王太子の婚約者の私が魔法で閉じ込められて婚約破棄もされました。
「おはよう、アンジェラ。ね、ハロルド殿下の誕生パーティー、どんなドレスで行くの?」
「おはよう、ミーシェ。実はハロルド殿下がプレゼントしてくださるの」
「それは素敵ね、楽しみだわ」
アンジェラ・ホーキンは伯爵令嬢で、王立学園に今年入学した。リンダー王国の王太子のハロルド殿下は私の婚約者だ。
ハロルド殿下は1学年上で、もうすぐ誕生パーティーが開催される。
ミーシェはバルデン侯爵令嬢で、小さい頃からよく一緒に遊んでいて、今でも1番仲がいい友達だ。金髪でとてもかわいいのに何故か婚約者はいない。
王立学園はほとんどの貴族が通っているので、ハロルド殿下の誕生パーティーに招待されている人も多く、最近の話題はもっぱら誕生日会の事だ。
誕生パーティーは、まだハロルド殿下が学生という事もあり、王立学園のホールで行われる事になった。
当日はとてもいい天気で、ハロルド殿下がプレゼントしてくれたドレスは殿下の瞳と同じ青いドレスだった。
「ハロルド様、誕生日おめでとうございます。そしてドレスありがとうございます」
「アンジェラとても似合うよ。自分の色を婚約者が身に着けてくれるってとても幸せな気分だね」
そんな優しい殿下を少しでも支えていけたらと私も王太子妃教育を頑張っている。
誕生パーティーももうすぐ終わりという頃、アンジェラは体に違和感を感じた。そしてのまま倒れてしまった。
意識は戻らず医師が呼ばれ診察を受けたものの、原因は分からなかった。
1ヶ月近くたってもアンジェラは倒れてからまだ目を覚ましていない。
ハロルド殿下がホーキン伯爵家に時々お見舞いに訪れていた。
「アンジェラ、早く目を覚まして。アンジェラのいない学園は寂しいよ」
いつも優しい言葉をかけてくれる。
だけど1ヶ月たっても目覚めないと、ハロルド殿下は段々とお見舞いに行かなくなってしまった。
両親や側近にうるさく言われるので、一度お見舞いに行こうと、学園を出ようとした時、ミーシェに声をかけられた。
「ハロルド殿下、アンジェラのお見舞いですか?よければ私も一緒に行ってもいいですか?」
「ミーシェ、もちろんだよ。一緒に行こう」
最近、学園でハロルド殿下とミーシェの距離が近いと噂になっていた。学食で一緒にランチを食べる姿もよく見られていた。
2人でお見舞いに行こうと一緒に馬車に乗る2人をみながら、学園の生徒たちにまた噂が広がっていった。
最近、側近となったリチャード・タニアスも、2人の距離が近いのは気になっていたが何も言えずにいた。実はリチャードの前にいた側近は、噂になっているので気を付けた方がいいのではと話したところ、側近を辞めさせられたのだ。前はこんな方ではなかったのにとリチャードは思うが何故変わってしまったのかはよく分からなかった。
ホーキン伯爵家に着いて、アンジェラの部屋に案内される2人の後ろを歩いていたリチャードは魔法の力を感じた。どうやらアンジェラの部屋のようだ。2人に続いて部屋に入り、入口付近で立ち止まり部屋の中を観察した。そして1ヶ所、空間に歪みのような物を感じた。かなりの魔力を持つリチャードでもそれ以上は分からなかった。
2人はお見舞いにきたはずなのだが、アンジェラに声をかける事もなく会話に夢中になっていた。
何をしにきたんだか・・・と思ったのはリチャードもアンジェラの侍女も同じだった。
リチャードは、タニアス伯爵家の長男だ。姉ミッシェルと弟クロードがいる。弟の母は今の伯爵夫人なので異母弟となる。
リチャードと姉の母は隣国のベルローズ王国の出身だが、リチャードを産んですぐ亡くなってしまった。姉は今はベルローズ王国の伯爵家に嫁いでいる。義兄は隣国の魔術師の仕事をしているが、ちょうどこの国に仕事があるというので、ミッシェルと一緒にタニアス家に滞在していた。
家に帰ると、リチャードは義兄のアルバートに今日感じた空間の歪みについて相談してみた。
ベルローズ王国は魔法の国とも言われていて、魔法についても研究が進んでいる。アルバートはその中でも群を抜いていていずれは魔術研究所の所長になると言われている。リチャードも魔力は多いがアルバートにはかなわないし、何より知識が足りない。この国でも魔法はみんな使えるし学園でも魔法の勉強はするがベルローズ王国の研究に比べると劣っている。
「今日、アンジェラ嬢のお見舞いに付き添ったのですが、令嬢の部屋に空間の歪みを感じました。
これはアンジェラ嬢が目覚めないのと何か関係があると思いますか?」
「アンジェラ嬢の話は聞いているよ。倒れてどれ位になるのかな?」
「2ヶ月ほどですね。殿下の誕生パーティーの日です」
「実は昨日、国王陛下と謁見した時にもその話が出てね、陛下も心配していたよ。
魔法が関係しているなら私で分かる事があるかもしれない。ホーキン家に行ってみようか」
