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後編

にゃあぁぁぁぁん! と甘えた声を出しながら飛びついてきたソフィアが私の腕の中におります。

可愛いですわ~可愛いですわ~~!!


あら、いけない。私ったらすっかりソフィアに骨抜きにされていますね。

ちらりとレイダン様を見ると、彼は魂が抜けてしまったような虚ろな表情で私とソフィアを見ていました。ちょっとホラーです。


「どうして……どうしてソフィアは俺にはちっとも撫でさせてくれないのに……。う、腕に抱けるなんて、死ぬほど羨ましい……悔しい……辛い……」


レイダン様が可哀想になってきたので、私はソフィアを抱えたまま彼の元へ行きました。


「あのねぇ、レイダン様。あなたが病的な猫好きだということは分かっていますけど、物事には限度というものがあるのですよ? 特に猫は、構われ過ぎるとストレスになるんです。食事中や眠っている時にちょっかいをかけたり、嫌がるまでスキンシップをすれば、嫌われるに決まっているじゃありませんか」


あ、しまった。とどめを刺してしまいました。レイダン様がズドンと落ち込んでおります。

側近候補たちがあわあわと彼を慰め始めました。


ソフィアがこの学園に迷い込んできたのは3カ月前。たまたま裏庭で作業をしていた私が見つけました。教師に相談すると、クラス内で飼ってもよいというお許しが出たので、我がクラスの皆でお世話をすることになったのです。


泥で汚れていたソフィアを洗うと、美しい純白の毛並みが現れ、クラスメイト一同、その可愛らしさにノックアウトされました。そして、猫好きのレイダン様もすっかりソフィアに夢中になってしまったのです。


レイダン様は猫好きなのですが、乳母に猫アレルギーがあり王宮で猫を飼うことができなかったので欲求不満だったのでしょう。ソフィアへの愛が爆発しました。そこまでは良かったのですが、猫は好きでも猫と接するのは初めてのレイダン様。猫にとって最もやってはいけない、“構い過ぎ”をやらかしてしまったのです。


何度も注意したんですけどね。彼には私が嫌がらせをしているように感じてしまったのでしょう。善意だったのに残念です。


「ソフィアに嫌われた……死にたい……辛い……」


グスグスと泣き出すレイダン様が見ていられなくなったので、私は彼にサプライズプレゼントをすることにしました。


「レイダン様。私たちはあと数ヶ月で卒業でしょう? 卒業したら、ソフィアは私が引き取ることになっているんですよ」

「……君が? あれ、でも、卒業したら……」

「そう。卒業したら、すぐに私たちの結婚式ですわね? つまり、レイダン様はこれからずっと、ソフィアと暮らすことができるのですよ」

「!!」


ぱあっとレイダン様のお顔が輝きました。レイダン様は侯爵家に婿入りすることになっておりますが、我が家には猫アレルギーの者がいないので、猫を飼うことに問題はありません。


……ですが。

この3カ月、あまりにもソフィアソフィアと猫ばかり優先し、私のことはちっとも構ってくれなくなったので、仕返しをすることにしました。


「とはいえ、レイダン様にとって私は小言ばかり言う嫌な女のようですので、婚約破棄していただいても構いませんけど?」


私がそう言うと、一瞬ピキッと硬直したレイダン様が慌てて私に駆け寄ってきました。


「だ、ダメだっ! 婚約破棄なんて絶対嫌だっ!!」


そのままガバっと抱き締められます。


「人間の女性の中で愛しているのは君だけなんだ! 君を蔑ろにしてしまってすまなかった! ソフィアのことは愛しているが、俺は君無しでは生きていけない……!」

「そうでしょうか? 私などいなくても、ソフィアがいれば幸せになれるんじゃないですか?」


これまでの鬱憤が溜まっていたので、ちょっと意地の悪いことを言ってみます。

すると、抱き締められている腕に更に力が込められました。


「……俺を捨てないでくれ、シリカ。愛しているんだ……!」


……ここまで情熱的に愛を告げられたら、応えてあげないと女が廃りますね。

でも周りにはギャラリーがたくさんいるので、私はレイダン様の頬に軽くキスを贈るだけにとどめます。

目をぱちくりさせて顔を真っ赤にするレイダン様に微笑むと、急に彼は真顔になりました。

あれ? 何だか、お顔が近づいて……。


わああっと中庭から大歓声が沸き起こります。だけど私はそれどころではありません!

だってだって! レイダン様に唇を塞がれているんですもの~~っ!!


ちょっと! 側近候補たち! 拍手してないでレイダン様を剥がしてください!

誰か助けて! ソフィアの手も借りたいですわ~っ!



★  ★  ★




「……尊い。これが、尊いという感情なのだな……!」


中庭の事件から1週間。一緒にお茶をしていたレイダン様が熱に浮かされたような表情で私とソフィアを見つめてきました。

私の膝の上でくつろいでいたソフィアが、怪しい気配を察したのか膝から飛び降りて逃げていきます。


「ああっ! ソフィアっ!」


残念そうな顔をしながらも、彼はもうソフィアを追い回したりはしません。学習機能はあるのですね。


「何なんですか、その尊いというのは」

「レニウムが教えてくれたんだ! 愛する者と愛する者が愛し合っている、それは尊いことなのだと。よく分からないが、百合は尊いとか言っていて……」

「今後レニウム様とのお付き合いは考えてくださいね」


側近候補におかしなことを吹き込まれたレイダン様は、その後も私とソフィアがたわむれていると、尊い……と拝んでくるようになりました。


私……ちょっと婚約破棄を考えてもよろしいでしょうか?


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