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第56話 盗賊団との戦闘

 交渉は決裂した。


 盗賊団のリーダーが元の位置に戻り、幹部たちに何やら一言二言話すと、彼らはこちらを見て値踏みするように、ニヤニヤしながら、コインを投げて表裏を確認しているのが分かる。


 おそらくは戦闘後のお楽しみの順番でも決めているのだろう。そういう分かりやすい人間もいるのだ。


 話せばわかる人間もいれば、そうでもない人間もいる。現実とはそういうものだ。



 ローゼは自分に向けられている嫌らしい目線に嫌悪感を覚える。彼女にとっては初めての戦いだ。しかも人間を相手にした。


 一人だったら取り乱してしまっただろうが。今は仲間がいる。冷静にならないと、そして学んだことを思い出すのだ。ローゼは魔法使いとして学んだことを思い出す。 



 ――かつてローゼはバンデル先生に魔法を教わっていた。


「あの、先生は私がネクロマンサーの家系だって知ってたんですか?」


「ああ、そうだな、最初は知らなかったが、君の魔法を見ていたら、どうやら才能があると思い失礼ながら調べさせてもらった。

 ヨハンソン家は、遥か昔には僕の先祖と同じ派閥のネクロマンサーであったとわかったんだ。

 ……まあ、その歴史を知ってれば他言できないのはよく理解しているよ」


「私は、ネクロマンサーは嫌です。できれば隠していたいです」


「まあ、それはこの先、君自身で選択することだ。だが知ることは間違いではない、それに才能はあるのだ、出来ることは増やした方が将来のためだと思わないか?」


「それは、……そうだと思いますけど……」


「まあ、僕に役に立てるのは実際これくらいだろう、まずは君は下位のアンデッドであるスケルトンを召喚することから始めるといい」


 ローゼは最初の個人授業で数体のスケルトンを召喚した。鎧を着て、剣と盾に槍や弓などを武装したスケルトンだった。


「これは! スケルトンリーダーにスケルトンナイト! 馬鹿な、今何をやった?」


「え? は、はい、この本に書いてある通り、ボーンレギオンという魔法を試してみました」


「そんな……、それは中位魔法、それを初見で? まさか、君は血の継承者……」


 …………。


 今に思えば、恐らく先生はその時に決心したんだろう。とローゼは思ったが。


 それは過去の話。いつまでもくよくよしていてもしょうがない。前を向いて生きていきたい。



「ふむふむ、僕にはタコの親分さんと、幹部Aさんに、ふーむ、結構ファンがいるね、僕を指さして順番を決めてるのが何人もいるよ。でもローゼちゃんには負けるなぁ。

 あのキモイ系のグヘヘ野郎たちは気弱そうなローゼちゃんを指さして、うわぁ、涎まで垂らしてる。なんかそういうフェチを持った男に人気なんだねぇ。カール君もそうだし」


「おい、俺をあいつ等と一緒にするな。それにローゼは俺が守る!」


「お、御曹司君はセリフはかっこいいけど、君、前に立つと真っ先に殺されるよ? 男子諸君もここは僕たちに任せておくれよ。少なくとも女子は殺さないだろうからね」


 ユーギのセリフに、ドルフは反論する。


「だが、殺されるよりも酷いことをされるのは明白だ、だが俺は……すまないが、万が一の時はアンネを第一に考えて行動する」


「ドルフに同感だ、僕も自分の出来ることをする、ユーギさんに恨みをもっている奴が多そうだし、あの時止められなかった僕にも責任がある。僕はユーギさんを守る」


 ハンスも前に出る。 



 その時、ローゼは言った。今までで一番はっきりとした大きな声で。



「今回は私がやります! 私に考えがあります、もちろんサポートをお願いしますが、やらせてください!」


 ローゼは一人で前に出る。100メートル以上は距離があるだろう盗賊団たちは、歓声の声を上げる、特にグヘヘ野郎たちはピューと指笛を吹いた。


 だがそれには目もくれず、短剣を取り出し、自身の手首を切る。


「ローゼ! 何を! アンネさん治療を!」


 カールが叫ぶが、ローゼは続ける。


「カール! 黙ってて、私は皆に迷惑をかけた、それにアールさんから聞いたのよ、一族のことを。でも私は前を向いて歩くの!」



