第3章 「迷宮都市計画 vs 財閥都市計画 ― 衝突するビジョン」
魔界開発庁・中央黒曜会議室。
地獄火で赤く灯された長卓の上には、二つの巨大パネルが並んでいた。
ひとつはタクミが描いた、冒険者泣かせの入り組んだ「迷宮都市」。
もうひとつはボンミッチーが作った、金色に輝く「皇帝級ハイエンド都市」。
会議は開始5分で炎上していた。
「だからぁ!」
ボンミッチーが金扇子をバサッ!!と開いた。
「貧民街なんて い・ら・な・く・て・よ!
都市は“富裕魔族”のためのもの。高級こそ正義!」
「はいダメ~」
ミラが手を上げて即却下した。
「労働者が消えます。
誰が街を回すんです?トイレ掃除はあなたが?」
ボンミッチー「わ、私が⁉ イヤに決まってるじゃないの!」
「ほらね」
ミラが淡々とメモを取る。
ボンミッチー「金を出すのはあたしたち、魔族の貴族たちなのよ!」
ミラが反論
「金出せばなんでもいいわけじゃないのよ。低所得の魔族の反乱がおきます。」
ヴァン vs ボンミッチー
椅子に足を組んで座るヴァンが、不敵に笑った。
「貴様の傲慢――闇より黒いな」
ボンミッチー「アンタの全身真っ黒じゃない!!」
「これは闇の美学だ……分からんとは哀れよ」
「うっわ、もうヤダこの中二病!!」
火花が飛び散り、魔界会議室の気温が5℃下がった。
カーミラは机に突っ伏していた。
「……会議は眠い」
タクミ「カーミラさん!? 起きてて!今いちばん重要なとこ!」
「…………zzz」
タクミ「寝たーーーー!!」
タクミの反撃 “折衷案”
怒号と中二病が飛び交う中、タクミはゆっくり立ち上がった。
「じゃあ……こうしませんか?」
ボンミッチーもヴァンもミラも、ピタリと動きを止めた。
タクミは二つの都市案をスライドで合成する。
「都市を二層構造にします」
上層
ボンミッチー案の高級エリア(富裕魔族街、劇場、空中温泉)
下層
タクミ案の迷宮都市(冒険者誘致、観光収入、労働者街)
「表は煌びやか、裏は冒険都市。
二つが補完し合うことで、お互いの価値が上がります!」
魔界大臣たちがざわめく。
「……なるほど」
ミラは静かに頷いた。
「迷宮に観光客、上層に投資家……
確かに両立可能ですね」
ヴァン「ふん……悪くない。闇の流れが調和している」
ボンミッチー「…………ッ!
くやしいけど……採算は合うわね」
タクミ「でしょ!? だから――」
カーミラ「(寝ながら)承認……」
魔界政府「承認!」
会議室中に黒いハンコが押され、魔界都市計画はついに動き出す。
そして
会議後、ボンミッチーはタクミにそっと近づき、悔しさを滲ませながらも言う。
「……今回だけは認めてあげるわ。
でも覚えておきなさい。私はまだ諦めてないわよ」
タクミは苦笑しつつ、心の奥で燃えた。
この魔界で、本気で勝負する相手が増えた。
そして「二層構造魔界都市」は、後に歴史に残る大開発となるのだった。




