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第51話 三国志オタクの会話


「ふぅん、あまいぞユーギ! 俺の呂布を止められるものか!」


 俺たちはシャワーを済ませると。中央のテーブルに集まり。ユーギが開発したというボードゲームをやっている。


 三国志をベースにした戦略ボードゲームだが、なんかトレーディングカードゲームの要素もありごちゃごちゃしている。


 次から次へと知らないルールが出てくる。後付けじゃないかと思う、謎のトラップカードがありとても胡散臭いゲームだが、ユーギがさも得意げに解説しているから。設定自体は随分と練り込まれている。


 まあ、作者が強いのは当たり前か。しかもユーギの解説に熱が入り、結構なボリュームの背景エピソードを語るのだから面白い。


 そばで見ている皆さんも退屈しない。所々で、おおーっと声が上がるほどだ。


 今は、ルールを覚えるために俺とユーギの一対一で対戦しているが、だんだん俺も夢中になってきた。 懐かしいのだ、まるで地球のゲームをやっているみたいで時間を忘れる。


「呂布か、確かにすべてのユニットの中で最強の武力を誇る、だが、トラップカード発動! 【貂蝉】 このカードが発動すると場にいる呂布、あるいは董卓は自軍のユニットになる!」


「なんだと、そんなルール聞いてないぞ、それにトラップカード発動とか、パクリだ!」


 ユーギは、貂蝉のカードを持ちながら謎のポーズを取り、あおり口調で返す。


「あははは、なんとでも言うといい開発者は僕だし、文句を言うやつはこの世界にはいないだろ?

 大体、君を含めて日本人は呂布みたいな弱点だらけのユニットが好きすぎる」


「なんだと呂布は最強じゃないか!」


 当たり前だ! 三兄弟相手に互角に戦った呂布が嫌いなわけないだろう。でも、意外なことに本家の中国では呂布は人気がないらしい。


「そうなんだけどね、まあ僕も嫌いじゃないよ、さてと、ゲームの決着がついてしまったので、ここで問答をはじめよう。テムジン君とも夜通し話した僕の巫女時代の楽しみのひとつだ。


 さて、真面目な話。人間模様で考察してみると三国志は演戯とは馬鹿にできない奥深さがあるね。乱世を通して人間学習をするのが僕は好きなんだ。


 それで勇者君に質問だが呂布はどうすべきだった? 君の意見を聞きたいね」 


 むう、そういう話か、ゲームをしながら原作について語るのか。なかなかオタクな趣味で俺もこういうのは好きだ。それに呂布が寝返ったら俺の陣営は詰みだ。つまり負けだな。ユーギの問答に乗ってやろう。


「そうだな、まず、呂布は劉備を裏切るべきではなかった。彼は一時的とはいえ劉備とうまくやってたじゃないか」


 ユーギは謎のポーズを解くと椅子に座った。ボードゲームでいちいちオーバーアクションを取ってるこいつが滑稽だったから、俺は少し安心した。


「そうだね、物語の主人公だから劉備陣営が正義なんだろうけどね、でも僕は思うんだ。

 呂布は劉備の危うさと、うさん臭さを直感的に気付いてたんじゃないかな?

 そこで僕は思う、結局は彼は曹操につくべきだった。

 陳宮が曹操を嫌ってたからそうはならなかったけど……

 呂布は二度の親殺しをとがめられてたけど、僕に言わせれば曹操だって似たようなものだ。

 なら二人は利害関係でうまくいくはずだったんだ、つまり陳宮が悪い。頭がいい人って馬鹿が多いじゃない?

 ちなみに、頭がいい馬鹿といえば孔明だね、僕は孔明も嫌いだな。彼の晩年は君もよく知ってるだろう? 僕はただの老害官僚の暴走だと思うのだよ。


 なんだっけ、やるしかないのですっていって昔の主君への執着で長文の感想文をだらだら述べて全面戦争したよね、

 これでは戦争に賛成せざるを得ない状況だ、開戦止む無しだっけ、日本人ならわかるよね?

 蜀が日本なら魏はアメリカくらいの国力差があったというのに。なんでやったんだろね、馬鹿だよね」


 ユーギ、いろいろと言ってはいけないことを言いやがって、それにどさくさに紛れて日本をディスるな! 俺の母国だぞ。


「おい! 言い過ぎだ! 俺は蜀が好きだし、孔明の出師の表を馬鹿にするな! 我慢できんぞ!」


 俺は王道の蜀ファンである。ちなみに一番好きなのは趙雲だ。【長坂の戦い】なんか最高のエピソードじゃないか。それをこいつは馬鹿にするというのか。って、あれ、ただのマニア同士の会話になってないか? 周りの人間はさぞ退屈、というかドン引きじゃないだろうか。

 いや、そうでもないみたいだ。そうだなこの世界は戦争は結構身近な出来事なのだろう。結構真面目に聞いている。


 シルビアさんも真剣だった。確かに公爵家の人間としてこうした話題は、結構リアリティがあるのだろうか。ふむ、ならこのままユーギの話に付き合ってもそれは勉強になるのだろう。 


「お、勇者君、じゃあ蜀が勝つためには、どうすべきだったか教えておくれよ。

 議論はここからだよ、朝までやろうじゃないか」


 望むところだ。議論っていっても歴史の結末を知ってる人が、後からああだこうだ言ってもしょうがないんだけど。でも、それは今後の為の歴史の教訓なのだ、真剣に考えるべきだろう。


「……まずそうだな、劉禅は廃嫡して孔明が皇帝になるべきだ」


「うむ、それは一般的によく言われてるよね。でもね、これも僕の考えだけど劉禅は無能ではない、普通に頭がいいと思うし何より優しい男だとおもうね。

 実際、君がいた時代の価値観で総理大臣にするならだれがいい?」


「う、そういわれると劉禅がいいんじゃないかと思えてくる」



「劉禅は平和に過ごせばいいじゃないかと言ってたけど孔明は反対したね、私が死ねばこの国はどうなりますか? とね。

 これも僕の考えだけど、だから言わざるを得ない、お前がいてもいなくても関係ない、とね、むしろ国の寿命を縮めたんじゃないかな。


 時間を稼げば、司馬懿も死んで、ワンチャンあったかもだしね。人材不足はどの国でも起こるものだ。

 得に英雄の子は皆ぼんくらで、やらかすのさ、それに人材不足は蜀だけでなく魏でも呉でもそうだったよ。


 曹操がすごかったのは、その時流を読むという戦略眼が傑出してたところにあったんじゃないかな? 


 そういえば君の国の、徳川君なんかはまさにそれで天下取ったじゃん? あ、ちなみに徳川君とは僕も

いろんなお話したからね。


 ――さてと、まあ、これは神目線だから言える話で、気を悪くしないでおくれよ、僕だって三国志は大好きだよ。僕が好きなのは曹操君と司馬懿君かな。いやぁ実際、面白いよ、トークスキルってのが彼らにはあった。僕も今みたいに夜通し会話をしたものさ。

 彼らは狡猾さと自己保身のバランスが最高だ、死なないを前提に旨く立ち回っていたね、結果、天下統一にまでいったからね」


 ボードゲームの途中から急に謎の国の戦国時代の議論に突入してカオスな状況になった。

 大半の人は途中で離脱してベッドに入ったが、朝まで生討論とはこんなテンションだったっけ。

 あれの後半のグダグダ感は酷かったが、それでも俺とユーギは夜通しこんな不毛な議論に熱中したのだった。

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