第1章 「魔界鬼怒川温泉に魔王降臨」
魔界鬼怒川温泉・山岳区に、
突如として“黒雲”が落ちた。
ドォン…!
空が裂け、魔王ラスボッスデスが降臨する。
その姿に、魔族たちは平伏したが。
タクミだけは、
温泉タオルを肩にかけて直立していた。
「魔王様、本日はようこそ。
まずは…お背中、お流ししましょうか!」
魔族全員
「人間が魔王の背中を!? 死んだな…!」
魔王は、静かにタクミを見下ろす。
「ほう。余に背中を流す人間は初めてだ。
よかろう。やってみよ」
タクミ「かしこまりました!」
カーミラは湯けむりの陰で腕を組む。
「……変な人間」
ヴァンは湯の縁に腰かけながら、
濡れた赤い瞳を細める。
「魔王の背を洗うとは…タクミ、闇の胆力だな…」
ミラ「そんな褒め方あります?」
魔王、温泉の湯へ
魔王が湯に浸かった瞬間、
温泉街の奥から輝く薔薇が飛んできた。
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
煌びやかな黒スーツに赤い薔薇。
魔界の貴公子、オイカワ・ボンミッチーが派手に登場。
「魔界に“庶民の温泉”だなんて…
聞いてないんだけど? ダッサ」
(スーツの袖を払う)
タクミ「ボンミッチーさん、今は魔王様の視察中で――」
「だ・ま・り・な・さ・い!」
(指パチン)
「魔界はもっと“高級”でなくてはダメなの。
湯治?安宿?大衆旅館?そんなの魔界の恥よ!」
カーミラ「……邪魔」
ボンミッチー「やだ、カーミラ。今日も鋼鉄で素敵ね。
でも口が悪いのは直しなさい?」
カーミラ「……黙れ」
ヴァンが立ち上がり、濡れた髪を払う。
「貴公子よ…その胸の薔薇、
闇の腐敗臭がするぜ…?」
ボンミッチー「アンタに言われたくないわ!!」
ミラ「はい喧嘩しない!」
魔王、静かに語る
魔王ラスボッスデスが目を開いた。
湯の水面が震える。
「タクミよ。
この廃墟とした温泉街を…よくぞここまで蘇らせた」
タクミ「い、いえ…魔王様のおかげで……!」
「余は実力で人を選ぶ。
人間であろうと魔族であろうと関係ない。
価値ある者を登用するだけだ」
魔王の目がタクミを射抜く。
「タクミ。
そなたを魔界開発・総責任者とする」
ボンミッチー「なっ……!?
ちょ、ちょっと待って!?
なんで“人間”が魔界の要職に!?」
カーミラ「……当然」
ヴァン「闇が選んだ男だ。文句あるか?」
ミラ「はいはいみんな静かに」
魔王は湯から立ち上がり、宣言する。
「タクミよ。
そなたの手で――
魔界を勇者アレックスに蹂躙されない“要塞都市”へ変えよ。
わが魔界を守るのは、もはや人間の知恵だ」
タクミ「…………え?」
(湯桶を落とす)
ミラ「要塞都市…!?」
カーミラ「……仕事増えた」
ヴァン「運命が、動いたな…」
ボンミッチー「いやよ! 私の魔界が庶民都市にされるなんて絶対いや!」
魔王の視線が鋭くなる。
「反対するなら、実力で証明せよ。
ボンミッチーよ。お前も開発に協力せよ」
ボンミッチー「うぐ……まじか!」
(カーミラを横目でちらっ)
「……わかったわよ」
■ こうして魔界の“都市改造チーム”が誕生した
●タクミ(開発総監)
●ミラ(魔法工学)
●ヴァン(治安維持&闇ネットワーク)
●カーミラ(実働部隊)
●ボンミッチー(財閥資金・嫌味係)
魔王が去る背中を見送りながら、タクミはつぶやいた。
「……勇者が来るたびに魔族が死ぬ?
勇者って……害虫なの?」
ヴァン「うむ。われわれ魔族にとっては害虫だ」
カーミラ「……駆除?」
ミラ「物騒な温泉街になってきましたね……」
タクミは拳を握る。
「よし……やるか。
魔界を最強の“要塞都市”にしてやる!」
タクミの魔界大改造、開幕した。




