第13章 「決戦・深海王ホエール ― 壊滅と終焉」
――白光。
魔力逆流が発動した瞬間、旗艦内部は昼の太陽のような光に包まれた。
ホエールの巨体の至るところから、魔力の噴射が逆流し、血ではなく
紅く泡立つ魔力海が噴き上がる。
「ぐ、ぅ、がああああああああッッ!!!」
深海王の咆哮が空洞に響き渡り、その声だけで金属がひび割れる。
巨体が膨張し――次の瞬間。
ドォォォォンッドォォォォンッ!!!ドォォォォンッ!!!!!!
腹部から爆発。
背中から爆発。
首から爆発。
まるで火山が連続噴火しているかのように、
ホエールの体内から魔力が破裂し続けた。
「タクミ様! 今のうちに逃げ――っ!?」
ミラが言いかけたその瞬間、
爆発の衝撃で艦内の巨大支柱がねじ切れ、
天井が落下してくる。
タクミたちは転がり、必死で死を避ける。
旗艦はもう“船”ではない。
崩れゆく魔力火山の心臓部だ。
だが。
深海王ホエールはの最後の意地
「……まだ、終わらんぞォォ……人間ども……!」
崩れた肉塊の中心に、
黒光りする球状の“核”が浮かび上がる。
その周囲にぐにゃりと肉が再構築し、
1/3サイズとなったホエールが姿を現した。
だがその姿は、もはや王ではない。
暴走した核だけがむき出しの、狂獣の体。
目は赤く濁り、口腔からは常に蒸気が噴き出している。
ホエール
「貴様ァァァ……タクミ……だけは……ッッッ!!
私の胃袋に沈めてやるううう!!」
タクミへ一直線。
まるで海底地震のような突進。
「くっ……来るぞ!!」
仲間たちの絶望的な防衛線
カーミラ
「タクミには……指一本触れさせねえ!!」
カーミラが砲脚を展開し、
骨の軋む力で暴走核へ立ち向かう。
ガァァァァン!!!
一撃で盾装甲が粉々に砕ける。
カーミラ
「ぐっ……まだだぁ!!」
二撃目で腕ごとへし折られる。
「カーミラッ!!!」
「……影穿、起動……っ!!」
ヴァンが残った力を振り絞り斬りかかるが――
魔力噴流に触れた瞬間、
黒い刃は霧となって消える。
ヴァン
「マジかよ……刃が……折れた……!?」
ホエールの尾が彼を叩き落とす。
「タクミ様は……通さないッ!!」
ミラが震える手で詠唱する。
プロテクト・サークル――展開!!!
光の盾がタクミの前に現れ、
ホエールの突進を辛うじて止める。
だが、ミラの顔は真っ青だ。
「タクミ様……もう、魔力が……ない……!」
防御陣がひび割れ、今にも砕けそう。
ホエールは狂ったように吠える。
「どけェェェ!!
私は……深海を統べる者……
人間風情がァァ!!!」
ミラの魔力は限界、光の盾はあと1秒しか持たない。
タクミは振り向かずに叫ぶ。
「ミラ! カーミラ! ヴァン!
ここまで支えてくれて……ありがとう!」
そして倒れた仲間たちを背に走り出す。
向かう先は、旗艦の中央にある
内部崩壊システムの最終キー。
ホエール
「逃がさんぞおおおおお!!」
暴走核がミラの盾を粉砕し、
タクミへ殺到―。
だがタクミは、振り返らない。
タクミ
「ここで終わらせる。
アクア=マリーナを……みんなの未来を……守るんだァァ!!」
制御塔へ飛び上がり、
最後のレバーを全力で引き倒す。
ガチィィィィン!!!
タクミ
「ホエール……終わりだッ!!!」
次の瞬間――
旗艦全体に赤い光が走る。
魔力炉が暴れ狂い、
内部から“魔力の海鳴り”が轟き渡る。
ホエール
「やめろォォォォ!!
私は……王だ……深海の王なのだァァァァァ!!」
ズガァァァァァァァン!!!!
旗艦全体が輝き、
巨大クジラ型戦艦は
深海で爆散する巨大な光球となった。
◇◇◇
瓦礫がゆっくり海底に沈んでいく。
その中から、タクミたちは辛うじて脱出していた。
ミラが泣きながらタクミに抱きつく。
「タクミ様……よかった……本当によかった……!」
タクミは息を吐き、仲間たちを見渡す。
カーミラは腕を固定しながら笑い、
ヴァンは影剣の柄だけ握ったままうずくまっている。
タクミ
「……これで、終わったんだな」
ミラ
「はい……アクア=マリーナは、救われました」
深海の静寂がようやく戻った。