「ありがとうございます。使いをだします」
次の日、リチャードはアルバートと一緒にホーキン家を訪れ、挨拶もそこそこにアンジェラの部屋に案内してもらった。リチャードは部屋をぐるりと見渡し、ある一ヶ所に目を向けた。
「リチャード、気になったのはあの辺りかな?」
「そうです。空間が歪んでいるように思うのですが、それ以上は何も分からないのです」
アルバートは、何かを詠唱した。魔法を使ったようだが変化はないように思えた。
「詳しくは家に帰ってから話すよ」
と言い、ホーキン伯爵に
「気になる事があるので一度持ち帰って調べる時間をいただけますか?また、今後の情報については内密にお願いしたいのですが」
「アンジェラは助かるのですか?」
「そうですね・・・。病気の類ではないと思います。かなりの魔力の持ち主が関係していると思われます。誰かに聞かれたら、私が調査をしても解決できないと答えてください。私が調査していると情報がもれたら危ないかもしれません」
「分かりました。アンジェラが助かるのなら従います。どうかよろしくお願いします」
ホーキン伯爵は約束した。
「リチャードならお見舞いとしてホーキン家を訪れても問題はないと思いますので、彼を通じて連絡します」
「アンジェラ嬢と私は同じクラスです。僕も彼女の事は心配なので、またお見舞いに来ます」
「ありがとうございます。お待ちしています」
家に帰ると、アルバートはリチャードに
「アンジェラはあの空間の歪みに閉じ込められていると思う。かなり複雑な構造でかなりの魔力と知識の持ち主が関係していると思う。試しに解除の魔法を使ってみたがほとんど効果はなかったよ」
「何も変わらなかったように思うのですが」
「それだけ複雑なんだよ」
「それに人間を空間に閉じ込めるなんてできるのですか?」
「そうだね、できる人は限られているね。あんなに複雑な空間魔法を使うには、かなりの魔力の持ち主でないと無理だろう。この国で出来る人がいると思えないから、一度、国に戻って調査をする必要があるな」
「なんか大事になりそうですね」
「生き物を空間に閉じ込めるのは法律で禁止されているんだよ」
「なるほど。僕にできる事はありますか?」
「今の君では知識とスキルが足りないな。もうすぐ夏休みだったよね?私ももう少ししたら帰国する予定だから、一緒においで。向こうで練習して解除の方法を探そう。君なら戦力になれるかもしれない」
「分かりました。両親に相談します」
リチャードは時間をみつけてはホーキン伯爵家にお見舞いに行った。
ホーキン伯爵に挨拶し、義兄の言葉を伝えた後、アンジェラの部屋に行く。
そして、教えてもらったばかりの解除の魔法を空間の歪みに使ってみたが、何も変化はなかった。
(やっぱりまだまだスキルが足りないな)と思いながら寝ているアンジェラに話しかけた。
「こんにちは、アンジェラ嬢。もうすぐ夏休みですね。僕は夏休みは義兄に特訓をしてもらう事になりました。早くあなたを助けられるように頑張ってきます。またあなたの笑顔が見れますように」
そう、リチャードにとってアンジェラは憧れの存在だったのだ。
アンジェラはお茶会で倒れた後、真っ白い何もない空間で目を覚ました。助けを求めても歩き回っても何もない空間だった。どれだけの時をそこですごしたのだろう。どれだけ閉じ込められているのか全く分からなくなっていた。ある時、空間にビリビリと衝撃を感じた。その時真っ白だった空間の向こうにうっすらと何かが見えた。それは自分の部屋のように見えるがはっきりとは分からない。
そしてどれ位たったのだろう。時々、衝撃を感じた。前よりは弱いその衝撃は空間の向こうの景色を少しずつ見せてくれるようになった。まだぼんやりとしか見えないけど、恐らく自分の部屋だろう。そして自分の方を向いて立っている人がいる。誰だか分からないけど、ハロルド様ではない事は分かる。お見舞いにきてくれたようだけど・・・。
そして彼は寝ている私に何か話しかけると部屋を出て行った。
もっと周りの景色を見たくて近づこうとしたけど、やっぱりいくら歩いても景色が近くなる事はなかった。何も変わらないと思ったけど、それでも諦めきれず何か見えないかとひたすら見ていた。
日に何回も、部屋に来てお世話をしてくれる侍女や、多分お父様やお母様。ホーキン家はみんな私がいつ目覚めてもいいように変わらず世話をしてくれていた。アンジェラは何もできる事はないけど諦める事はやめようそう思った。
ある日、また衝撃を感じた。前回の衝撃からあまり時間がたっていないように感じたアンジェラは顔をあげた。すると今までぼんやりしていた景色がはっきりと見えるようになった。
そこには2人いた。1人は同じクラスのリチャード様だ。もう1人は会った事がない、誰だろうと思ったら、リチャード様が何か紙をこちらに向けた。そこには「必ず助けるから待っていて」と書いてあった。
