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赤い空に終焉を  作者: 朝倉春彦
1.初日0時~3時:赤空の亡霊
1/78

初日00:07:25/勝狩展望台/前田千尋

カクヨムに上げた小説をこちら側にも残しておこう…という趣旨で投稿します。

完結済み小説です。「罪深き町に鉄槌を(https://ncode.syosetu.com/n0552im/)」の続き物となっています。

本当であれば、この作品の次回作もあって三部作!だったのですが、腕が足りずここまでに…


「・・・・・」


私は、そっと、相手に向けていたブローニングをおろし、そして同時に視点も下げた。

その先には、頭を撃ち抜かれて、絶命している一人の男。

もっとも、私の前に現れた時には、血だらけで、体の一部も欠損していて、生きているのが不思議なくらいだったのだが・・・


「今度こそ、三途の川をわたってね」


私は、そう呟いて、倒れた男の心臓と、頭に1発ずつ9㎜弾を撃ち込む。

ちょうど、最後の2発だったらしく、スライドオープンとなった。


私はしばらくその男の前に動けなかったが、ようやく展望台の手すりにもたれかかり、ブローニングの弾倉を入れ替えた。

私は、自分でも自覚はあるが、気分の浮き沈みは激しくないほうだ。

だけど、今の、心臓がバクバクなってるこの状況。

私はまちがいなく、生きてて一番取り乱していると自覚できる。

さっき私の目が覚めてから、男を射殺するまで、常識で考えておかしなことだらけだった。


目が覚めて、周りを見回すと、すぐにおかしいことに気づいた。

空は、薄汚れた血みたいな色の赤に染まっていて、津波に飲み込まれた私も此処も無傷で・・

そして、あの男・・私は、殺した人間は、重要なの以外は覚えていないが、おそらく昨日、遂行した作戦の時に殺した人間のうちの一人だったはず・・つまりは、死者がよみがえっていることになる。


・・ダメだ、こんなことになる理由が思いつかない・・


「ああ、最期だなって思ってたんだけど」


そう呟いて、私は、手すりからはなれた。

考えても始まらない、実際に動いてみないと・・

そう思いながら、私は、いつもと同じように展望台を降りていった。


赤い空の下を歩き、私はひとまず自分の家を目指す。

町は、津波の影響を受けているのも関わらず何事もなかったかのように家が建っているが、そのほとんどは長年使われていない廃墟のようになっており異様な光景をみせている。

そして、先ほど始末した男のような異形としかいえない者。

彼らは私を見つけると表情に不気味なほどの笑みを浮かべて襲い掛かってくる。

私は、なるべく無駄弾を撃たないよう隠れながら進んでいった。


そうして、いつもなら5分で着く家に、体感時間で1時間ほどかけて着いた。

家の鍵は基本的にかけない家なので、なんの心配もなく家の扉を開ける。

そして、家の中に誰もいないことを確認して、私の部屋に上がっていった。


なんとか一発も撃たずに家までたどり着いた。

由紀子にもらった腕時計は、午前0時半を指している。

普段は5分の道のりに30分もかかった。


「・・・」


私は家に誰もいないことにかえって安心感を得ていた。

まだ生きた姿でいてくれるかもしれない。

私が銃を向けなくて済む・・・


そこまで考えて、ハッと我に返る。

たった1か月ちょっとの生活でこうも人が変わるとは・・


私は部屋のタンスの上に置かれたアタッシェケースを机の上に置き、ロックは解除して開く。

中に入ったM1カービンとその予備弾倉3個・・・ブローニングの予備弾倉2個と、9mmパラベラム弾の予備弾薬を引っ張り出した。

9mm弾をさっき使い切った空のマガジンに突っ込んでいき、机の上に置く。


それから、タンスの一番上を開けて、中からハーネスのような物を取り出す。

それを両腿と腰に括り付けると、ハーネスに予備弾倉を差し込んでいった。

そして、昨日の作戦時に着た黒いジャケットを羽織り、4つついたポケットに適当に包帯や消毒液などを入れていく。

最後に、胸ポケットに懐中電灯を差し込んで準備万端だ。


そしてM1カービンを肩に担ぐと、ケースを閉じ、ふーっと一息ついた。


私は窓から空を見上げ、そして下を見る。

さきほどまで恐怖を感じたあの異形がこちらに気付かずに家の前を通り過ぎていった。


「最初にやるべきは生存者の確保・・・そして脱出・・・」


私は異形の者が通り過ぎてからボソリと言って、部屋から出る。

ブローニングは腿のホルスターに仕舞って、M1を左手に保持し階段をゆっくり降りていく。

そして、玄関から外に出ると、ひとまず学校に向かって歩き出した。


学校までは長い道のりになりそうだ。


私は息をひそめて、M1を構えながら家と家の間を進んでいく。

表通りには数名の異形がはびこっており、強行突破は賢い判断とはいえなさそうだった。

だから家々の間を縫っていくわけだが、たまに家の中から異形の叫び声やうめき声が聞こえたり、進んでいく都合上、道路を横断しなくてはいけない場面もあるから、一瞬でも気は抜けない。


赤い空の下、気味の悪い霧が徐々に深くなっていく町を歩いていく。

私の頬を1筋の汗が流れ落ちていった。


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