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第41話 決戦(後)~第一章完


「さあ、バンデル先生、かかってこい!」


 バンデルは思った。目の前にはかつての教え子である少女が勇者と名乗って対峙している。


 馬鹿げていると思ったが。先ほどユニソルを三体同時に始末してしまった現実を受け入れるしかない。


 彼女は強い。が、同時に安堵した。このまま一族の悲願という名の馬鹿げた行動を起こす前でよかったと心底思った。



 ――光栄だ、子供の頃に父上から聞いたドラゴンをこの目でみれた。そして父上もドラゴンに憧れを抱いていた節がある。負けはしたが光栄に思っただろう。


 僕もそうだ。ならば、もはや勝敗に意味などない。……いや、むしろ逆だろう、勝利を掴むために全力で努力すべきだとバンデルは思った。


「特位アンデッド召喚、レプリカント!」



 展開された魔法陣からもう一人バンデルが出現した。アールのかつていた世界ではそれをクローン人間という。


「これは、ツインズを倒す為だけに我が一族が犯した罪、魂の秘術……」


 魂の融合を果たした人間は一つ上の生命体に昇華する。神には程遠いが人間よりは格上の生命体。


 例えば、魔王や勇者がその代表だろう。その領域に今バンデルは足を踏み入れているのである。



 新たな生命を創造することは不可能でも自身の分身を作ることはできる程度の能力。


 これの為に彼の一族はひたすら血縁同士で人体実験を繰り返した。


 ではなぜそれをしたか、二重魔法を使うツインズへの妄執である。



 二重魔法とは、二つの魔法を完全に同期させることで本来の威力とは桁違いに威力を引き上げることができる。


 しかしそれには魂のレベルでの同調が必要なため、使用できた物は歴史上ツインズ以外に存在しないのである。



 ゆえに、レプリカント、全く同じ人間を生み出しそれを可能とさせるのだ。


「行くぞ、勇者! 二重魔法、ソニックブーム・ダブルインパクト!」


 放たれた魔法はアールに着弾する。


 空気の塊は明確に視認できた。見えないはずの空気が、まるで岩の塊のように重くアールにのしかかる。


 瞬間、不自然なまでに圧縮された空気の塊は着弾と同時にあるべき状態へ戻る。



 落雷を何本も束ねたような爆音が周囲に響き渡る。それにより発生した爆風は周囲の木々は着弾点を中心に放射状になぎ倒した。



 爆音は周囲の森や山に反響し。おぞましい化け物の咆哮のように周辺の集落にまで届いた。


 

 …………。

 ……。 



「ふ、無傷か……さすがは勇者ということか」



「あぶないな、今のはちょっとヤバかったんじゃないか?」


(はい、破壊強度の80%ほどの威力はあったかと思われます、連続でくらうのはお勧めしません)


「安心しろ。あれ以上に強力な魔法は無いからな。それに僕自身、もう魔力切れだ」


 バンデルが言い終わるとレプリカントは消失した。



 冷静な態度にやや違和感を憶えるも、バンデル先生は嘘をつかない、なら本当のことだろうとアールは思った。


「でも接近戦なら自信があるとでも言いたげだ。いくぞ!」



 格闘戦が始まる。


 はっきり言って格闘技ではアールは相手にならない。


 アールの攻撃は一発も当たらない。全てそらされている。


 逆にバンデルの打撃はアールを容赦なくたたきつける。



 拳はみぞおちに入る。


 蹴りは後頭部に当たる。


 反撃をしようと腕を伸ばすも、逆に腕をとられて背負い投げをくらう。



 地面に叩きつけられたアールは起き上がり泥を払いながら言った。


「やれやれ、一発も当たらなかった。試合だったら全敗だよ。やはり俺は接近戦は苦手だな」



「皮肉を言うな。僕はもう負けを確信しているというのに」


 バンデルの拳は血が滲み、骨折しているのか大きくはれ上がっていた。



「一発くらい当てたかったけど、それはそれだ。やるべきことを優先する」


 アールはゆっくりと近づきバンデルに抱き着く。

 

「ロボさん、魂を吸収する。解析と分離をよろしく」


(了解しました。解析は先ほど終了しましたのでローゼはすぐに息を吹き返すでしょう)



「そうか、なら、さようならだ。バンデル先生」


 バンデルは意識を失い、アールに抱きかかえられながらその場に崩れ落ちた。


 