アンジェラは涙が止まらなかった。
リチャードとアルバートがホーキン家を出て馬車に乗った時、アルバートがリチャードに声をかけた。
「さっき、何かを見せていたけど、アンジェラ嬢が見れているかは分からないよ。少しずつ、解除はできているけど、まだまだだ」
「伝わってなくても構いません。僕が伝えたかっただけなので」
「そうか、伝わっているといいな。
明後日、出発するけど準備は終わった?」
「はい、といっても勉強が目的なので大した荷物はないですが」
「君の魔力なら大丈夫。そのまま魔術研究所に入らない?推薦するよ」
「いや、僕の魔力では無理ですよ」
「大丈夫。私が保証するよ。ゆっくり考えてみて」
明日から夏休みという日、ハロルド殿下はミーシェと一緒にアンジェラのお見舞いに行く事にした。側近として、リチャードも同行する事になった。
最近は学園ではいつも2人でいて、距離が近すぎると噂になっていた。ミーシェの婚約者のような態度に注意する人もいたが、ハロルド殿下に泣きつくため、そのうち誰も何も言わなくなった。
アンジェラのお見舞いに来ているのに、2人で話しているだけでアンジェラに声すらかけない。リチャードはこの人が国王になった時に仕えたいと思うか疑問に思うようになっていた。
そんな2人をアンジェラも見ていた。
(ハロルド様はミーシェと随分仲が良くなったのね。まるで婚約者のよう…)
寝ている自分に話しかける事もなくミーシェとの話に夢中なハロルド殿下をただ見ている事しかできなかった。ふと、リチャードを見ると何か紙を持っている。
そこには、「明日から夏休み。僕は魔法の勉強をしに隣国へ行ってくる」と書かれていた。
もう、夏休みなのね、あれから3ヶ月たったんだ。
時々きてはメッセージを伝えてくれるリチャードが来てくれるのを楽しみにしていたが、もうくる事はないのかとアンジェラは寂しく感じた。
ハロルド殿下達が部屋を出る時、ミーシェがベッドで寝ているアンジェラを振り向いて何かを呟いた事に気づいた。何を言っているのか分からなかったけど、その顔を見て、アンジェラは、ミーシェが何かに苦しんでいる事に気がついた。
リチャードは、ベルローズ王国の魔術研究所で魔法の勉強をしていた。アルバートは空間魔法の得意な同僚ダニエルに指導を頼んでくれた。最近、同じく空間魔法を得意としている研究員が行方不明という事で研究所は大騒ぎだったが、アンジェラが閉じ込められている事に関係していると思われるので、ダニエルも忙しい中、協力してくれた。
「かなり筋がいいね。リチャードならこの国でも充分通用するよ。夏休み中に特訓は終わりそうだよ」
「ありがとうございます。少しでも早く出してあげたいです」
「彼女が好きなのかな?」
ダニエルは特訓に打ち込むリチャードを少しからかいたくなった。
「違いますよ。彼女は殿下の婚約者です。ただ、僕が憧れているだけです」
真っ赤な顔をしながら答えるリチャードは
「義兄に言わないでくださいよ」
と言うのも忘れなかった。
ダニエルは彼の恋を応援したくなったが、王族の婚約者では勝ち目がないなと慰める事しかできなかった。
リチャードは、アンジェラが空間に閉じ込められた事の調査を本格的に開始した。
恐らくは行方不明になっている研究員マークが関係していると思われる。しかし、マークは技術力は高いがあの空間魔法を作れるほどの魔力はない。多分強大な魔力を持つ人間がもう1人関わっていると考えられるが、それが誰だか分からない。マークと協力者を探す事にしたが、どちらも難航した。
リチャードの特訓は順調だった。ダニエルとの魔力の相性が良かったので解除魔法を覚えるのではなく、ダニエルと魔力を合わせる特訓に切り替えた。夏休みも半分過ぎた頃、ダニエルから合格をもらえた。アルバートの国内での調査も一通り終わったので、ダニエルや他の研究員と共に、リンダー王国に戻る事になった。
リンダー王国に戻るとリチャードは休む間もなく、アルバートとダニエルともう1人の研究員アレンを連れてホーキン家に向かった。
ダニエルはアンジェラの部屋に入ると早速解析を始めた。
「これはかなり高レベルな空間魔法だ。何層にもなっていて解除の魔法だけでは表面の層しか解除できないようになっている。これはマークが研究していた物で間違いないな。これは解除と分解と両方の魔法の技術が必要だ」
ダニエルは更に空間を注意深く観察した。そして、1ヶ所だけ小さな穴があいている事に気づいた。
「アレン。あの辺に穴があるの分かるか?」
2人は相談を始めた。
そして、1ヶ所に向かい2人で同時に魔法を放った。そして、そのまま魔力を流し始めた。
「リチャード、同じ場所に魔力を流してくれ」
リチャードはダニエルの魔力が増大するように魔力を流した。
