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ドロップアウト  作者: 野良猫
朝活仲間と幼馴染
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第14話 星奈の部屋

「ただいまー」


 正宗は星奈について行って家に入る。


「おかえりー……って、あら?男の子?友達って沙織ちゃんじゃなかったの?え、彼氏?」


「あ……」


 星奈は母の一言に「やってしまった」という顔になる。どうやら今日会う相手が異性であることを言ってなかったようだ。そのまま家に連れてきたものだから、星奈の母はいつも通り友人の沙織だと勘違いしてしまったのだ。


「か、彼氏じゃないよ?友達!士道くんとは一緒に勉強してるだけだよ!」


「ふふ、ムキになっちゃって。まあそういうことにしといてあげる」


「お母さん!」


 星奈の母はニヤニヤしながらキッチンに消えていった。星奈は顔を真っ赤にしながら「もう!」と正宗を部屋に案内する。


「ごめんね士道くん、お母さん、そういうの大好きな人だから」


「いいよ全然」


 今回は友達だと紹介されたが、願わくば次は彼氏として紹介されたいと思う正宗だった。


 星奈の部屋はスッキリしていた。勉強机には参考書が並び、星奈と沙織のツーショット写真が写真立てに入れられていた。制服はきれいにアイロンがかけられた状態でかけられ、ベットもシワなく整えられていた。


「あの、士道くん。あんまり観察しないでほしいかな……ちょっと恥ずかしい」


「あ、ごめん!」


「飲み物持ってくるからちょっと待ってて?オレンジジュースでもいいかな?」


「うん、ありがとう」


 星奈はそう言って部屋を出て扉を閉める。そして「ふう」と大きく息を吐いてしゃがみ込む。


 ――――大丈夫、士道くんはただの友達……私、変な態度とかとってないよね……?


 星奈の心臓はバクバクだった。正宗を部屋に誘うのも凄く緊張した。家にあげたときの母の発言にもドキッとさせられた。


 彼氏。


 その言葉が本当になればどれだけ嬉しいか。でも星奈はあえて自分からは望まない。落ちたときの心が痛くてつらいから。一喜一憂するあの感じがつらいから。でも、正宗とは一緒にいたい。矛盾する感情がぐちゃぐちゃに入り乱れて結局胸が苦しい。


