第35話 そのかき氷は甘くて②
「あら、沙織ちゃんと香織ちゃんじゃない。奇遇ね。今年はクラスでお祭り来てるんでしょ?」
「星奈ママお久しぶりです!そうなんです。今日は気合い入れて浴衣出してみたんです。どうですか?」
香織たちはかき氷の列を抜け、旭家のもとに集合する。香織は一回転して星奈の母親に浴衣を見せる。
両親が香織の浴衣に注目する中、星奈だけはじっと正宗を見ていた。正宗もじっと見つめ返す。そして星奈が口を開いた。
「ひ、久しぶり……?」
「確かに久しぶりになるのかな?」
そんなやりとりに沙織は噴き出して笑った。
「あ、あんたたち面白すぎる……ぷっくくく」
「わ、笑わないでよ沙織!」
星奈は沙織の肩をぽかぽか叩く。
「ごめんごめん、てか星奈祭り来ないんじゃなかったの?またお父さんの思いつき?」
「うん、そんな感じ。お父さんがお祭り行こーってなったから来ちゃった」
二人が会話している横で香織が正宗に耳打ちした。
「かき氷買いに行かない?」
「そうだな、行こうか」
「ちょっとかき氷買ってくるね。沙織もいる?」
「私はいらない。いってきなよ」
正宗と香織が列に加わるのを見届けた沙織は星奈の肩を叩いた。
「夏休み、士道くんと何もないの?見ての通り、このままだと香織が横から盗ってっちゃうよ」
星奈は沙織の一言にシュンとする。
「慎重に恋するのもいいけど、時には大胆に動いたほうがいい時もあるよ。ただでさえ後輩幼馴染ちゃんがいるのに、香織まで出てきたらもうやばいよ。ほら見なよ、あのデレデレした顔」
正宗の表情はいつものきりっとした感じはなく、崩れていた。なんというか、ふにゃっとした感じに。
それを見て星奈は拳を握り、意を決した表情になった。
二人が戻ったタイミングで星奈の両親も星奈に声かけてきた。
「星奈、そろそろあっちのほう行かないか?」
両親のもとに戻ろうとするのを躊躇う星奈を見て母親は何かに気づいたようだった。星奈のもとに行き、耳元で話す。
「士道くんと一緒にいたいの?香織ちゃんにとられそうで不安?」
星奈は顔を真っ赤にして慌てふためく。母親の言葉が聞こえていない正宗たちは揃って首を傾げる。
「花火、ここの大通りから外れるけど、呉翔陽の門前の坂だとすごく綺麗に見れるわよ。頑張りなさい」
そう言って母親は星奈の背中を押して離れる。背中を押された星奈はよろよろと正宗の前に行った。
「ね、ねえ士道くん。一緒にお祭り回らない?」
星奈は自分の心臓がバクバクなっているのを感じた。親や沙織たちの前でだったので余計に気恥ずかしくなった。
もし断られたらどうしようか。そんなことがふと頭によぎったがすぐに沙織の助け舟が入った。
「いいんじゃないの?別に断わる理由ないし」
「え!?でも今回はクラスで……」
「それ言ったらもうバラけちゃってるじゃん。花火までは別行動なんだし、星奈が増えたとこで問題ないでしょ。ここのみんな友達だし。星奈の親がいいって言うならいいんじゃない?」
もっともなことを言われ、香織は少し考え「ま、いっか、星奈だし」とけろっとした。
「お祭りは人数いるほうがいいもんね。クラスの集まりやらなかったら星奈と行く予定だったし」
「あ、ありがとね、沙織、香織」
星奈はホッとする。
それを見届けた星奈の母親は父親の背中を押して「はい行くよー」と退散していった。
「え、星奈と回れないの?」
「大人は大人、子どもは子どもの世界があるの。今年も夫婦水入らずで楽しみましょ?」
「母さんよ、あの場に居たさわやかな少年に対する星奈の視線がやたら熱かったような気がしたんだがまさか……?」
「そういう詮索、娘は嫌うわよー?今年は黒毛和牛串とたこ焼きと焼きそばと色々食べたいのあるんだから、あなたはお財布用意して!」
二人が人混みに消えていくのを女子三人は手を振って見送った。
「旭、こっちきて何か食べたのか?」
正宗は星奈に会話を振る。星奈は首を横に振った。
「じゃあこれあげるよ。旭、めっちゃ汗かいてるし」
「え、そんなに汗かいてる!?ちょ、士道くん近づかないで!」
「近っ、え!?」
「士道くんデリカシーないなぁ」
「女子に汗っかきとか言わないほうがいいよ。とくに星奈、純情乙女なんだから大事に扱わないと」
星奈はカバンからハンカチを取り出し、必死に汗を拭く。その間正宗は女子三人に近寄ることを許されなかったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
少しでも続きが読みたいと思った方は、ブックマークと☆☆☆☆☆をお願いします。
非常に励みになります。




