表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い空に終焉を  作者: 朝倉春彦
3.初日12時~20時:血に染まった大津波
18/78

初日12:35:00/日向町立図書館/前田千尋

駐在警官の襲撃を逃れた私達は、真っ赤な霧が漂う町を駆けて、図書館に身を潜めた。

少し息が上がって、精神的に参っている彼を、図書館最奥の適当な椅子に座らせると、私は単身で図書館内を見回る。


入るときにも、誰もいないのを確認しているが・・・念のためだ。


一通り確認を終えると、窓の外を確認する。

辺りは不気味なほどの静けさに包まれていた。

先ほどまでここで・・・人ではない何かが破壊活動にいそしんでいたのがウソみたいだ。


「なあ、千尋・・・病院に誰かいるんじゃないのか?」


浩司の下に戻ると、彼が言った。

郷土資料コーナーの窓の奥、ちょうど私が確認できていなかった所だ。

誰かが割ったのか、窓が割れていた。

彼の言葉通り、図書館横の病院の一部が不自然に明るい。


「人・・・?だと思う?」

「さぁな・・・ただ、奴らが電気つけるほどの頭はないだろ」

「・・・なら・・・人か」

「行くか?」

「いいや・・・その前に少し休んでて」


私はそういって彼の向かい側の椅子を引いて、手に持っていたM1を机に置く。

丁度、郷土資料のコーナーに居るのだから、調べておきたいことがあった。


本棚から、以前の事件で眺めていた、いくつかの目ぼしい本を取って椅子に座る。


暗がりの中、懐中電灯の明かりを頼りにページを捲った。


「それは・・・?」

「・・・前の事件の時も、ここで調べてたんだ。この町のこと・・・今回も何かあればいいのだけれど」

「この状況のことが本に書かれててたまるかよ」

「一つでも可能性があるなら、諦めないことさ」


私は流し読みをしながら、次から次へとページを捲る。


「嘘みたいな、あの儀式のことだって本にあったんだ」

「・・・」

「だから・・・きっとどこかに在る筈さ」


静寂に包まれた図書館で、ただただページを捲る音だけが聞こえる。

普段の夜なら、虫の鳴き声くらいは聞こえるのだが・・・それすらも聞こえない。


浩司も、一時の休息とあって・・・今までのショッキングな出来事を振り切れずも、少しは休めていそうだった。


私は、いくつかのページを折って目印にしながら、本を見続ける。


3冊目に入ったころだろうか?

ふと、外から流れる空気が少しだけ揺らいだ。


「浩司、そのまま黙ってて」


私は、本を開いたまま机に置くと、M1を持って立ち上がる。

懐中電灯を消して、割れた窓からM1を構えて外を見ると・・・何体かの異形が病院前にぞろぞろと集まってきていた。


その直後、病院の明かりがともっていた部屋から、ガラスが割れた音がする。

一瞬だけ、見えた人影は入り口の方へと駆けだしたように見えた。

そして、物音に引きずられるようにして、徐々に闇から異形の者が姿を現す。


「浩司!墓場を回って丘の上の教会まで引こう。数が増えてきた」


私はそういうと、一発だけ引き金を引いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