初日01:20:55/日向大衆食堂「いこい」/前田千尋
「あの・・ありがとうございます・・」
向かい側の席に並んで座った二人の女性のうちの一人が言った。
「・・・大丈夫」
私は短くそういうと、席から立ち、入り口付近を見回す。
扉を開け、国道につながる道を眺める。
「国道までの道には奴らはいないみたい」
私は二人のところまで戻って言う。
「早いところこの町から出て助けを呼んだほうがいい・・・」
「なら・・あなたも一緒に・・・」
「それはできない」
私は食堂の厨房を漁りながら言った。
目ぼしいものを見つけて二人のところに戻る。
「私はちょっと人を探さなきゃいけないから・・・コレを持って早いところ逃げて」
私はテーブルの上に肉切り包丁と金槌を置く。
二人はそれを見てつばを飲み込んだ。
「正当防衛にはなる・・・気休め程度だけど、何もないよりはいい」
私はそういうと一人店の入り口まで歩いていく。
扉を開けて、もう一度周囲を見回す。
まだ異形の者はこの辺りまで来ていないようだった。
「早く・・・」
「はっはい・・」
私が言うと、二人は震えた手で武器を持ち、ゆっくりと歩いてきた。
「ここをまっすぐ行けば向日葵が咲いてるロータリーにたどり着く・・・そこからまっすぐ道なりに行けば国道に突き当たる」
「わかりました・・・」
「もし何か理由があって国道に行く道に行けないのなら、ここからまっすぐ行って右手にある丘の上を目指すといい」
「丘・・・?」
「そこには古ぼけた教会がある・・カギは内鍵だから、中に入って鍵かけとけば誰も入れない・・・少なくともしばらくは安全」
私はそこまで言うと二人とは反対の方向を向いてM1を構えなおす。
「幸運を」
私はつぶやくようにそう言うと、二人とは反対側の方に歩いて行った。