アルバートも同じように魔力を流している。
長い間魔力を流しているが、なかなか終わらない。リチャードが限界を迎えようとした時、キラキラと何かが弾けたような感じがした。
「リチャード、終わったよ」
アルバートが声をかけた。
「あの、あなた方は?」
声をする方を向くとアンジェラが目を覚まして起きあがろうとしていた。
リチャードと目が合うと
「リチャード様ですね?もしかして、皆様が助けてくださったのですか?」
と話しかけた。
リチャードは
「隣国のベルローズ王国の魔術研究所の方々です。義兄が働いているんですよ」
「はじめまして、アンジェラ嬢。体調はいかがですか?大変申し訳ないのだが、私の国の人間が関わっている可能性が高いので、後日話を聞かせていただきたい」
とアルバートは伝え、一旦帰る事にした。
後日、リチャード達はホーキン家の応接間にいた。
アンジェラと両親が出迎えてくれた。
「娘を助けていただきありがとうございます。なんとお礼を申し上げたらいいのか・・・」
アンジェラも
「本当にありがとうございます。何度も来ていただいていましたね。途中から見えました」
とお礼を言った。
「いえ、アンジェラ嬢を閉じ込めていた空間は魔術研究所の人間の可能性が高いです。
巻き込んでしまい本当に申し訳ありませんでした」
とアルバートとダニエルとアレンは頭をさげた。
「ご迷惑をかけてしまって申し訳ないのですが、経緯を知りたいので質問させていただいてもいいでしょうか?」
「はい、なんでも聞いてください」
「アンジェラ嬢は倒れた時の事を覚えていますか?何があったのでしょうか?」
「誕生日パーティーの時ですね。あの時は、小さな男の子が迷子になっているようでしたので、声をかけました。その男の子の保護者の方を探そうと手をつないだ時に急に手を引っ張られたのです。そのままバランスを崩して転んでしまったのですが、その時から何かに閉じ込められました」
「なるほど、その男の子が空間に引きずり込んだのかもしれない。しかし子供にそんな力があるのだろうか」
とアルバートは答えました。
その時、ダニエルが写真を見せました。
「その男の子、この子ですか?」
「そうです、この男の子でした。あ、こちらの女の子はミーシェの近くにいた子かしら。侍女見習いと言ってたと思います」
「ダニエル、その写真は?」
「マークの姉夫婦の子供です。事故で姉夫婦がなくなったのでマークが引き取って育てていました。
弟の方はすごい魔力があるから将来楽しみだとマークがよく言っていました。姉の方は何か珍しい魔法が使えると言っていたけど何だったかな」
「侍女見習いという事はバルデン侯爵家にまだいる可能性があるな。リチャード、タニアス伯爵に協力をお願いできるかな」
「はい、頼んでみます」
「その時は私も一緒に話そう。国王陛下にも謁見を申し込まないとな」
アルバートは国王に謁見を申し込み、アンジェラ嬢が空間に閉じ込められていた事、研究員が関与している可能性が高い事を話し、リンダー王国で調査をする許可をもらった。魔法が使われた事が知れるとマークの命の危険があるので内密にすすめる事となった。
アンジェラが空間から助け出されてから2週間後には学園の始業式だった。
アンジェラは久しぶりの学園に行った。みんな喜んでくれたが、何かを隠しているような感じがした。
でもそれはすぐに分かった。ハロルド殿下とミーシェが一緒に登校してきたからだ。
「アンジェラが学園に来なくなってから少しずつ2人の距離が近くなってね・・・」
「夏休みに入る前は、ミーシェは婚約者のような態度だったの」
友達が言いにくそうに話してくれた。
「アンジェラ、久しぶりだな」
ハロルド殿下が声をかけた。
「おはようございます、ハロルド様。今日からまた学園に通う事になりました」
「そうか、でも、お前との婚約は破棄することにした」
「両親からは何も聞いていませんが、どうして急に?」
「アンジェラに何か問題があったからずっと目を覚まさなかったのだろう。また倒れるかもしれない。それは王太子妃にふさわしくないだろう。それにずっとミーシェが支えてくれた。私にはミーシェが必要だ」
いきなり婚約破棄の話になり、アンジェラも周りの人間も驚きしかなかった。
側近として近くにいたリチャードはアルバートからハロルド殿下とミーシェを観察するように言われていたため、アンジェラを助ける事もできなかった。
すぐにホームルームが始まったので、話はそこで終わりとなった。
アンジェラが空間に閉じ込められていた事は調査中のためいう事ができない。アンジェラは反論する事ができず悔しい思いをした。そんなアンジェラに気づかず、ハロルドとミーシェはホームルームが終わると2人で教室を出て行った。
「アンジェラ嬢大丈夫ですか?守ってあげられず申し訳ありません」
