ!!」
去っていく魔王の背中を見て
タクミ「魔王様すげぇ…怖い……」
こうしてAI結界の実験は、
魔王のげんこつによって強制終了となった。




