第1章 「深海へ降下するチーム タクミ」
【海底都市アクア=マリーナ】
深海二千メートルの底に広がる巨大都市。固定型の海底建築と浮遊型の魔導建造物が複雑に連結し、潮流と魔力流を利用して都市全体が安定する構造を持つ。
都市内は人間、海洋人、天使人、イーリス族、半神族など多種族が共存する。建物は魔力硬化ガラスと浮力補助の魔導石で形成され、内部は水圧結界で保護されているため、深海でも安心して居住可能。
住居や商業区は浮力・魔力密度・潮流の影響で価値が変動するため、投資家にとっては魅力的だが、魔力制御の失敗や施工偽装の影響で危険な物件も少なくない。海底インフラ(魔力送水管・潮流発電・排水結界・酸素循環)は都市全体の生命線であり、管理不備は即座に住民生活に影響する。
不動産投資王を目指す主人公たちは、陸の投資案件が枯渇しつつある状況で、
ついに新領域―海底都市「アクア=マリーナ」へと乗り出す。
深海二千メートル。潜行艦の窓から、青黒い深海の静寂が広がる。
タクミは操作席に座り、スクリーンに映る海底地図を指でなぞる。
「ここだ……アクア=マリーナ。次の投資案件は間違いなくここだ」
カーミラは無言のまま拳を握り、隣で鋼鉄のような威圧感を放つ。
ヴァンは薄暗いキャビンで魔導翼を広げ、目を細める。
「深淵……我が魂を呼ぶ闇……フッ、全ては闇の支配下に置かれる運命だ……」
ミラは呆れ顔で資料を広げながらも、きちんとタクミに報告する。
「タクミ様、水着は必要ですか?深海潜行装備だけで十分でしょうか」
タクミは笑みを浮かべる。
「ミラ、水着は不要だ。ただし、魔力解析と安全確保は徹底する」
潜行艦が海底都市に近づくと、浮遊型建造物が光を放ち、魔力結界が青白く揺らめいた。建物は潮流と浮力を巧みに利用し、まるで生き物のように都市全体を保っている。
「驚異的な建築……」
ヴァンが低く呟く。
「闇と水圧、魔力が交錯する聖域……この世のすべてを超えし場所……我が命を賭すべき舞台だ……フッ」
「....」
カーミラは無言で都市を見据え、視線だけで警戒を示す。
タクミは魔力計測器を取り出し、都市全体の魔力流をスキャン。
「浮力と魔力の安定性は悪くない……だが、半神族企業の施工物件が多い。偽装や劣化のリスクは残る」
ミラが魔法陣を展開して解析を始める。
「タクミ様、主要建物の浮遊制御核に不安定な箇所があります。このままでは建物傾斜や沈下の危険が出ます」
ヴァンは闇の波動空斬を構え、艦外の光る浮遊石に目を光らせる。
「全ては俺の闇で裁かれる……海底の神秘も、虚無も、我が手中に……フッ」
「....」
タクミは深呼吸して指示を出す。
「カーミラ、先行して潜行し構造物の安全確認。ヴァン、外周監視と異常兆候の報告。ミラ、魔力解析を頼む」
チームは息の合った動きで潜行を開始。まるで長年共に戦ってきたかのような精度だ。
潜行艦が中層区画に差し掛かる。浮遊石の劣化や魔力流の乱れが所々に見え、投資家としての目利き力が試される瞬間だった。
タクミはつぶやく。
「ここからが本番だ……深海都市の物件調査と修復、そして海底物件の投資判断。失敗は許されない」
深海の青黒い静寂の中、アクア=マリーナの光と魔力が揺らめく。未知なる都市で、タクミとカーミラ、ヴァン、ミラのチームの試練が始まろうとしていた。




