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第54話 ドラゴンの聖地

 三日かけて俺たちは目的地についた。


 途中、乗馬したいと言う人が増えたので馬の調達や乗馬の練習もかねて一日無駄にしたが……いや、無駄ではないだろう。


 馬に乗れるということは、ちゃんと移動手段として乗れるということで、貴族が娯楽の為に乗るのとはレベルが違う。


 ユーギも馬に関しては真剣だ。見違えるように上達したハンス君と共に気性の荒い馬をならすために、二人で遠出したこともあった。


 これはまさしく有意義なキャンプだといえる。俺も少しだけなら馬に乗れるようになった。


 ちなみにシルビアの兄さんは決闘の後、お昼過ぎに目覚めて慌てて次の班を目指して慌てて駆けて行った。後で謝っておこう。



 目的地はドラゴン伝説がある山である。まあ、実態は地方都市でよくある地域振興策の一環である。


 ようは観光客狙いのただの観光地で、似たような場所はいくらでもある。しかし、この場所は他と違う、なぜか。


 それはユーギが言った一言だ。旅の目的地を決めるため図書館で会議をしていた時にやつはドラゴンの伝説の本を読みながら。


「あ、ドラゴンはいるよ。数万年前にはそこらへんにいたけど滅ぼしちゃったからね、今は分かんないや、てへっ」


 てへっ。じゃない、それは俺が聞いた中で最悪のやらかしだ。しかしこいつは神だったな。


 なるほど火の無いところに煙はたたぬか、ドラゴンはこの世界には実在したのだな。



 そんなことがあり。俺たちは無事、目的地である。ドラゴンの街に着いた。

 もちろんドラゴンが住んでるわけではない。普通に人間の街だ、しかし入り口に書いてあるのだ。


【ようこそ、ドラゴンの街、タートルロックへ】


 しかもでかい看板に。門にはドラゴンの装飾なんかあって、まるでアミューズメントパークである。 


 これは正直言ってドラゴンなんてどうでもいい気分になる。しかしユーギには神としての思い出もあるはずだ。あの頃はあいつは幼稚なやつだったが今は成長しているし。


「いやーここまでアレンジされるとは、僕もこれにはビックリでたのしーね」


 まあ、こういうやつなのは知ってたけど。まあいいや、俺も楽しい。ここは観光地として隙がないのだ。


 ついたのが昼前だったので、軽く食事を済ませたが。屋台がたくさんあってはっきり言ってここだけでも満足できる。日本の縁日を思い出すのだ。


 さすがに焼きそばやたこ焼きは無いが。肉の串焼きはあった。ここではドルフ君が活躍した。彼は高身長で、人ごみでも目立つ。


 人ごみをかき分け、屋台にならんで大量の串焼きを持ってきたのはグッジョブだった。



 午後になると、ドラゴンツアーというのに参加してみた。時間は一時間くらいで遺跡をガイドさん付で回るそうだ。お値段も観光地価格で強気の設定だ。


 さすがにユーギにガイドは無理だろうし、貧乏旅行をしているわけでもない。このくらいは余裕はあるし。魔法学院の生徒がケチケチしていたら後輩に迷惑だろう。



 案内されたのはドラゴンの遺跡だ、遺跡と言ってもせいぜい数千年と言った感じか。充分に歴史的価値があるのに、これはドラゴンをトッピングしたために台無しだとおもう。


 そもそもドラゴンが人間サイズの建物に住むわけないじゃん。いや子育ての巣にしたのか、あれ、ドラゴンの生態系ってなんだろう。だが、俺は断言できるこれは嘘だ。


「おい、ユーギ、ドラゴンって家に住んでるのか?」


「うん? そんなわけないじゃん。僕も初めて知ったよ。勉強になるね、こうして歴史は作られるのだ」


 ですよねー。


 建物の外観はギリシャ神殿に別のファンタジー要素を追加した感じだろうか。正直、ドラゴン要素なしで世界遺産になるレベルだと思うんだけど、そうだな、人気がなかったんだろう。


 観光客を呼ばないとこんな辺境の街はつらいのだ。理解してあげることにした。


 ユーギの一言で、俺はガイドさんの説明が頭に入らなくなってしまった。他のみんなに聞かれたら台無しだっただろう。皆さん楽しそうなのだ。こっそり聞いてよかった。



 ドラゴンツアーが終わると、次の観光スポットは……。


「あれ、温泉じゃない? ドラゴン温泉って書いてあるわ、私も行ってみたい。夏休みは私たちだけ行けなかったから、ドルフもそうよね?」


「ああ、そうだな、温泉か、久しぶりだな、俺もアンネの意見に賛成だよ。皆はどうだい?」


 アンネさんとドルフ君は夏休みはご実家に帰っていろいろと大変だったようだ。貴族とは親戚付き合いがとても大事なのだな。さぞお疲れなのだろう。



 しかし、俺としてもドラゴン温泉は魅力的だ。儲かってるのだろう。ドラゴンの口からお湯がでる仕組みとかすごい。


 カール氏はまじめに温泉の仕掛けを見ている。さすが実業家の息子だ。


 それにここは宿にもなっているようだ。俺たちはさっそくチェックインした。



 キャンプとはいえ基本すべてが野宿をする必要はない。行程の半分以上を外泊はさすがにダメだが一泊や二泊は問題ないのだ。


 それにお風呂に入れないと学生側からのクレームもあり学院側としてはそれも経験だと了承したという経緯がある。


 宿が決まったので後は街を適当に散策するだけである。

 

 しかし、ここはいい観光地だ、いたるところにお土産屋がある。


 ラインナップはどれもオリジナリティがあって飽きない。それに冒険者用の装備もある。


 ドラゴンソード、ドラゴンアーマー、ドラゴンシールド、もちろんただのドラゴンの装飾やプリントがついた平凡な鉄製の装備だ。


 まあ、見た目は正直言ってカッコいい。この武器屋さんは一日居ても飽きないだろう。


「あはは、僕これがいいな、ドラゴンローブ、この背中にでかでかとドラゴンの刺繍がはいってるのが気合が入ってると思わないかい? 僕はぶっこみ隊長になれそうだよ」


 そうだな、それは特攻服に見える。俺もほしいが、ユーギと被るのは嫌だし。


「アール、私たちも買いましょうよ、これとても素敵よあなたに似合うんじゃないかしら」


 お、おう、シルビアさんがそういうなら喜んで。だが特攻服が似合うと言われると複雑な気分だ。

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