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ドロップアウト  作者: 野良猫
朝活仲間と幼馴染
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第11話 しまいこんで

 月末になり、学校は体育祭の準備に取り掛かっていた。正宗のクラスもどの競技に出るかで盛り上がっていた。


 呉翔陽学園はスポーツの名門校ゆえに、体育祭はかなりレベルが高い。


 体育祭は偶数組は赤組、奇数組は白組、スポーツ科クラスは半分に分かれてそれぞれの組にはいり、点数を競う。


「おれたちが出るのは百メートル走と綱引きと借り物競走、あと選抜リレーだ。百メートル走は全員参加だが、それ以外にも全員何かしらの競技には出てもらいたい」


「よし、陸上短距離は選抜リレーを受け持とう」


「綱引きは野球部に任せろ」


「そこにウエイトリフティング部も入るぞ」


 運動部たちがやる気を出し、参加競技が次から次へと決まっていく。正宗は無難に借り物競走に手を挙げた。


「ふぅん……」


 正宗の参加競技が決まったのを確認した沙織はものすごく悪い顔をしていた。


 その日の放課後、沙織はとある集団と密会をしていた。内容は体育祭の件だ。


「これ、よろしくね?」


 沙織は丁寧に折りたたんだ紙を渡す。集団はそれを受け取ると大事にしまい、部屋を出ていく。


 沙織は「ふふふ」と笑う。


「ごめんね、星奈。ちょっとおせっかい焼いちゃうよ」



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 体育祭が近いこの時期の体育は競技の練習になる。正宗の参加する借り物競走組はとくにやることがなかったので各々自由に身体を動かして良いことになっていた。


 正宗はただぼーっと青空を眺めていた。時折吹く風が心地よく、ついつい寝てしまいそうになる。


「これ寝れるわ」


 さすがに寝るのは授業態度的によろしくないので、眠気を飛ばすために腕立て伏せをすることにした。


「ふん!」


 とりあえず五十回。意外といけることが分かった正宗は更に負荷をかけ、スローでする。腕がプルプルと震えだし、限界が近づいてきたところで、誰かが背中に負荷をかけてきた。


 ズン、と重たくなり、正宗は「うぐぐ」と呻く。


「ちょ、誰だ――――伊藤さん!?」


「頑張ってるね、士道くん。みんなダレてるのに一人だけしっかりトレーニングしていてえらいえらい」


 沙織は正宗の背中に腰掛けていた。正宗は崩れまいと必死で耐える。


「士道くんて結構筋肉あるんだね。その筋肉で私の親友をたぶらかしてるんだ」


「言い方!」


「冗談。それで、進捗はどうなの?」


「進捗?」


「星奈のことよ。デートは?約束取り付けたの?」


 沙織は呆れ顔で言う。


「一応夏祭りとかの話はしたけど、どこか行くって約束はまだ……」


「ヘタレ」


 沙織は立ち上がる。急に軽くなり正宗は崩れ落ちる。沙織は何も言わず正宗のもとからいなくなった。


「なんだったんだ?てか、腕痛え……」


 正宗の腕は鉛のように重くなっていた。正宗は周りの女子たちがヒソヒソと話してるのに気づき、ため息をつきながら水を飲みに行く。


「なんか気持ち悪がられたかな?」


 沙織がなぜちょっかいをかけてきたのか、その真意が分からなかった。とりあえず最後の捨てゼリフだけはグサッときていた。


「花見まつりに続けて……わかってるっての」



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 体育以降、正宗は眠気に襲われていた。腕の疲れがひどく、とにかく眠たかった。


「伊藤さんのせいだ……疲れて眠い……」


 授業は気合で乗り切――――れなかった。終始白目を向いていて先生にはめっちゃ怒られていた。他にも寝てる生徒いるのに。


 放課後、正宗は机に伏せて完全に落ちた。皆部活に行き、教室は誰もいなくなった。静かな教室で正宗の寝息だけが聞こえる。


 誰もいなくなった教室に、星奈が静かに入ってきた。星奈は正宗が寝ているのを確認するとあたりをキョロキョロ見渡し 、正宗の前の席に腰掛ける。


「……」


 星奈は正宗の寝顔を見ていた。


「熟睡だ……」


 星奈はそっと正宗の頬をツンツンする。正宗は微動だにせず、寝息を立てて寝ている。


 星奈は正宗の髪をそっと撫でる。


「………髪、かたい。士道くんて、まつげ長いんだ」


 しばらく正宗の寝顔を眺める。星奈もつられるようにうとうとしだした。


「やば、眠たくなってきた」


 星奈は席を立ち上がる。


「ここにいたら寝ちゃう……。士道くんと勉強しようと思ったけど今日は無理だな。士道くん、なんかすごい疲れてそうだし、なにより私が寝ちゃいそう」


 星奈は静かに教室をあとにした。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 その日の夜、星奈はベットに転んで正宗のことを考えていた。


「……士道くんは、卓球が近くにあったほうが楽しそうだな」


 波瑠の頭を撫でていたあの光景を思い出す。多分あの二人は幼馴染だからあの距離感で、正宗は卓球が好きだから部内戦のとき、あんなふうに堂々と波瑠を怒ることができて……。


 色々なことが頭の中をぐるぐる駆け巡る。


「うん、やっぱこれ以上どうこうするのは辞めておこう」


 星奈は再び線を引いた。


「こうなるから今まで考えないようにしてたのに。士道くんは勉強友達、それ以上は望まない。期待しない。じゃないと――――」


 じゃないと、胸が苦しくなる。この感情は、星奈には辛かった。


 星奈は本心をしまいこんだ。


 士道正宗に惹かれる自分をしまいこんだ。


 ――――士道くんは友達……

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