リチャードがそっと話しかけた。
「リチャード様のお役目は分かっています。私は大丈夫なので早く行ってください」
アンジェラは笑顔で答えた。
でも、ハロルド様はあんな方ではなかった。一体何があったのだろうとアンジェラは不思議に思った。
王家とホーキン家とで何回か話し合いをしたが結局、婚約は解消となった。そしてミーシェとの婚約が発表された。国王は婚約解消を望まなかったが、王妃が王太子の希望をかなえたいとミーシェとの婚約を強く望んだからだ。
アンジェラはお見舞いにきた2人の様子を見ていたのもあり、婚約解消を受け入れた。ミーシェと話をしたかったのだが、なかなかその機会がなかった。ミーシェがハロルド殿下と常に一緒というのもあるが、護衛が厳しくミーシェに話しかけることすらできなかった。
最初はアンジェラの事を遠くから見ていたクラスメイトも徐々に話してくれるようになりミーシェと話せない以外は元のようにすごす事ができた。
リチャードからハロルド殿下とミーシェの様子を聞いたアルバートはバルデン侯爵家を調査した。そうすると屋敷内の護衛騎士が多く厳戒態勢がしかれている事が分かった。何かを隠しているように感じたので監視する事にした。しばらくして、マークと子供たちがバルデン侯爵家から出てきたと報告があった。市場でへ買い物に行ったが護衛がついていた。アルバート達は予想していたので、待機していた近衛隊に連絡をとり、マークと子供たちを確保した。
マークはアルバートを見るとほっとした顔をして頭を下げた。
そしてアルバート達に真実を話し始めた。
きっかけは、子供たちの叔母がバルデン家で侍女をしていた事だった。その叔母が子どもたちの事を自慢していたのが侯爵の耳に入り、強制的に連れてこられた。そして子供たちを餌にマークを呼び出し空間魔法を作らせたとの事だった。マークが空間の魔術式を作り、子供の弟と協力して魔力を流し完成させた。1ヶ所穴をあけたのは時間がたつとそこからほころびができるようにわざとだった。バルデン侯爵が誕生パーティーの時に弟を連れて行きアンジェラを空間に閉じ込めるように命令した。姉の方は魅了の魔法を使えたため、侍女見習いとしてミーシェの近くにいて魅了の魔法をかけていた。バルデン侯爵は娘が婚約者になれたら、侯爵家が力を持てるのもあり、アンジェラを空間に閉じ込めて娘のミーシェとハロルド殿下に魅了の魔法をかけた。この姉の魅了の魔法は同時に触れた人間が惹かれ合うという変わった魔法だった。ミーシェとハロルド殿下に同時に触れないといけないため、パーティーについてきていた。
マークと子供たちはベルローズ王国に帰る事になった。調査の続きは戻ってから行うこととなった。おそらくマークは逮捕されるだろう。子供たちは魔術研究所預かりとなり、当面はダニエルが面倒を見る事になった。
バルデン侯爵が魅了の魔法を使ったとして逮捕された時、ハロルド殿下は呆然としていた。そして、ミーシェとは婚約破棄となった。バルデン侯爵は王室をだましたとして、領地を没収され、子爵家へ降格となった。ミーシェは魅了の魔法の事は聞かされていなかったが修道院に送られる事となった。ハロルド殿下はアンジェラともう一度婚約したいと言ったが国王が許さなかった。
リチャードもハロルド殿下の側近を辞退した。
学園内でもアンジェラへの非難の声は消えなかったので、近くで守りたいと思ったのだが、アンジェラが気にしていないのと友達の令嬢達がそんな声からガッチリと守っていて、リチャードの出番はなかった。それでも友達としていられたのでリチャードは満足していた。
時はすぎ、新学期を迎え、アンジェラは無事に進級できた。魔法で閉じ込められていた間の勉強が出来ていなかったので補修や追試でなんとか進級の条件をクリアできた。リチャードはベルローズ王国へ留学を考え始めていた。そんな時、ハロルド殿下とアンジェラの婚約の話が再び持ち上がった。アンジェラの事件の事を発表したため、王太子妃として問題がないのではないかという意見が強くなったからだ。ハロルド殿下は、アンジェラとの婚約を諦めていないのが大きかった。
このままでは、アンジェラがまた遠い存在になってしまうと思ったリチャードは、休みの日にアンジェラをカフェに誘った。
リチャードは
「アンジェラ嬢はずっと憧れの存在でした。あなたを守れて笑顔が見られればそれでいいと思っていました。でも殿下との婚約の噂を聞いた時、それ以上の事を望んでいる自分がいる事に気づきました。アンジェラ嬢、あなたが好きです。僕と婚約してくれませんか?」
と素直に気持ちを伝えました。
「空間魔法で閉じ込められていた時からリチャード様はずっと私の支えになっていました。その後もずっと。今は守られているだけですが、いつか私があなたを支えられるようになりたいと思うようになりました」
