第6章 「温泉水脈の秘密 ― 魔力温泉の復活」
魔界鬼怒川温泉郷の廃墟を歩くタクミたち。
解体されたホテルの瓦礫の間から、かすかに湯気が立ち上るが、かつての賑わいは影も形もない。
タクミが地図を広げる。
「この街にはまだ、水脈が残っている……でも、かなり濁ってるな」
ミラが魔力測定器を覗き込み、眉をひそめる。
「……温泉水は魔力で満たされていたけど、地脈の詰まりで浄化されていないわ。
このままでは奇跡の湯は蘇らない」
ヴァンは影を揺らしながら口を開く。
「ふふ……我が影よ、闇を浄化せよ。
血と蒸気にまみれし地獄の湯も、我が剣と魔力の前ではひれ伏すがいい……!」
タクミは苦笑する。
「いや、喋りすぎだよヴァン」
カーミラは黙って前に進み、瓦礫を鋼鉄脚で蹴飛ばす。
「……温泉」
ミラは解析を進め、温泉水脈がもたらす“魔力治癒効果”を明らかにする。
傷は数分で癒える
魂の疲労が浄化される
魔族の怨念すら中和される
「鬼怒川はもともと、魔界の治癒拠点だったのね」
タクミが地面に手を置き、水脈を探る。
「でも、詰まりすぎだ。ここを開かないと再生は始まらない」
水脈の分岐には恐ろしい“地獄湯”が広がっていた。
血の池地獄:赤い温泉に浸かれば力が増すが、生命力を奪われる
釜茹で地獄:高温の蒸気に足を取られれば死ぬ
油あげ湯:粘度の高い油で体が焦げる
中華鍋回転湯:巨大鍋が回転、入ると“あなたは調理される”
ミラが顔色を変える。
「完全放置されたら、人は入れない……」
ヴァンが影剣を揺らしながら目を輝かせる。
「ふはは……死と再生、快楽と恐怖、すべて我が影に従え!
血の池も、釜茹でも、油あげも――すべては我が“魔力浄化の儀”の前に無力だっ!」
カーミラは無言で源泉口を睨む。
鋼鉄脚で瓦礫を蹴飛ばす。
「……調理完了」
タクミとミラは残骸の中に残る魔力浄化装置を発見。
赤錆が浮き、魔力は遮断されていた。
タクミが触りながら呟く。
「うまく動けば、水脈の魔力を循環させられる……
でも失敗すれば、ここ全部、血の池になるぞ」
ミラは冷静に解析し、魔力回路を修復する。
光が流れ出し、装置が震える。
「……行くわよ」
ヴァンは影剣を掲げ、声を低く響かせる。
「我が影よ、血と魂の海を越えて、蘇れ……!
奇跡の湯よ、漆黒の力と共に我が手に!」
温泉の水面が光を帯び、泡が生き物のように踊る。
血の池地獄が赤く輝き、釜茹で地獄は蒸気を吹き上げ、油あげ湯は泡立つ。
中華鍋回転湯は恐怖と共に魔力に呑まれる。
だが、光と魔力が交錯し、奇跡の温泉が生成される。
温泉郷に、かつての湯煙と活気が蘇った。
ミラが微笑む。
「見て……魔力浄化完了。もう誰も死なないわ」
タクミも顔をほころばせる。
「これで“大霊界温泉”の第一歩だ。地獄も天国も、体験できる街になる」
カーミラは無言で拳を握る。
「……死」
ヴァンは影を揺らしながら、低く笑う。
「フフフ……この闇、永遠に私のものとなれ……」
蒸気が夜空に昇り、赤と青の光が交錯する。
地獄コースの恐怖、天国コースの癒し
二つの顔を持つ温泉郷は、ついに息を吹き返した。
タクミは瓦礫の上に立ち、街全体を見渡す。
「さあ……これから本番だ」
カーミラは無言で前に進み、ヴァンは影を揺らし、ミラは魔力を操る。
魔界大霊界温泉の物語が、今、始まった。




