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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第十二部 海底都市編(ウォーターワールド)

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第12章 「魔力炉臨界 ― 旗艦崩壊カウントダウン」

魔力炉空洞はもはや“船内”と呼べる状態ではなかった。


金属は液状化し、壁は波のように蠢き、

天井からは真紅の光と蒸気が降り注いでいる。


床には濁った魔力海が広がり、旗艦そのものが

深海の怪獣に飲まれた廃都市のように変わり果てていた。


その中心にホエールが立っている。


いや、“そびえ立つ”という方が正確だった。

巨体はさらに膨れ上がり、もはや空洞の半分を占めるほど。


タクミが拳を握る。

「……やるしかない。やらなきゃ、海底都市アクア=マリーナが飲まれる」


ヴァンが血を吐きつつ笑う。

「ハッ……何回目だ? 俺たち、死にかけんの」


カーミラは腕が折れたまま、なお前へ出る。

「言ってる場合かよ……まだ沈みたくねえんだよ、私は」


ミラは震える声で答えた。

「タクミ様……あれ、本当に倒せるます……?」


タクミは深呼吸し、叫ぶように告げた。


「魔力炉を。逆制御する。

 旗艦の魔力流路を全部反転させて、ホエールに“魔力逆噴射”を叩き込む!」


ミラは目を見開く。

「逆噴射……!? あれ、都市全体と旗艦を繋いだ魔力線も使う気ですか……!?」


「そうだ。アクア=マリーナの全魔力を、この旗艦の“心臓”に叩き返す。

 ……ホエールの体内に、都市一つ分の魔力を流し込む!」


「一歩間違えば海底都市ごと大爆発してしまいます!!!」

ミラが悲鳴じみた声で叱る。


タクミはそれでも揺らがない。


「それでも……やるんだ。ここで倒さなきゃ、誰も生き残れない!」


ホエールがその言葉に反応し、ニタリと口の端を裂いた。


「愚かだな……人間。

 この膨大な魔力炉を、貴様らが制御できると思うか?」


巨大なヒレが振り上がった。


「海底都市ごと潰れて沈め!」


ズガァァァァァン!!!


尾が空洞を薙ぎ払い、金属の海が爆発したように弾け飛ぶ。


タクミたちは散り散りに吹き飛ばされる

だが、まだ終わらない。


タクミは転がりながら制御塔の基部に飛びついた。

割れたモニターと濁った魔力液がショート火花を散らしている。


「ミラ! 都市核との魔力リンクを繋げ!!」


「できるわけ……いや、やります!!」


ミラは制御盤に両手を当て、魔力を流し込む。


青い光が指先から奔流となって走る。


魔力線が次々と明滅し、

遠く離れた都市アクア=マリーナの魔力と同期していく。


「つながった……! タクミ、都市の魔力がこっちに流れ込んでくる!!」


「よし――まずは“逆流”の準備だッ!」


「おいタクミ……お前まさか、アイツを直接“逆噴射口”から焼く気かよ?」


「ホエールの体内に魔力入れるには、鱗の隙間を開ける必要がある。

 ヴァン! 一瞬でいい……あいつの腹の鱗、剥がせるか?」


ヴァンは影剣を握りしめ、笑った。


「言われなくても……

 こういう無茶は、俺の仕事だろッッ!!」


影が広がり、ヴァンの身体が黒い残光に包まれる。


「影穿――零秒刃ゼロブレード!!!」


ズバァァッ!!


ホエールの腹に深い黒い裂け目が走り、

厚い鱗が一瞬だけ剥がれ落ちた。


ホエールの目がギョロリと動く。


「貴様ァァァ!!」


「今だ! カーミラ!!」


「任せろおおおッ!!」


全身傷だらけのカーミラが、

折れかけた脚を引きずりながらも猛突進する。


蟹の鋼鉄脚が展開し、

バキバキと装甲が変形して“押さえ込み用クランプ”を形成する。


「ここが……お前の弱点だろ―クソクジラァァッ!!」


ガキィィィィン!!!


カーミラがホエール腹部の“魔力噴射口”を押さえつけ、

その動きを完全に封じる。


ホエールの巨体がよろめく。


「やめろ……やめろやめろやめろ貴様らァァァ!!

 その逆流は――死ぬッ……私が死ぬうううう!!」


黒い巨影が初めて“恐怖”を見せた。


天井が爆裂し、外海の海水が雪崩れ込む。


ドォォォォォォオオオオン!!!


赤熱化した金属が溶け落ち、

空洞全体が沈降を始める。


ミラの声が震える。


「タクミ様!! 限界です!

 都市アクア=マリーナの魔力が……! 全部、逆流してる!!

 もう止めらません!!」


「止める必要なんてない――!」


タクミが叫ぶ。


「全部ぶつけるんだ!!

 ホエールの内部へッッ!!!」


ホエールの悲鳴とも咆哮ともつかない声が空洞に響きわたる。


「やめろおおおおお!!!

 私こそが深海王!!!

 下等な雑魚種族が、逆らうなァァァァ!!!」


タクミは最後のスイッチへ手を伸ばす。

魔力の奔流で指が焼ける。


「ミラッ!!」


「……かしこまりしたッ!!!」


ミラが制御盤に全魔力を叩きつけ


タクミが叫んだ。


「今だッッ――ミラ! 放てぇぇぇッ!!!」


ガァァァァァァンッッ!!!


魔力炉が完全反転を開始し、

アクア=マリーナの都市魔力すべてが


ホエールの体内へ逆噴射される。


次の瞬間、空洞の全てが白い光に包まれた。


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