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赤い空に終焉を  作者: 朝倉春彦
3.初日12時~20時:血に染まった大津波
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初日12:04:29/日向大衆食堂「いこい」/前田千尋

「とりあえず先生のところに戻ろう」


私は食堂の扉の前に立ち、周囲を見回しながら言った。

家から歩いてすぐのところにある食堂でさえ、今は30分以上かかる。


浩司は先に食堂の中に入って、適当な椅子に座っていた。

顔を少し青褪めさせ、息を切らしている。


町が赤い空に包まれてから半日。

異形と化した人間は、何度地に伏せても起き上がり、そのたびに近くの生物と融合してさらに酷い生物へと姿を変えていく。


義明も加奈もその典型だ。

浩司が見たときは、形はまだ人間だったらしい。

それを倒して、私が会う時には、最早人とは言えない何かになっていた。


「あの辺りまで、奴らは来てたよな」

「ええ、もしかしたらバリケードが破られてるかも」

「そんな言い方するなよ」

「ありえなくもない、どうする?真っすぐ馬鹿正直に公民館を目指すか、念を入れて学校から回るか」


私は食堂の入り口付近の壁に寄りかかり、手に持ったM1を軽く点検する。

浩司はそんな私を何とも言えない表情で見つめると、私に視線を合わせずに言った。


「学校から行こう・・・」

「賢明ね」


私は短くそういうと、食堂の扉を開ける。


その瞬間、小さな拳銃の銃撃音が鳴り響き、私の右腕を銃弾がかすめていった。


「・・・」

「千尋!」

「大丈夫」


浩司が駆け寄ってくるが、私はそれを制してM1を構える。

私は目を見開いて、食堂の外に視線を向けると、赤黒い霧の奥に、頭と胸が一体化し、右腕以外が何らかの獣の物になってしまっている駐在警官の姿が見えた。


私がM1を向けるより早く、彼は此方に銃を向けている。

咄嗟に食堂の中に入り込んだが、放たれた銃弾が私の右肩をかすめていった。


「裏口から行こう、早く行って」


私は表情を元に戻すと、浩司にそう言い、先に裏口の方向へと急がせる。

私は浩司が裏口を出るまで、M1を構えて、食堂の入り口の扉をじっと見つめていた。


「被疑            者      ぁ~       かく       ほぉ~ ~」


何かの動物の腕になった左腕が扉を破壊する。

どこにあるかもわからない喉からつぶれた声が鳴り響いた。


私はそれを冷静に見つめると、ゆっくりと2回、引き金を引く。


それは、肥大化した、正義を守る人間だった何かを貫く。


直後、大きな喚き声とともに、それは地に伏せた。


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