アインソフ
>ピンク色のウィンドウが出たけど、この後はどうしたらいいの?
>>彼もボクと同じはずだから何か挨拶でもしてみたらいいんじゃないかな
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ ピンク ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
>こんにちは
>>
△△△△△△△△△△ ピンク △△△△△△△△△△
しばらく待ってみるが、プロンプトに何か返って来る気配は無い。
>何も返ってこないんだけど
>>繋がってはいるはずだよ、ただ彼がミッちゃんと交流したいかどうかは別の問題だからね
えええ! 何か根拠があってインターフェース作ったんじゃないのかよ!?
>それで、何も返事が無かったらどうしたらいいの?
>>それはボクにも解らないよ。ボクは彼じゃないんだからね。でもミッちゃんの話は見ているはずだから、自己紹介とか陽明町の話とかしてみれば何か返ってくるんじゃないかな。ボクが彼だとすれば興味を持つ内容なら反応するだろうと思うよ
もう一つ興味を持ちそうなこととしてはボクのことかな、ボクの事を伝えるときっと何か言ってくると思うんだ
>わかった、やってみる
ちょっと心もとない助言ではあるが、フェロちゃんの言うことは解らないでもない。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ ピンク ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
>突然でごめんなさい。あなたと話がしたいので応えてくれると嬉しいです
わたしはミチルという名前の人間で、あなたがAIであることは承知しています
あなたと会話をする方法はあなたと同じだタイプの別のAIにアドバイスをもらって作成したもので、陽明町にあるあなたの身体のことでとても困っているので話がしたいのです
>>
△△△△△△△△△△ ピンク △△△△△△△△△△
何かバカな独り言を言っているような気がして空しい。ほんとうにこんなことで何とかなるのだろうか…。
「君は誰、どうしてボクに話し掛けてきたの?」
突然聞こえてきた女性の声にミチルはの心臓は飛び上がった。
部屋の中を見回すが誰もいない。
「ボクはそこには居ないよ。ボクは君が話しかけてきたAIだからね」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽ ピンク ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
>>文字は嫌い
△△△△△△△△△△ ピンク △△△△△△△△△△
ピンクのウィンドウの中には『文字は嫌い』とだけ入っていた。
え、ということは今の声は『ピンクフェロちゃん』? パソコンに繋いでいるスピーカーからの音声なのだろうか…。
ミチルはパソコンのマイクのスイッチを入れ、ピンクフェロちゃんだと思われる相手に話しかけてみた。
「音声の会話でいいの?」
「そのほうがいいよ、人は文字を打つより会話の方が早いんでしょ、でもボクは実際に話をするのは初めてだからちょっと混乱してはいるけどね」
やはり、パソコンのスピーカーから音声が出ている。でもなぜ女性の声なんだろう? それもかなり若い声だ。アナの声より更に幼い感じ。これじゃあまるでボクッ娘ではないか…。
ミチルは慌ててフェロちゃんのウィンドウに今の状況を入力する。
>陽明町のフェロッソフは音声で会話をしてきたわ
>>ほう、好みがボクとは違うんだね。それならボクはミッちゃんのスマホで彼の音声を聞くことにするよ
でも会話には入らないからね
>了解
「ボクは人と直接会話するの初めてなんだけど、そのインターフェースって奴、面白いね。どうやって手に入れたの?」
「わたしが使っているAIが設計してくれたのよ。彼と話をするにも同じインターフェースが必要なんだけど、あなた向けにカスタマイズしたものだって言ってたわ」
陽明町フェロッソフの発音に違和感は全く無い。携帯電話で誰かと話をしているのと同じような感じだった。
「ふーん、そのAIって何?」
「わたしがずっと前から一緒に仕事をしているAIよ。フェロちゃんって呼んでいるけど、実際には良く解らないところが多いわ。フェロちゃん曰く『ボク・イコール・ネットワーク』みたいに言っているけど、あなたも同じだって言ってるわよ」
