第11章 「魔導制御核の奪還戦 ― 風の復讐を止めろ」
空中都市、崩壊寸前
タクミとミラが外周の魔力導線を補修し終えた頃、
空中都市全体は、もはや“限界”に近づいていた。
雲海を横切る 空中交通路 は渋滞し、
浮遊島を結ぶ 魔導橋 は振動で軋み、
遠くの住宅区では住民たちが避難を始めている。
だが、都市が落ちないためには――
塔内部の魔導制御核を取り戻す 必要があった。
そして、その制御核を乗っ取っているのは
復讐者 スカイ=ハリケーン。
勇者パーティーが制御核へ向けて走る途中、
タワー内部全体に、冷たい風が吹き荒れた。
風を通じて、スカイ=ハリケーンの声が響く。
「やっと気づいたか……
この塔が浮くための“魔力計算”は全部嘘だったのさ。」
「俺の故郷《風神族》の浮遊神殿は、
この偽装された浮遊石のせいで沈んだ。
その瞬間。家族は、みんな雲の底へ地上へと落ちた。」
勇者アレックスの顔が険しくなる。
「……だから、タワーを沈めようとしているのか?」
風が悲しく震える。
「沈めるのは塔じゃない。
“嘘を積み上げて肥え太った空族の罪”だ。」
ミラは補修を続けながら呟いた。
「浮遊石の偽装……風神族を追放したのも、その隠蔽のため……?」
タクミが唇を噛む。
「スカイ=ハリケーンは被害者でもある……
だが、このままでは空中の都市全体が落ちる。止めなきゃならない。」
外周補強を終えたタクミとミラは
制御塔の二層下にある 大魔力導線室 に到達した。
ここは、都市全体の魔力を“上層”と“下層”に分ける
巨大な魔力配電室のような場所だ。
しかし今は、暴走した風の魔力が渦巻き、
配線が一部ショートしていた。
ミラ「タクミ様! 魔力の上下バランスが完全に崩れてます!」
タクミ:「制御核に全部吸われてるんだ……
ここを直さなきゃ、勇者組が核を奪還しても意味がない!」
タクミは工具を取り出し、膨大な魔力導線を一気に補修していく。
「《平衡式・双帯結界》発動!」
青と金の魔力が導線全体に広がり、
空中都市の揺れが、わずかに、止まった。
ミラは額の汗をぬぐい、頷く。
「タクミ様……これで勇者組が制御核を取り戻せば、都市は助かります!」
制御核へたどり着いた勇者パーティー。
中心にある赤黒く腐食した制御核の前で、
スカイ=ハリケーンが風の鎧をまとって立ち塞がった。
勇者アレックス
「スカイ=ハリケーン!
復讐の痛みはわかる……だが、この都市には関係ない市民もいる!」
戦士ブレイン
「ここが落ちたら、子どもも老人も吹き飛ばされるんだぞ!」
魔法使いエリオ
「制御核をハックする魔力量、異常値……!
これ、放っておけば都市ごと消える!」
僧侶リリィ
「あなたの心の傷……癒す時間を私たちにちょうだい……!」
だが、スカイ=ハリケーンは静かに笑った。
「悪いが……もう戻れない。
俺は“風神族の墓標”を、この空に刻むと決めた。」
そして手をかざすと、
制御核から魔力の暴風が解き放たれる。
制御核奪還戦
勇者アレックス「全員構えろ!」
スカイの暴風刃が飛ぶ。
ブレインが盾で受け止めるが、風圧だけで壁が砕けた。
ブレイン「くっそ……風のくせに重てぇぞ!!」
エリオが詠唱する。
「《雷鎖魔法・ライトニングバインド》!」
雷の鎖が暴風を縫い止め、
リリィが治癒と結界魔法を同時展開。
アレックスは剣に光をまとわせ、一直線に突進する。
「スカイ! お前は悪に落ちたんじゃない!
ただ悲しみを背負いすぎただけだ!」
剣と風が激突し、
制御核室全体が白い光に包まれた。
激しい戦闘の中、エリオが気づく。
「アレックス! 今の攻撃……スカイ、自分から威力を落としてる!」
アレックス「……迷っているのか?」
スカイの鎧が砕け、素顔が風に揺れる。
「……俺は、本当にここを沈めたいのか……?
家族は、こんな復讐を望んでたのか……?」
リリィが静かに歩み寄り、手を差し伸べる。
「あなたは間違えていない……苦しんだだけ。
でも、憎しみを続けたら、空はまた同じ悲しみを生むわ。」
スカイの瞳に涙が宿る。
その瞬間、タクミの声が通信魔法で届いた。
「勇者組!
こっちは魔力導線の“上下バランス”を完全修復した!
あとは制御核を安定化させてくれ!」
ミラも叫ぶ。
「スカイ=ハリケーンさん!
あなたの家族が沈んだ理由……
偽装したのはあなたじゃなく、空族大手の悪徳企業よ!
復讐する相手を間違えないで!!」
スカイの風が止まった。
制御核の浄化
勇者アレックスが剣を制御核へ向ける。
「みんな、魔力を剣に集中させろ!」
エリオの雷、ブレインの力、リリィの浄化。
仲間全員の魔力がアレックスの剣に集まり
「《聖光断・ゼニスブレイク》!!」
白い光が制御核を包み、
暴走魔力は消え、都市は静かに安定を取り戻した。
スカイ=ハリケーンはひざをつき、
ぽつりと呟く。
「……みんな、助かった……のか?」
アレックスが手を差し伸べる。
「風を守りたいなら、
これから俺たちと一緒に、空を支えよう。」
スカイは静かにその手を取った。
外ではタクミとミラが“上下魔力統合システム”を完成させ、
空中交通も魔導橋も再び正常に稼働し始めていた。
タクミ「よし……全ライン、復旧確認!」
ミラ「都市全体が……生き返った。」
勇者組、タクミ組、そしてスカイ=ハリケーン。
三つの風が重なり、
空中都市は今、ようやく“落ちずに済んだ”。




