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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第十二部 海底都市編(ウォーターワールド)

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第2章 「海底都市の“空室だらけ”の謎」

海底都市アクア=マリーナ。外観は近未来の水中都市を思わせる透明なドームと光の回廊で彩られ、どの建物も魔力によって浮遊石に支えられている。しかし、表向きの美しさとは裏腹に、街は異様な静けさに包まれていた。


「タクミ様……入居率が低すぎます。これでは投資としての価値が落ちます」

ミラは魔法陣を展開し、建物ごとの住民数や魔力流量を瞬時に解析した。赤い数字が並ぶ魔法陣に、ほとんどのマンションが赤信号で表示される。


カーミラは無言でメモを取り続け、拳を握ったまま建物を見据えている。

その鋼鉄の沈黙が、逆に都市の異常さを際立たせる。


ヴァンは深く息を吸い、闇を背にした魔導翼を広げて宙に浮く。

「この都市……生きている……いや、俺には死霊の気配すら感じる……深淵が囁く……フッ」


タクミは眉をひそめる。

「ヴァン、落ち着け。分析が先だ」


ミラが解析を続ける。

「原因は複数です、タクミ様。まず、塩害による電気系統のショートが頻発しています。配電盤も錆びつき、室外機のほとんどが機能不全状態です」


「次に……」

ミラは魔法陣に追加情報を表示する。


「海流による建物の微振動です。建物は常に“ミシミシ”と音を立て、長期的な構造疲労のリスクがあります」


ヴァンは手を広げ、闇の波動を小さく波立たせる。

「微振動……これは都市そのものが息をしている証……フッ、俺は感じる……この都市の鼓動を」


タクミは指を動かし、潜行艦内に安全結界を張る。

「最後に酸素濃度です。局所的に濃度が不安定な部屋が多く、頭痛や呼吸不良の報告が出ています」


カーミラが無言でノートに数字を記入し、軽く頷く。

「……塩害、海流、酸素……すべて物件リスクだな」


タクミは小さく息を吐き、チームに指示を出す。

「よし、まずは現状のリスクを洗い出し、補修と魔力補強の計画を立てる。ヴァン、外周の異常兆候の監視。カーミラ、建物構造の直接確認。ミラ、魔力解析の続行」


ヴァンは闇の波動を空間に放ち、輝く浮遊石を照らす。

「フッ……すべては俺の暗黒視界に映る……都市の秘密も、住人の恐怖も……俺の血となり肉となる……」


都市全体に漂う海流と魔力の微細な変動を感じながら、タクミは未来を見据えた。

「空室だらけでも、この都市には可能性がある。補修と投資で価値を再生できる」


カーミラは無言のままタクミを見つめ、ヴァンは闇の翼を揺らす。

ミラは小さな魔法陣を指でなぞり、解析結果をさらに精査する。

「タクミ様……この都市、油断できません。修復には相当の魔力と資金が必要です」


タクミは窓の外、青黒い海底の深淵を見据えた。

「わかっている……だが、この深海都市を投資として生かすのは、俺たちしかいない」


海底都市アクア=マリーナの静寂の中、潜行チームの戦いが、静かに始まった。

ワンポイント解説


■塩害の被害について

塩害えんがいとは、海風や海水に含まれる塩分が建物や設備、特に金属部分に付着・浸透することで発生する腐食被害のことです。海岸沿いや海上、海底都市のような環境では特に注意が必要です。


主な影響

金属腐食

鉄筋、鋼材、配管などが錆びやすくなる。

錆びによって強度が低下し、構造物の耐久性に影響。


電気設備の故障

電線や接点部分に塩分が付着すると、ショートや断線の原因になる。

海底都市のように水分・湿気が常にある環境では、特に電子機器が不安定になる。


外装・塗装の劣化

外壁や屋根の塗装が剥がれやすくなる。

定期的なメンテナンスや防錆塗装が必要。


防止・対策

耐塩害素材の使用(ステンレス、アルミ、特殊樹脂など)

防錆塗装やコーティングの定期施工

通気や換気による乾燥維持

電気設備の防水・密閉対策


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