「はあ……難しいな」


 恋心をしまいこむというのは難しい。星奈はため息をつきながらキッチンに飲み物を取りに行くのだった。


 星奈がジュースを持って部屋に戻ると正宗は宿題のプリントの束を出していた。


「うちってスポーツ名門のくせに自称進学校も名乗ってるから宿題の量もやばいよな。ゴールデンウィーク何日あるかわかって出してきてるのかなあの先生たちは」


「ほんとそれだよね。この量はキツイよ」


 星奈はコップにオレンジジュースを注いで「どうぞ」と正宗に渡す。


「ありがとう」


「さあ、がんばって宿題終わらせよう!」


「いや、一気にやらなくても計画的にやればいいんじゃ?」


「はい、正論不要!」


「うす」


 部屋が静かになり、二人は宿題に集中する。星奈は時折「んー?」と首をかしげ、教科書をみたりしながらプリントを埋めていく。


 その様子はとても可愛く、正宗は横目で見てしまい、集中できずにいた。


 一時間ほど勉強したところで、扉を叩く音がし、二人の手が止まった。


「星奈ー?そろそろお昼だけど、ご飯どうする?」


「え、もうそんな時間?うーん、士道くん、どうする?」


「どうしようか?」


「もうちょっと勉強したいしなぁ……ちょっとキッチン行ってくるね」


 星奈は部屋を出て母と話をする。


「昼からも勉強するの?」


「うん、そのつもりだけど」


「今家に何もなくてね、お母さん友達と外に食べに行こうと思ってるんだけど。星奈もあの子、えっと士道くん?とどこか食べに行ってきたら?」


 そう言って星奈にお金を渡してくる。


「近くのデミーなら歩いて行けるとこでしょ。ちょっと外出てリフレッシュしてきなさい?」


「うん、ありがとう。そうする」


 デミーとは全国展開しているファミレスのチェーン店である。


「ねえ士道くん。息抜きがてらデミー行かない?ちょっと休んでまた勉強再開っていうのはどうかな?」


「いいよ、行こう」


 正宗と星奈はデミーに向かう。デミーは家から徒歩三分のところにあった。


「近っ!」


「ここ近いから小さい頃から通ってるんだ。ポイントカードもあってね、ほら見て、もうこんなに貯まってるの」


 正宗はポイントをみて驚愕する。


「これは……ほぼ毎週通ってる人のポイント数じゃありませんか、旭さん?」


「通ってるのはお母さんだよ。お母さん、デミーの大ファンだから」


 星奈も苦笑いする。


 店はゴールデンウィークということもあって満席だった。順番待ちをみたら三組だったので、二人はそのまま名前を書いて待つことにした。


 十分くらいで呼ばれ、二人は窓際の席に案内される。


「さて、士道くん何食べる?ちなみに私はもう決まってるんだ。ここの唐揚げ凄く美味しいんだよね」


 星奈はタブレットで唐揚げ定食を選ぶ。正宗はがっつり食べたい気分だったのでミックスグリルの和風セットごはん大盛りを選ぶ。


「セットの大盛り!やっぱ食べ盛りの男子だね」


「いやいや、少ないほうだと思うよ。他の男子はもっと食べるよ……野球部の男子とか」


「確かに野球部は食べる量おかしいかも」


 そこからしばらく談笑しているうちに店員が料理を持ってきた。


「いただきます」


 星奈は唐揚げにかぶりつく。


「んー、やっぱり美味しい!あ、士道くんもどう?」


 星奈は唐揚げをはしで正宗の口元に持ってくる。完全に「あーん」の状態である。それに気づいた星奈は「ご、ごめん」と一言謝って唐揚げを皿に戻した。


「ちょっと浮かれすぎちゃった」


「い、いいよ。気にしないで……」


 そこからは若干気まずい食事になった。食べ終えた二人は家に戻り、勉強を再開する。だがその集中はすぐに途切れた。


 ――――眠たい!!!!!


 二人とも満腹になったことで強烈な眠気に襲われていた。


「これは……勉強どころではないね……」


「やばい、眠たすぎる!士道くん、コーヒー飲もう!確かお父さんのやつがあったはず」


 星奈はよろよろとキッチンに向かい、スティックコーヒーを見つけ、コップに注ぐ。


 コーヒーカップを二つ持って部屋に戻り、正宗に渡す。


「どうぞ。てか作ったあとに聞くのはおかしいけどコーヒー飲める?」


「あんま飲まないな」


 二人はコーヒーをすする。そして二人で渋い顔をする。


「にがぁ」


 そしてお互いに笑った。


 そこからカフェイン効果で覚醒した二人は勉強に集中し、なんとか宿題を終わらせることができた。


「終わったー!」


「あら、もう夕方だ」


 外を見る日が傾きかけていた。正宗は「そろそろ帰ろうかな」と荷物をまとめる。


 星奈は玄関の外まで正宗を見送りに出る。


「今日はありがとね、士道くん」


「全然いいよ。また休み明け、勉強会(あかさつ)しよう」


 そう言って帰ろうとした――――ところで星奈にシャツの裾を引っ張られた。 


「え?」


 星奈はハッとして手を離す。


「あ、ごめん!なんでもない!じゃあまた休み明けね!」


「……?じゃあねー」


 正宗は首をかしげながら帰路についた。


 正宗が見えなくなったのを確認した星奈はその場にしゃがみ込む。星奈の顔は真っ赤だ。


「何してんだ、私」


 想いと決意と行動が一致せず、ぐちゃぐちゃな自分に嫌気がさす星奈だった。

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