 魂の分離、一度結合した魂を再び分離する場合、結合時に欠損した部分を補完する必要がある。


 つまりローゼを完全に復活させるにはバンデルの魂の一部を使う必要がある。


 片方が完全な魂として元に戻る代わりに。もう一つは不完全な魂となる。


 不完全な魂は生命に宿らず消失するのみである。魂の消失、それは死を意味する。




 エピローグ



「ローゼ、よかった目を覚ましたみたいだ」


「あの、ここは? 私はいったい何を……」


 ローゼは実家の自分の部屋で目を覚ました。


 バンデルの死によって両親の洗脳は解けたが記憶には若干の齟齬がある。


 当然、結婚云々の話は二人とも覚えていないそうだ。説明すべきか迷ったが、そうはしなかった。


 それを知っても罪悪感だけが残り、何もならないと当事者たちは思ったからだ。


 それに娘が意識不明だと知った瞬間にこの世の終わりのような顔をしたのでなおさらである。



 二人には旅行先で自身の魔力の暴走で気を失ったと言っている。両親は思い当たる節があるようでどこか納得したような表情をした。


 ローゼはネクロマンサーとしての資質がとびぬけていると父親は明かした。 



「ローゼさん、よかった、突然倒れるから皆びっくりしちゃったわよ。カールなんかそれはもう大慌てで」


「シルビア……さん。それは言わないでくれよ」


 カールは照れながら言った。


「そう、カールが……。そういえば他のみんなは?」


「アンネさん達は実家に帰ってるわ。皆さん交代で看病してたから後でお礼しとくのよ?」 


 ローゼの母はそう言うと、娘が目を覚ましたことを父親に報告すべく部屋を出ていった。




「そういえばカールったらローゼに告白したんでしょ?」


「え? そんなことあったかしら? あ、そうだった、5歳の時と同じセリフを言ったときはさすがに引いてしまったわ」



「ちょ! いや、ごめん。何も言えない、その……ドレスを引っ張ってしまって悪かった」



「引っ張ったって? 破ったでしょ! ……そういえば強姦魔だったわね! よくもまあシルビアさんと面と向かって会話ができるわね!」


「だから、ごめんよ~」




 魔王城の一室



「マスター、身体に異常は有りません。しかし今回は無茶しましたね。魔法を使えばよかったのでは?」


「デュラハンよ、物事はそんなに簡単ではないのだよ。それに勇者の魔法は消費が激しいから補給手段が確立していない今は使うべきではないのだよ」



 デュラハン、試作二号機、アールの姉にあたる存在は、首だけで話しかけてきた。首から下はケーブルで魔王城と接続している。


 ローゼさんを実家に送った後、俺は魔王城にメンテナンス目的で帰還したあと、魔王城のコアと魔力的に接続できるように改造した。



 もちろん少年には許可は貰ってある。アールも魔王城に接続できるようにすればいいのではと考えたが魔力量が足りない。



 今の魔王が成長すればマシにはなるだろうが、何千、何万年も待てない。それまで頭だけで暮らすというのか。



 思ったよりもこの身体は燃費が悪い。飯を食ってもその日の消費魔力に追いついていない。


 では食いまくればいいのではと思ったが。計算上この国を餓死させてしまうので却下だ。




 それに、なぜ転生してしまったのかの根本原因も調べないといけない。神がいないこの世界でそれが起こるということは、当然だが別の神の存在を疑うべきだろう。



「ところでマスター、魔力補給が必要なら、その魂を活用すべきだったのでは?」


 デュラハンは俺が持っている赤い短剣を見ていった。バンデル先生が儀式魔法に使った【血の短剣】である。



「まあ、そう思わなくもない。おおよそ100年分くらいの魔力補給はできるだろうが、人の魂を吸って生きる化け物になりたくないよ、怖いじゃん」


「今でも充分、化け物だと思いますけどね。見た目は美少女、頭脳はオタク……」



「おい! 酷い言いようだ。首だけの君に言われたくないぞ」


(まあ、補足しますとマスターはバンデル先生をどうにかして助けようとした結果ですので、その辺で納得しましょう)



「うむ、本人はこんな道具に閉じ込められて、さぞ迷惑だろうと思うよ。でも罪には罰だ。それくらいは我慢してもらおうじゃないか」



 これは帰ったらローゼさんに渡しておこう。



 何があったのか説明する必要もあるし。彼女には一族のことを知って受け止めてほしい、でないと彼らがあまりにも哀れだからだ。


 これは俺のエゴなんだろうが、魂から読み取った彼らの記憶を知ってしまったからにはそうすべきだと思ったのだ。


「おやおや、首だけの私よりもよっぽどひどい仕打ちで先生かわいそう。

 ところでマスター、約束の件ですが。制服はカスタムしてもよろしいでしょうか? スカート丈の校則ギリギリに挑戦してみたいのですが」



第一章 完

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次章は現在執筆中ですが、ある程度プロットが出来次第投降していきますので。

よろしければブクマと評価いただけると、大変うれしく思います。

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