「それはもしかして?」
「リチャード様をお慕いしています。あなたの婚約者になりたいです」
と真っ赤な顔でアンジェラは伝えました。
「あなたが笑ってくれるだけで僕は充分です。早速ホーキン家に挨拶に行きますね」
「はい、お待ちしています」
タニアス家とホーキン家は2人の婚約に大賛成だった。
そんな時、王家からホーキン家に手紙が届いた。ハロルド殿下からアンジェラへの婚約の申し込みだった。今はまだ申し込みだが、王命になってしまったら婚約は決まってしまう。
リチャードは考えた末、アンジェラと話をすることにした。
「アンジェラ、本当の気持ちを教えて欲しい。王太子妃になりたいと思ってる?」
「王太子妃には本当になりたいと思っていました。でもそれは昔の話です。今は、リチャード様がいてくれます。私はリチャード様と一緒にいたいです。ハロルド殿下の申し込みはどうやってお断りしたらいいか両親と話し合っている途中です」
「それを聞いて安心したよ。実は、ベルローズ王国に留学を考えているんだ。よければ一緒に行かない?」
「私は魔法については詳しくないですし、留学して勉強するほど魔力もありません。ベルローズ王国は行ってみたいと思っていましたが、留学は難しいと思います」
「ベルローズ王国の学校は、魔法コースだけでなく騎士コースや文官コースなど色々あるんだ。アンジェラが興味のあるコースがあると思う」
「そうなんですね。リチャード様と一緒なら心強いですね。両親に相談してみます」
家に帰り、アンジェラは早速お父様に相談してみた。
「ハロルド殿下からの申し込みの事もある。慎重にならないとね。
アンジェラはハロルド殿下の事はもういいのかい?」
「お父様、ハロルド殿下とはもう終わったことです。王太子妃になりたいとも思いません」
「リチャードとはどうする?王家からの話を断ったらこの国で暮らすことが難しくなる事も考えられる」
「そうならないことを考えたいですが・・・。仕方ないと思っています」
「それなら、すぐにでも留学の準備をすすめよう。陛下には申し込みは受けられないと話はしたのだがハロルド殿下は諦めていないようでね。少し策を講じた方がよさそうだ」
「ホーキン家は大丈夫ですか?」
「ああ、そうならないようにタニアス家に少し協力をお願いする事にしたよ。今後の事を話そうか」
「はい、お父様」
アンジェラは、大急ぎで留学の準備をした。アルバートがすでに手続きを進めてくれていたので、ベルローズ王国のハイローク学院にすぐに留学する事ができた。リチャードは魔法コース、アンジェラは淑女コースに編入した。ハイローク学院はリンダー王国で通っていた学園よりも授業は難しく、アンジェラは慣れるまでは毎日遅くまで課題に取り組んでいた。
ベルローズ王国に来て1ヶ月が経った頃、アンジェラは、アルバートとミッシェルに連れられて、ハイリン子爵家に来ていた。ハイリン子爵家は、ミッシェルとリチャードの叔母の嫁ぎ先で、アンジェラはこの家の養女になる。もし王命が出てしまえば留学先から戻らなければいけなくなるが、ベルローズ王国の貴族の養女になってしまえば逃げられるだろうと、タニアス家にアンジェラの両親が頼んでくれたのだ。
リチャードは、祖母の家との養子縁組の申請をしていた。跡継ぎが他にいないので次期伯爵当主となる事が決まった。
アンジェラがハイリン子爵家の養女になる手続きが終われば、正式にリチャードと婚約をする事になっている。アンジェラの手続きは数ヶ月かかるとのことだった。
ハロルド殿下は婚約の申し込みを断ったのにも関わらず、諦めてはくれなかった。息子に甘い王妃は、その願いをかなえようと動き出そうとしていた。王妃に甘い国王は、王命で婚約を成立させてしまうかもしれないと思ったアンジェラの両親は、タニアス家に養子縁組をしてくれる貴族を探してほしいとお願いしたのだった。
アンジェラは、この先ベルローズ王国で生活する可能性も考えると、学院で友達が欲しいと思い淑女コースを選択していた。貴族の令嬢はこのコースを選択する事が多いと聞いたからだ。
リチャードとはコースが違うため学院ではあまり会う事はなかったが、友達も出来たのでアンジェラは楽しくすごしていた。
そんな時、両親から手紙が届いた。そこには一度戻ってくるようにと書いてあった。
アンジェラは少ししたら長期休みに入るのでその時に家に帰る事にした。
次の日、アンジェラはリチャードに手紙の話をして長期休みに家に帰る事を伝えた。
「何の話か書いてあったの?」
「いいえ、でも多分ハロルド殿下との婚約の事かと」
「王妃様が動いているみたいだね。ハイリン子爵の養子の話は連絡あった?」
「まだ何も。そろそろ許可が出てもいいと思うんだけど、やっぱり国外の人間だから時間かかってるのかしら」
