初日02:55:01/平元家/前田千尋
数発弾を使うことになってしまったが、私はそれを気にすることなく私の家に駆けこんだ。
周囲にいた異形も振り切ってきたので、おそらく何も追いかけてはこないはずだ。
私は玄関のドアを閉めるなり鍵をかけ、少し荒れた息を整える。
「浩司!いるなら出てきて!」
私は人生でも3回目くらいの大声で従兄の名を呼ぶ。
「その声千尋か?」
2階のほうから聞きなれた、聞きたかった声がするのを聞くと、私は小走りで2階に上がっていった。
「浩司」
「千尋・・・」
廊下でようやく顔を合わせると、私は安堵感から壁に寄りかかってふーっと息を吐いた。
「その恰好は・・・?」
「ああ・・」
浩司も張り詰めた顔から、普段の表情になっていたが、私の姿を見ると首を傾げた。
「・・・私の部屋で話すよ」
私はそう言って自室の扉を開ける。
浩司も入れると、扉についた簡易的な鍵をかけた。
中に入るとM1を机の上に置きベッドの上に腰かける。
「とりあえず無事で良かった」
「そっちも・・・ただ加奈と善明は・・・もうダメだった」
「ええ、さっき図書館で会った・・・」
「撃ったのか?」
「・・・」
私は無言で首を縦に振ると、部屋は静寂に包まれた。
「そうか・・俺も殴っちまったからな・・」
「そうなの」
私はそういうと、重い腰を上げて、机のイスに座りなおす。
「そういえばさっきの続き・・・話そうか?」
独り言のように言うと、机の上のケースのロックを外した。
「・・・いいのか?さっきはあんなに渋ってたのによ」
「いい・・・」
私は仕切りのトレーを外すと、中にあった小さな拳銃を手に取った。
ワルサーPPK・・・予備マガジンも5つある。
「浩司、今は手ぶらだよね?」
「ああ・・」
私はそういう浩司にPPKを渡す。
「これは・・・」
「私の予備・・・ついでに、少し過去の話をしようか」