第14章 「海底都市アクア=マリーナ ― 再生と、新たなる一歩」
瓦礫と海流の渦がようやく静まり、
深海の闇に、久々に穏やかな光が差し込み始めた。
タクミたちが救助艇に揺られてアクア=マリーナへ戻ると、
そこではすでに“戦後処理”が静かに、しかし確実に動き始めていた。
海底都市の上層には報道ドローンが飛び交い、
各国の監査官が次々と降り立っていた。
レムナント社 幹部の一斉逮捕。
黒いスーツの幹部たちが拘束され、
「我々は知らない!」「計画は都市のためだ!」
と叫ぶ声が虚しく深海に消える。
タクミはその光景を冷静に見つめた。
ミラ
「ようやく……終わりましたね」
タクミ
「うん。兄弟企業の密閉ために海底都市を犠牲にした報いだよ」
ヴァンが薄く笑う。
「闇はどこにでもある……。だが、今日ひとつ、深海の闇が消えた」
カーミラは肩を回しながら、やや不満そうに呟く。
「逃げる前に殴る時間が欲しかった」
■ 国家主導の再生プロジェクト開始
アクア=マリーナの中央塔に巨大なホログラムが映し出される。
『海底都市 全面再生計画』
・耐圧フレームの刷新
・魔力炉の安全装置増設
・住区の浸水防御強化
・外郭シェルの新型魔力膜コーティング
タクミはその内容を見て、少しだけ安心した表情を浮かべた。
ミラ
「本当によかった……住民も、これで安心できます」
タクミ
「壊すのは簡単だけど、直すのは大変だからね」
ヴァン
「むしろ“壊したのは誰だ”という話だがな。フッ」
カーミラ
「タクミが直せばいい。強いし頭もいいし……全部任せた」
タクミ
「いや全部は無理!」
深海の大統領直属の官吏がタクミたちの元へ歩み寄り、
厳かに封書を差し出した。
官吏
「海底都市救済の功績を称え、
あなた方にはアクア=マリーナ区画の一部所有権が与えられます」
タクミ
「……え? 不動産? 海底に?」
ミラ
「タクミ様! わ、私たちの拠点が……!」
ヴァン
「フッ……闇の隠れ家が、またひとつ増えたな」
カーミラは不動産証書を眺めて、短く言った。
「不動産投資の任務、続行」
タクミ
「いや終わったよ!? 今ので終わったからね!?」
救助艇に荷物を積みながら、ヴァンが黒いマントを翻す。
「では次の“闇”を探しに行こうか……フッ」
タクミ
「次は闇じゃない。温泉地視察だから」
ヴァン
「……温泉?」
カーミラ
「任務?」
タクミ
「休暇!! 休暇だってば!!
温泉入って、美味しいもの食べて、寝るだけの平和な旅!!」
ミラは嬉しそうに微笑み、そっと袖を引いた。
ミラ
「タクミ様……少し、休みましょう。 私も……あなたも、もう限界です」
タクミ
「うん。やっと静かに眠れそうだ」
遠くで、巨大旗艦ホエールの残骸がゆっくり沈降していく。
深海は再び静かになり、
アクア=マリーナには新しい朝が訪れようとしていた。
タクミ
「さて……今度こそ、終わったな」
ミラ
「はい……お疲れさまでした、タクミ様」
カーミラ
「温泉……カニをゆでる?」
タクミ
「絶対にやめて!!」
ヴァン
「フッ……旅は続く。次の平和が壊れるまでは」
こうして
深海大戦を終えたタクミたちは、
新たな安息と未来へ向けて歩き出すのだった。
✨第十二部 海底都市編編 完✨