「姉に聞いてみるよ。僕の方はもう許可出ているんだけど・・・」
「次期伯爵になるのね、頑張ってね」
「義兄のアルバートが魔術研究所に推薦してくれるというから、今は学院での勉強を頑張らないといけないと思ってる」
「リチャード様の方は順調ね。忙しくなりそうだけど無理しないでね」
休みに入り、ホーキン家に戻ると、すぐに来るようにと王家から手紙が届いていると言われた。
そして、1通の手紙を渡された。それはミーシェからだった。
「修道院から送られてきたよ。一応中は確認させてもらったよ」
手紙には「光のようなアンジェラ きっと夢に向かって頑張っていると思うわ 大好きなあなたを 信じている 幹の穴に隠したおもちゃには 手が届くかしら」
とあった。何が言いたいんだろうと眺めていてはっと気づいた。これは昔遊んでいた暗号だ。文章の最初の1文字だけをつなげると、「ひきだしみて」となる。
急いで部屋に行き引出を開けていった。机の引き出しの中の奥の方にミーシェからの手紙が入っていた。お見舞いに来た時に入れていったのだろう。アンジェラは手紙を読み始めた。
次の日、アンジェラは両親と一緒に王城に行った。途中アルバートと合流をした。
そこには国王とハロルド殿下がいた。
国王はアンジェラに
「ハロルドとの婚約についてそろそろ受けてくれないだろうか。ハロルドは魅了の魔法にかかっていただけで本心からアンジェラを裏切ったわけではないし、今でもそなたを大切に思っている」
「陛下、申し訳ありませんがハロルド殿下との婚約は前からお断りしています。その気持ちは変わりません。それに殿下にはもう大切な人がいらっしゃいますよね」
「そんな話は聞いていない。誰がそんな事を言っている」
「ミーシェから手紙をもらいました。花屋の女の子とかなり仲がいいようですね」
ハロルド殿下は
「お前が王太子妃になればいいんだ。彼女は私の癒しだ、苦労はさせられない。」
と開き直った発言をした。
「平民と仲がよかろうが関係ない。婚約を断るなら王命にしてもいいのだぞ」
国王は無理やりにでも婚約を成立させたいようだ。
王命がくだってしまったら従わなくてはいけない。アンジェラは諦めるしかないのかと俯いた。
「お話中、大変申し訳ありません」
アルバートが話し始めた。
「アンジェラ嬢は、ベルローズ王国のハイリン子爵との養子縁組が成立しています。本国の貴族との婚約を望むならベルローズ国王の承認が必要となりますのでまずはそちらにご連絡をお願い致します。ただ、アンジェラ嬢は伯爵子息との婚約が成立していますので、恐らく許可は出ないかと思います」
「な、なんだと。そんな話は初めて聞いたぞ。出まかせをいうな」
ハロルド殿下が騒ぐ。
「証拠はこちらの書見を」
とアルバートは国王の側近に何かを渡す。
それを見た国王は、「下がってよい」と一言だけ言った。
帰りの馬車の中で
「先ほどの事、どういう事ですか?」
とアンジェラはアルバートに聞いた。
「やっとハイリン子爵家との養子の許可が下りたんだ。それと共にリチャードとの婚約も承認された。
その書類をさっき国王に渡したんだ。この国はベルローズ王国には逆らわないから、もう何かを言ってくることはないだろう。ギリギリだったよ」
「ありがとうございました。間に合わないかと思いました」
とお父様が返事をした。
「お父様は知っていたの?」
「ああ、アルバートから連絡はもらっていたからね。アンジェラ、もうこの国で生きていく事はできなくなった。ベルローズ王国で幸せになりなさい」
「もう、お父様やお母様とは会えなくなるの?」
「いや、私の方から会いに行くよ、ただアンジェラはもう戻ってこない方がいいだろう」
「はい、お父様」
「ハイリン子爵や夫人は娘ができたと喜んでくれていますよ。私やミッシェルもサポートします。安心してください。ホーキン伯爵もいつでも来てください。お待ちしていますよ」
とアルバートは何かあったらいつでも相談して欲しいと言ってくれた。
結局、私は休みの間、ずっとホーキン家ですごしていた。もう戻ってくることはないかもと思うともう少し、この家にいたかった。お母様とはたくさん話をして買い物もたくさん行った。そして、ベルローズ王国に行く前に、ミーシェに会いたかったが面会の許可が出なかった。
そしてアンジェラはベルローズ王国に向かった。
これからはここが私の住む国になる。これから色々と学ばないといけない事があり忙しくなりそうだ。留学生となっていたハイローク学院も、編入試験を受ける事にした。試験に合格すれば学院の生徒となり、受けられる授業も増える。リチャードはすでに編入試験を受けて合格していたので、勉強を教えてもらうことにした。
試験も面接も問題なく終わり、編入試験に合格することができた。
「おめでとうアンジェラ」
「リチャード様のおかげです。ありがとうございます」
