第34話 そのかき氷は甘くて①
星奈は家族で通りの屋台を歩いていた。両親が買ってきたポテトや串焼きを分けてもらい食べ歩く。
「家族で祭りとか星奈が小学校のとき以来じゃないか?」
「そうね、中学からは星奈は友達と行くようになったから二人で行くか、もう諦めるかだったものね」
両親は楽しそうに歩く。星奈は一歩後ろでキョロキョロしながら歩いていた。
「人いっぱい……士道くん、いるかな?」
星奈は正宗を探していた。一目でいいから会いたかった。香織とは何も起きていないという証明が欲しかった。
あの時電話で強がった自分を悔いていた。香織のように堂々と言えればよかった。
「ねえねえ、星奈。あの子、士道くんじゃない?隣にいる女の子は沙織ちゃんと香織ちゃんかな?」
「士道くん?星奈、士道くんとは誰だ?まさか、彼氏か!?」
星奈は父親の戯言は無視して母親の指さすほうを見る。そこには確かに正宗たちがいた。星奈は駆け寄って声をかけようとしたが、立ち止まった。
「あらー」
母親は目を輝かせる。
星奈の目に映ったのは正宗が香織にポテトを食べさせてもらっている光景だった。星奈は胸がチクリと痛んだ。
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「そういえば士道くん、夏休みの間は卓球してるの?」
香織は突然卓球トークを始めた。卓球選手がそろえば当然ながらそうなる。沙織も正宗の卓球関連の情報はそんなに知らないので少し気になった。
「一応ね。基本はフィジカルトレーニング中心だけど、週三で社会人チームにお世話になってるよ」
「やっぱ鍛えてるんだ!体育祭のときとか士道くん思ってた以上にガタイ良いなって思ってたんだ」
「確かに。腕立てとか楽々やってたし、なんなら私が乗っかってもできたもんね」
「あの時はまじでキツかった」
「ちょっと腕触ってみてもいい?士道くん力こぶ作ってみて?」
正宗は香織に言われるがままに力こぶを作る。香織と沙織は二人で正宗の腕をツンツンと触る。
「公衆の面前でこれはさすがに恥ずかしいぞ……」
「やば、めっちゃかたっ!太っ!」
そのセリフは少々誤解されるのではないだろうか。正宗は色々と突っ込みたかったがここまで目を輝かせてくるのを見るとためらってしまった。
その様子をクラスメートたちが遠くで見つけて見ていた。
「なあ、士道ってモテるのか?」
「両手に華だな。いいなぁ」
「うわ、きも」
「おい女子ども!きもはないだろが!部活漬けで今はフリーなだけだ!来年の夏にはできる!」
「いや来年の夏って受験勉強始まるやつじゃん、無理でしょ。そんなだから士道に負けるんでしょ。少なくともあんたらと士道のどっちか選べって言われたら士道選ぶわ。なんか清潔そうだし誠実そうだし」
「好き放題言いやがって……」
男子たちは女子に完敗した。
「あ、かき氷あったよ」
「どうする?買ってく?」
沙織が正宗に聞く。正宗は大きく頷く。香織は「犬みたいー」と笑って買いに行った。
かき氷の屋台は少しではあるが列ができていた。この暑さなので繁盛しているようだ。正宗は香織に続いて列に加わる。
「士道くんはシロップ何にする?私いちごにしようかな」
「おれブルーハワイにしようかな」
二人がシロップについて話していると沙織が後ろから正宗の服の裾を引っ張ってきた。
「?」
沙織は無言で横を指差した。正宗はその方向に目をやる。
「え……」
そこには驚いた顔をした星奈が居た。香織も星奈に気付き、一瞬表情が暗くなったがすぐにいつもの笑顔に戻り「星奈だ!奇遇ー!」と手を振った。
香織の表情が暗くなったことに二人は気付かなかったが、やはり沙織だけは気付いていた。
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