第10章 「ホエール旗艦との海底決戦 ― アクア=マリーナ死守!」
海底都市アクア=マリーナ
その静寂はもはや存在しなかった。
巨大クジラ型戦艦、海族CEOホエールの旗艦から放たれる都市消滅用超高圧魔力砲三門の衝撃波が、水中を震わせる。
ドゴォォン! ドドドドドッ! バリバリバリッ!
高層マンションの壁がひび割れ、ガラスが砕け散る。
排水管は逆流し、下層区の通路は水圧で変形。
都市全体が砲弾の雨で揺れ、街路は水柱と破片に覆われる。
海の民の市民たちは恐怖に慄き、避難通路を必死で走る。
子どもを抱えた親、杖をついた老人、海族の住民たちも悲鳴を上げながら逃げまどう。
「助けて! 建物が崩れる!」
「どこに逃げれば……!」
市長は水中拡声器を握り、声を振り絞る。
「諸君! 落ち着け! 避難ルートを確保し、魔力結界の中へ!」
しかし砲撃の連続で結界の維持も限界に近く、浮力制御は乱れ、都市はまさに崩壊寸前。
タクミは防災管理室の巨大魔力制御盤に手を置き、解析を開始。
「ミラ、都市全体の浮力補正を最大限に! 砲撃の波動を逆手に取れ!」
ミラは魔法陣を展開し、浮力補正・排水管制御・破片回避の計算を同時に行う。
「タクミ様、都市の傾斜を2秒単位で補正しています!」
カーミラは都市主要フレームを抱え、砲撃で倒壊しそうな建物に突進。
巨大蟹型機械兵器が襲いかかるも、鋼天裂斬ミラージュブレードで二体同時粉砕。
続けて鋼天破砕こうてんはさいで床を叩き、潜航艇型兵器のバランスを崩す。
ヴァンは影剣βを抜き、遠隔魔法射撃で都市周囲の侵入ポイントを牽制。
「深海の闇も、影の刃で貫く……俺を止められる者などいない!」
旋回するサメ型兵器や潜航艇を斬撃で断ち切り、都市侵入を阻止。
旗艦の主砲が放つ魔力波動は都市全体に衝撃を与え、壁や天井が震える。
水圧で歪む通路、崩れそうな天井、逆流する排水……都市の住民は悲鳴をあげながら、カーミラとヴァンの護衛のもと避難する。
タクミは魔力制御盤を駆使し、都市の構造を戦術に変換する。
「砲撃の軌道を予測、浮力制御で建物ごと防御壁に変える。都市全体を兵器にして、旗艦内部へ誘導する!」
市民を避難させながら、カーミラはフレームで砲撃を受け止め、ヴァンは影剣βで砲台を無力化。
ミラは魔力で都市全体を支え、タクミは制御盤でリアルタイム解析。
海底都市アクア=マリーナ
砲弾の雨に打たれながらも、タクミたちの戦略と市民の協力で、奇跡的に都市は倒壊を免れる。
その瞬間、水面の暗闇に、ホエールの巨大クジラ型旗艦が再び姿を現す。
都市高層区を覆う圧倒的な巨体。
三門の超高圧魔力砲がまだ轟音を響かせ、戦いはこれから最高潮を迎える。
水圧が体を押し潰すように感じられる中、都市全体を盾にした戦いは数時間に及んでいた。
カーミラはフレームを抱え、巨大蟹型兵器を粉砕するも、連続の攻撃で腕の関節に微かな振動が残る。
ヴァンは影剣βで遠隔攻撃を続けるが、水圧と魔力波動の干渉で、斬撃のスピードが落ち、心なしか呼吸も荒くなる。
ミラは魔力結界と解析魔法をフル稼働させ、都市全域の補正を維持していたが、魔力消耗が目に見えて増えている。
タクミは魔力制御盤に手を置き続け、敵の動きを予測し、砲撃の軌道を逆算する。しかし集中力は限界に近く、額に汗が滲む。
旗艦の巨体は水中で悠然と旋回し、三門の超高圧魔力砲を次々と都市に撃ち込む。
ドゴォォン! ドドドッ! ガガガガッ!
建物は揺れ、排水管は逆流、都市の浮力バランスは激しく乱れる。
海底都市の防衛部隊も壊滅的な損害を受け、潜航艇型兵器や水中戦闘歩兵は次々と撤退。
住民たちは避難通路に必死で移動し、子どもや高齢者を抱える者の悲鳴が響く。
旗艦の甲板上から、巨大な体躯に映る海族CEOホエールの姿が見えた。
タクミたちを睨みつけ、深い低音で叫ぶ。
「愚かな小魚どもよ……降伏せよ! 抵抗は無意味だ!
都市ごと、全てを消し去る力を持つ私に抗えると思うのか?」
「「降伏しろ!抵抗は無意味だ!」」
その声は都市全域に魔力波動として響き渡り、タクミたちは再び防衛盤に手を置きながら疲弊の限界を感じる。
カーミラはフレームを抱え直し、無言で拳を握る。
ヴァンは影剣βを握り、呼吸を整えるが、心の中で苛立ちと焦燥が混ざる。
ミラは魔法陣を小刻みに振動させながらも、目を閉じて深呼吸。
タクミは魔力制御盤を前に静かに言った。
「降伏はしない……都市も住民も、俺たちが守る。
ホエール、勝利は確実だと信じるのは勝手だが、俺たちの戦術を甘く見るな」
◇◇◇
ホエールは高笑いをあげ、甲板の酒を一口。
「明日には降伏するさ……だが今夜は、この都市を粉砕する快感に浸るとしよう」
水中での轟音と魔力波動、砲撃の衝撃で都市が揺れる中、タクミたちは短く息をつき、再び次の反撃に向けて準備を整える。
都市全体が戦場となり、住民の避難、都市の補強、敵の動きの解析。
すべてが一瞬の判断にかかっている。
疲弊と緊張が頂点に達したその時、海底都市アクア=マリーナの未来をかけた最後の戦いが、ついに始まろうとしていた。