「これからは学院内でも堂々と婚約者として会えるね」
そう、ハロルド殿下と婚約していて破棄されたというのはこの国でも知られていたため、またリチャードとの婚約も両家は賛成してくれたいたがベルローズ王国の許可がなかったので言えなかったのだ。
リチャードは人気があったので婚約者のいない女子生徒によく誘われていた。
「ご令嬢と話す機会が減ってしまいますよ?誘ってくれる方も減るのでは?」
「ん?それは嫉妬してくれていると受け取っていいのかな?」
リチャードはアンジェラの顔を覗き込みながら言った。
「女の子に声をかけられるより、アンジェラと一緒にいられる方が嬉しいよ」
「時々はお昼ご飯一緒に食べたいですね」
「毎日は無理なのが残念だ。コースが違うとこんなに会えないとは思ってなかったよ」
「そうですね。学院の敷地は広いですからね」
「アンジェラはそのまま淑女コースにするの?」
「はい、この国の事を勉強する事もできるので。他にも気になるコースがあるのでそちらは授業だけ受ける事もできると聞いたので、申し込みする事にしました」
「そうなんだ、あまり無理しないようにね」
留学生の立場の時はハロルド殿下の事もあり、あまり関わらないようにしていたクラスメイトも、この国の貴族となり、またリチャード様の婚約者となった私と少しずつ仲良くなってくれた。何も知らない私を放課後、買い物やカフェに誘ってくれ充実した毎日をすごしていた。
「アンジェラが空間魔法で閉じ込められ事件の調査と一緒に魅了の魔法についても調査していたんだけど、その事情徴収にミーシェがこの国に来ることになったよ。」
ある日、リチャードがアンジェラに伝えた。
「この先の事は内密にね。アルバートが僕の助手としてならアンジェラがミーシェに会ってもいいと言ってくれた。ミーシェに会いたがっていたよね?」
「いいんですか?」
「2週間ほど研究所にいる予定だよ。僕もこの件に関わっているから事情徴収に立ち会う事になっているんだ。どうする?」
「会いたいです」
「だよね。日程が分かったらまた連絡する」
そして、ミーシェに会える日がきた。ミーシェのいる部屋に入るとミーシェはびっくりしていたが、すぐ泣き出した。
「アンジェラごめんなさい、あなたの婚約者にあんな事をして。それにアンジェラが閉じ込められたのは父のせいよ、本当にごめんなさい。謝ったって許されることじゃないのは分かってるけど・・・」
「ミーシェ、いいのよ。全部終わったことよ。それにあんな浮気者と婚約しなくてよかったと心から思っているわ。ミーシェ手紙と暗号ありがとう。あなたのおかげよ」
ミーシェの手紙には、ハロルド殿下は花屋で働いている女の子と親密な関係な事、そしてどうやら妊娠しているらしいと書いてあった。
「アンジェラ信じてくれるの?」
「もちろんよ、ミーシェはこれからも私の1番の友達よ」
「ありがとう、アンジェラ。そうそう聞いたわ、リチャード様と婚約したのね」
「うん、この国の子爵家の養女になったから、これからはこの国で生きていくわ」
アンジェラは今までの事をミーシェに話した。
「おめでとう、幸せになってね。ここでずっとお祈りしているわ」
「ありがとう。ミーシェも元気でね」
2週間の間、何回かミーシェに会う事ができた。そしてミーシェは修道院に帰って行った。
「リチャードありがとう。ミーシェに会わせてくれて」
「ゆっくり話せた?」
「うん、ミーシェは変わってなかった。昔のミーシェだったわ」
「裏切られたのに?」
「あんな浮気者と結婚しなくて良かったと思ってる。ミーシェのやった事は間違っていたけど、でも魅了の魔法のせいだし、私を心配してくれていた気持ちは本物だった。だからこれからもミーシェは私の1番の友達よ」
「そうか。そういえば、お祖母様が婚約式の話がしたいから、今度遊びに来て欲しいって言ってたよ」
「お祖母様に会うのは初めて。どんな方?」
「厳しい人と言われているようだけど、僕には優しいよ。君の両親も来るんだよね?」
「ええ、今回はアルバート様とミッシェル様の家に泊めていただくみたい。商会を立ち上げる準備もあるし、ハイリン子爵にもご挨拶したいから私と会う時間とれるか分からないと言われたの」
「それは、まあ、なんと言っていいか」
「早く商会ができればこの国に滞在しやすくなるから、急ぎたいみたい」
魔法で空間に閉じ込められて、婚約破棄もされた。ても、私は今幸せだと思う。もう少ししたら夜会にも出席する年になる、その時にリチャード様の横に堂々といたい、そのためにいまは学院での勉強を頑張ろうとアンジェラは思った。
「リチャード様、婚約式の準備頑張りましょう」
「まずは義兄たちに何したらいいか聞いてみよう」
「そうね、ミッシェル様に会いたいし、色々教えて欲しいわ」
「じゃあ今度遊びに行こう」
「はい」




