第2章 「バブルの亡霊たち ― 失敗の歴史」
休暇の途中、タクミたちは魔界鬼怒川温泉の廃墟街を歩き続けた。
廃墟のホテル群を抜け、老人から聞いた唯一生き残った
旅館「たましい屋」の木製看板が目に入る。
木漏れ日に照らされた建物は古びているが、かすかな湯気が煙突から立ち上り、まだ温泉の息吹を感じさせる。
タクミ
「……ここだけが生きているか」
カーミラ
「他は壊すしかない状態ね」
ヴァン
「……生き残りに意味がある。吸血鬼的には美味しそうだが」
ミラ
「法的資料も気になるところです。廃墟の理由を整理すれば、再生の道筋も見えるかもしれません」
旅館の奥座敷に案内され、組合の残党たちが昔の記録や写真を広げる。
組合長
「うちの温泉街も、バブルの崩壊で全てが狂った……団体客が消え、維持できずにホテルが次々倒れた」
鬼怒川衰退の歴史
① バブル経済崩壊で団体客激減
巨大ホテルが林立したが、バブル崩壊で団体旅行が消滅。
維持費を賄えず、倒産の連鎖が起こった。
タクミ
「バブル期の“団体客依存モデル”……崩れると脆いんだよね」
② 老朽化問題
築50年超のホテルが増え、耐震性不足や修繕費が経営を圧迫。
さらに所有者不明の物件も多く、解体や再開発は困難だった。
ミラ
「解体にも数億……さらに所有権が分かりません。これは……再生はかなり難しいです」
③ 大震災と風評
2011年の震災も観光業に大打撃。心理的なブレーキや風評被害で、投資も途絶えた。
ヴァン
「人の心は一度離れると戻らない……闇は深い」
④ 過当競争と魅力低下
バブル期の無計画な建設ラッシュにより、競争が激化。
リブランドに失敗した施設は顧客を奪われ、廃墟化。
カーミラ
「勝てない戦いは撤退……戦いの基本」
⑤ 廃墟による景観悪化
多数の廃墟が街の景観を破壊し、観光客が戻らない。
不動産投資のリスクとしても象徴的だ。
タクミ
「これが……“負の資産スパイラル”。
再開発ができないと金も客も戻ってこない」
“たましい屋”の湯気に触れながら、タクミは目を輝かせた。
他が倒れてもここだけが生きている。
不動産投資家の勘が告げる、再生の余地はここにある、と。
カーミラ
「ふん……戦いはこれからってことね」
ヴァン
「フッ……闇を光に変えるか」
ミラ
「タクミ様、調査と戦略の準備は整いました」
タクミは微笑む。
「さあ、廃墟から温泉街を取り戻す我々の戦いの始まりだ」




