第9章 「魔界鬼怒川温泉、再生の光」
魔界鬼怒川温泉。
かつて廃墟と化し、闇に沈んでいた街は
ついに新しい光を取り戻した。
駅前にはタクミの企画による 新生・大霊界温泉ホテル がオープン。
魔界の観光客、亡者、妖精、幽霊、人間までも行列を作るほどの盛況。
街のあちこちで笑い声が上がり、
かつて死んでいた商店街に、ようやく灯りがともった。
タクミは街の地図を広げ、
ミラ、ヴァン、カーミラに向かって宣言した。
「街全体を一つの巨大エンタメにする」
ミラが目を輝かせる。
「街全体が…一つの物語に?」
「そう。
通りも、廃ホテルも、川沿いも、すべてが“ステージ”だ。
誰もが自然に主人公になり、旅そのものが物語になる。
これが“魔界大霊界温泉物語”だ!」
タクミは指をスッと滑らせる。
「街を“天国ルート”と“地獄ルート”に分ける。
光と闇を行き来しながら、感情が揺さぶられるように設計する」
ヴァンの目が闇の奥で光る。
「……二つの世界を渡り歩く物語。
まさに、魂の旅路……美しいな」
カーミラは腕を組む。
「……卵ゆでる」
タクミ「(どういう感想だそれ…)」
■ 天国コース ― 癒しと祝福の至福空間
大浴場を改装した巨大温泉。
乳白色の光を放ち、湯の中には光の粒が舞う。
湯に入った観光客が思わず歓声を上げた。
「なにこれ……心が軽くなる…!」
「幸福感が…湯気から満ちてくる…!」
その湯には“癒やしの魔力”が仕込まれている。
空中浮遊庭園では、
風が奏でる透明な音楽が鳴り、
虹光の滝がきらめく。
ミラが説明する。
「天国コースでは、温泉に浸かると“天界ストーリー”が始まります。
精霊や神々が現れ、浄化や祝福ミッションをクリアすれば、特別な魔力を得られます」
ヴァンは湯気の中でぼそり。
「闇を知る者ほど……この光は沁みる。
俺にも……心の癒しが必要かもしれん……」
ミラ「(あ、ヴァンさん今ちょっと素直…!)」
■ 地獄コース ― 恐怖と興奮の血湧き肉躍る体験
一方、廃墟ホテル跡地の“地獄コース”では――
真っ赤な湯が爆発するように沸き立ち、
地面が振動し、黒炎が噴き上がっていた。
客「ぎゃああああああああッ!?!?」
別の客「でも…クセになるッ!!」
タクミの説明はシンプル。
「恐怖に打ち勝てば…パワーが手に入る」
炎で炙る魔界肉、黒いスープ、魂スイーツ。
禍々しいのに、食べると魔力と体力がガッツリ増す。
迷宮アトラクションでは影の怪物が襲いかかり、
火山噴火イベントでは観光客が逃げ惑う。
ヴァンは満足げだ。
「よい……実によい。
恐怖は魂を研ぎ澄ます。
この炎の中でこそ、生を実感するのだ……」
カーミラは黙って炎の中を歩き、
怪物をひと睨みして消し飛ばす。
タクミ「カーミラさん! 演出壊れる!!」
■ 食と土産の経済圏 ― 街全体が循環する
癒しの天国ルートで心と魔力を回復し、
スイーツを食べて光る土産を買う。
地獄ルートで恐怖と興奮を味わい、
魔力肉を食べて魔獣フィギュアを買う。
歩くだけで、観光客の財布と感情がゆっくり温泉街に落ちていく。
ミラは満足げに笑う。
「タクミ様…街が本当に息を吹き返しましたね」
タクミは湯気の中でようやく息をついた。
「やっと……本当に温泉に入れるなぁ…」
ミラ「今日はゆっくりしてください」
カーミラ「温泉卵、百個つくる」
タクミ「やめてカニの脚を砕いて混ぜないで!!」
ヴァン「……闇の温泉卵は……悪くない」
タクミ「(食べるんかい!)」
そのとき。
ドォォォォン!
街中に雷のような轟音が響き、
空の雲が裂けた。
魔界軍の伝令が炎を引きながら落下してくる。
「た、たたた、大変だぁぁぁぁぁぁ!!」
タクミ「え、え!? 火事!? 噴火!?」
伝令は震える声で叫んだ。
「ま、魔、魔王陛下
ラスボッスデス様が……
この街に視察に来られる!!!」
タクミ「……………………は?」
ヴァン「巨大な闇が……ついに動いたか」
ミラ「た、大変…準備を……!」
カーミラ「……掃除」
タクミ「掃除!? いやそれ優先でいいのか!?っていきなり大ピンチ?」
魔界全体を揺るがす来訪
魔王ラスボッスデス、魔界鬼怒川温泉へ降臨する知らせがタクミのもとに来るのだった。
✨第十三部 魔界鬼怒川温泉、再生プロジェクト編 完結 ✨




