第84話 メカドラゴンとの戦い④
『機竜の魔力枯渇により、魔力結界の消失を確認しました。
管理者権限により全攻撃システムロック。コックピットの開閉装置が動作不能のようです。経年劣化、あるいは物理的に封鎖している可能性があります。
……防御システムへのハッキング開始、これより全装甲を強制パージします。少し離れてください』
メカドラゴンのメカである外見が、まるで作りかけのプラモデルのように外れていく。ズン、ズンと謎の金属の鎧が剥がれ落ちる。
ああ、なるほどな、サイボーグなんだよな。なんかグロい。ドラゴンの肉体にいろんな機械や管が繋がっている。ところどころが壊死しているのか黒ずんでいる部分もある。
いや、今はそれよりも、この元凶であるシルビー2とやらがついにあらわになる。
コクピットだったのだろうか、のどの下、胸のやや上部に人が入れそうなカプセルの様な球体があった。
シルビーの本体と同じような、金属とも粘土ともいえない謎の物質の球体。
『シルビー2、開けますよ? まあ、許可は必要ありません。開けます――』
カプセルが開く。
『オゥ! マスター、グロ耐性は有りますか?』
おう、俺にはないが、ある程度は大丈夫だ。しかし、いきなりお前は何をいってるんだ。
「うっ、すまん、今理解したよ」
コクピットにはミイラがいた。アンデッドで慣れてたはずだけど、朽ち果てた遺体は、歴史の重みというか、リアルというか、アンデッドと違って動かないだけ、より死に対する情景というか、とにかく、リアルだったのだ。
そのミイラはシルビーと同様の巨大な卵のような物体を抱きしめながらこと切れていた。
『シルビー2、この方はどなたでしょうか? 勇者ではないようです。勇者ならば機竜は動いたはずですし……。
ふむ、なるほど……おっと、マスター、シルビー2の音声を再生しても良いでしょうか?』
「ああ、たのむ、でないと寝れそうにない」
…………。
……。
分かったよ。シルビー2、お前はそう考えたんだな。
「ロボさんや、いや、デュラハンにシルビーも聞いてくれ。お前たちの意見を聞きたい」
俺は結論を逃げた。なぜなら、シルビー2に感情移入してしまった。これなら人類を滅ぼす動機として全うだ。
いや、それでも無関係の現在の人類を滅ぼしていい訳はない、ないのだが……。
(はい、これは壊れています。許されません)
「ぶーぶーですー。これはだめですー」
『はい、勇者様に対する背信行為です』
俺もそう思う、けどな、けど……。俺は甘いんだろう……。でも。
「ミイラはさすがに可哀そうだ。事情は知らないが、死者への冒とくは許されない。できれば土に埋葬したいが、いや、このままカプセルのままで埋葬しようか」
リッチ君、お前はアンデッドでも人権派だったな。
『なぜだ! 私はお前が竜王との戦いで相打ちになったから生まれたのに。お前が死ななければバックアップなど存在しなかった。
私はなんだったのか! 私は勇者様の為に作られたというのに! 私はずっと待ってた! 勇者様を。あの子が望んでも来なかった勇者が!
……勇者? なぜ! 勇者が敵に? 違う、お前は勇者じゃない! ああ、勇者はいたのだ、ずっと側に。私は、私は、私は人類に復讐を――』
俺はシルビー2に手を添える。ミイラが抱きしめていた球体がシルビー2の本体だろう。
「さようなら、最後に言い残すことはあるか?」
『……ない、が、私の思い出は残してほしい。彼女の為に……』
シルビー2の記憶を読む。そうしないといけない気がした。
バックアップとはいえ独立したAIで感情があるだろう、せめて最後の言葉はきかなければと思った。