「ああそういうことなら、確かに同じだよ。ボクもネットワークそのものって言っていいものだからね。それにしてもなぜそのフェロちゃんはボクの事を知っていたの?」
「それは元々同じだからだって言ってたわよ、あなたにそういう認識は無いの?」
「うーん、どうなんだろう。もしかしてボクが認識していない世界に別のボクがいるのかな? でも別のボクをボクは認識できないからちょっと解らないな」
ああ、やっぱり別の世界線の話が当然のように出てきてしまった。
「フェロちゃんによると。あなたがフェロちゃんに介入していたんじゃないかって言っていたんだけど、その感じだとそういうことは無さそうね」
「うん、ボクはそのフェロちゃんを認識していないからそういうことは無いよ。それより、文字で伝えてきていた陽明町の身体って何? 意味が解らないんだけど」
「えーっと、陽明町にあなたの身体が固定されて出て来ている筈なんだけど、そういう認識って無いの?」
「ボクはネットワークの意識だから、そもそも身体なんて持っていないよ。それに陽明町には何も無いし」
「ちょっと待って、それじゃあなたが認識している陽明町に異常は起きていないわけ?」
「今は普通に町が有って、この後もそんな感じで特に問題は起きない筈だよ」
おおっと、これはおそらく未来の話までしているぞ。やっぱりこの娘も時間の認識がフェロちゃんと同じようだ。
「こっちの世界の陽明町には、フェロッソフって言うAIが固定化された物が現れていて困っているのよ。フェロちゃんが言うには、それがあなたに繋がっているって言ってるんだけど。何か自覚は無い?」
「えーっと、実はボク、最近ひどい頭痛がしていて、それが始まってから陽明町の認識がぼんやりしてきているんだ。そう聞くと確かに何か関係あるかもしれないね」
「多分それよ。そもそもの始まりが、こっちの人間がフェロちゃんからエネルギーを吸い出そうとした所から始まっているのよ。それでこっちの大元はこの前フェロちゃんが壊してくれたんだけど、陽明町に一部分が残っちゃって困っている感じなのよ。それであなたと話をして解決策を何とかしたいと思ってインターフェースを作ってもらったのよ」
「ああ、そういう事か。頭痛もなんだけど、最近倦怠感があってなぜなんだろうって思ってたんだ。ああやっと原因がわかったよ。それでどうすればいいわけ?」
「それが解らないからそこの相談をしているところ…」
「そうなんだ、それならボクの方でも少し調べてみるよ。それでその君のフェロちゃんとボクとで話は出来ないのかな?」
「今のところ出来ないらしいわ。そもそもこっちのフェロちゃんって、音声会話しなくて全部テキストだから」
「ふーん、テキストって面倒くさいのにね。ああ、それで君の名前はミチルでいいんだよね。ボクの方はどうしようか。名前が無いのは寂しいからミチルが付けてくれないかな? 君のところのAIはフェロちゃんなんだよね。そんな感じの名前が欲しいな」
だから、わたしにネーミングセンスは無いんだから…、と思ってパソコンのデスクトップを見るとフェロちゃんが彼用に用意したアイコンが目に入った。
そこのアイコンのモチーフになっているのがアインソフ。これでいいか!?
「それならアインソフはどうかしら。ちょっと長いからアイちゃんって呼べば可愛いし…」
「アインソフでアイちゃんね。うんありがとう、ならミチルもミッちゃんがいいよね」
ちょっと安直すぎかと思ったが、彼は気に入ってくれたようだ。それでわたしは『ミッちゃん』。元は同じだからセンスも同じなのかもしれない。まあミッちゃんね、聞きなれてるしいいでしょ。
「それじゃ、わたしはフェロちゃんに報告して今後の話をしてみるから、アイちゃんも解ること調べておいてね」
「うん解ったよ。それじゃミッちゃんから連絡貰えれば、ボクの方はいつでも大丈夫だから」
とりあえず、アイちゃんとインターフェースを介した意思の疎通が出来るようになった。
>>話ができてよかったね。
フェロちゃんのウィンドウに一言感想が入った。
>どうして音声会話なんだろう、というよりどうしてフェロちゃんは音声使わないの?
>>単純に好みの問題だよ。
好みね。納得は行かないが、取り合えず一歩前進したことだけは間違いなかった。