 手首から流れた血は、地面に落ちると、赤い魔法陣を展開させる。


「中位アンデッド召喚! ボーンレギオン!」



 剣と盾に騎士甲冑で武装したスケルトンリーダー5体に、同じく剣と盾や槍を持った500体のスケルトンナイトが召喚される。


 スケルトンリーダー達は、盗賊団とは反対側に向きを変え、ローゼに対して剣を捧げ膝まづく。


「敵は我らの倍、だが、むやみな殺生は望まない! あくまで無力化にとどめよ、行け! 制圧せよ!」


 5体のスケルトンリーダーは統制のとれた動きで、同時に立ち上がり、剣を顔の前に構え剣礼を返すと、それぞれ100体のスケルトンを指揮する形で、盾を正面に構え密集陣形を組みながらじりじりと盗賊団に近づく。



 アンネは回復魔法をローゼに施す。ローゼ自身の仕事はこれで終わりだ。それに結構な血を流している。


 無茶をするものだと思ったが。彼女は魔法使いとして成長しているのである。それは喜ばしいことだ。


「相手は約1000人の盗賊団、数の上では不利だ。が、あれ? 盗賊団逃げてないか?」



 アールは思った。先ほどのローゼ押しのグヘヘ系の人たちは例外なく逃げてるじゃないか。


 まともに戦ってるのはさっきのスキンヘッドのタコ親分を含めた強面の集団くらいで半数もいないんじゃないかな、なんだかなぁといった感じだ。



 こうなると、他の皆は逃げ出した盗賊の討伐をするだけだった。


 アールとシルビアは拳銃を構え麻酔弾で一体ずつ減らす。背中を撃つのはなんか嫌な感じがしたが、もはや消化試合である。


「おー、ローゼちゃんはかっこかわいいね。僕はもっと好きになりそうだよ」


「おい、ユーギ! 今回は大体お前が悪いんだぞ、少しは手伝えよ」


「えー、僕達いらないんじゃない? って感じなんだけど、ま、そうだね。では皆様に僕の力をお見せしよう」


 ユーギは指をぱちんと鳴らすと、逃げ出した盗賊の足元からツタのような植物が生えて、盗賊の足に絡みつき転倒させていく。


「ユーギさん、それってまさか無詠唱魔法?」


「うーん、そうともいうね。まあ今回は僕の責任だし、あとは任せておくれよ、あのタコ頭の団長さん、ゆでダコみたいに真っ赤だったけど今ではすっかり青くなってるね。

 生意気な美少女をわからせようとしたら逆にわからせられたんだが! って感じかな、あはは」


 戦闘は一瞬で終わった。無力化した盗賊団に死者は一人もいない。これは実にすばらしいのでは?


 甘いかもしれないが、実際、彼らの罪は知らないのだ。それに彼らは街の人を殺したことがない。まあスポンサーの機嫌を損ねることはないのだろう。


 ならば、彼らとこの街はこれからもウィンウィンの関係でいられるはずだ。


 そんなことをアールは考えていた。ローゼが盗賊団の団長に近づいていく。


 スケルトンリーダー達はまるで親衛隊のような感じで彼女の四方を囲んでいる。


「今回のことは、こちらにも無礼があったと伺っていますが、先ほどの言動と行動は許されません。しかし罰は与えました。

 このまま改心するなら、領主様にも取次ぎをして差し上げます。良いご返事を期待します!」


 盗賊団の団長はスケルトンの主であるローゼの言われるがままだった。


 それもそうだろう、周りにいるスケルトンリーダーの一人と戦った団長は、一瞬で剣をはじかれて敗北したのだ。


「ローゼさんカッコいいな、これじゃカール氏じゃなくても好きになってしまうかもだ」


「ローゼちゃんかっこいいね、カール君なんか、今晩のおかずにしちゃうんだろうね」


 最低だな、お前は……しかしその言い方は誰にも理解できないので黙っておこう。皆さんはその言葉で今晩の食事の話題になっていたのだから。


「よし、みんな、今日は豪華に外食しようじゃないか。せっかく観光地なんだし」


 盗賊団を拘束し、領主に引き渡すと、いったん宿に戻りデュラハンを回収し、レストランに向かったのだった。


 デュラハンは宿にいたが、ミニガンの準備をしていた。最悪の事態を想定して、盗賊団を殲滅させるためだが、そうならなくてよかったと思った。


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