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第34話 黒い影


「大変だ! ローゼが行方不明になった」


 いきなりカール氏出現。



 女子寮の入り口に大慌てでやってくるカール。


 おいおい、少しはましになったとはいえ君は強姦未遂犯だぞ。


 君が入り口とはいえ女子寮に来ていい理由はない、うん? なんだか様子がおかしい。



 必死なのである。俺もシルビアさんもあまりの慌てように、話は聞いてみようということになった。



 カール氏は泣きつく。本当にお前は男らしさというか。いや、やめておこうジェンダー的な価値観は時代遅れというものだ。


 しかし、本当に初対面の頃に比べて別人だな。


「ローゼの後をつけてたんだ。ずっと見てた。……ローゼはバンデル先生の物になってしまったんだ」



 はあ? おまえ、ずっとつけてたのか? 前言撤回だ。というかストーカーだぞ、それは……。


 一発殴ってやろうか……いや最後まで聞いておこう。彼はいつになくマジなのだ。



 カール氏が言うには、ローゼさんは正気じゃないそうだ。




 最初は、カール氏の嫉妬だろうと思っていた。幼馴染がいつまでも自分を好きだというのは勘違いもはなはだしいし。


 バンデル先生に言い寄られたら正気でなくなるだろう。彼は素敵なのだ。カール氏と比べてしまうと、それはもう可哀そうなくらいに……。



 だがカール氏の発現もすこし真実味を帯びてきた。


 ローゼさんのご両親がバンデル先生とのいきなりの結婚を許可して。ローゼさんを何の儀式もなく送り出してしまったのだ。


 貴族でそんなことは有り得ない。平民でもさすがに急過ぎである。


 学院もローゼさんが退学という話は聞いていないそうだ。それよりも初耳といった感じであった。


 そしてバンデル先生とローゼさんが結婚することを誰も聞いていないというのは有り得ない。


 長い事、同僚だったというのに先生たちはバンデル先生の何も知らないのだと呆れたものだ。まあバンデル先生自身が距離をとっていた節があるのでそう納得することもできるが。



 これにはハンス君も同意した。カール氏が慌てて走ってきたので後ろから追ってきたハンス君だが。

 ハンス君はさすがに女子寮の入り口にいるのは気まずい様子だ。


 場所を移そう。ここではこれ以上話すのはまずい。とりあえず図書館に移動しよう。あそこはもはや俺の私有地である。


 中に入ると。アンネさんとドルフ君がいた。二人とも背筋を伸ばして本を読んでいた。


 俺は二人の態度に違和感を覚えたというか、さすがにそれは無いでしょ。かまをかける。



「図書館ではほどほどにね、お二人ともタイが曲がっていてよ?」


 二人は慌てて、胸元を確認する。そして制服の乱れをやたら気にしている様子だった。



 うーむ、冗談のつもりだったが……俺は二人の邪魔をしてしまったかもと若干気まずさを持ちつつ、結局いつものメンバーがそろったことに安堵した。


 ローゼさんを除いて……。



 大きなテーブルで俺たちは改めてカール氏の話を聞いた。ローゼさんの突然の嫁入り話は皆、初耳だった。  


 当然カール氏一人の話では誰も信じなかったがハンス君が同行しており話に真実味が生まれたのだ。


 ハンス君が言うならそうなのだろうと、カール氏よ……頑張んなさいね。



 カール氏はローゼさんの家に真相を確かめるために一緒に行ってほしいとハンス君を巻き込んだそうだ。


 なにやってんだよとおもったが、これはグッジョブだった。なぜならハンス君の意見は客観的で信用できるのだ。


 それにカール氏に対しての利害関係もないし、誠実でよくできた人間だとこの一年で皆知っている。



 ハンス君曰く、ローゼさんの父親は娘は嫁いだので君たちに関係ないと突っぱねられたそうだ。


 しかもどこか上の空で。娘が結婚したというのに特に関心のないような態度であったという。



 ローゼさんも俺達には縁談の話などしなかった。


 年末のダンスでいい感じになってはいたけど。でも流石に結婚となったらその話はするだろう。


「いくらなんでもおかしい。私たちの間でローゼが隠し事をするようにも思えないわ」

  

 制服のボタンのかけ間違いを直しながらアンネさんは言った。


 バンデル先生だって。……いや、バンデル先生はつねに自分を隠していた。隙がなかった。いつでも客観的で彼の感情を知ることは出来なかった。



 だが、俺は最後に先生の実家の住所を聞きだせた。これは罠なのか……。でも彼は悪人には思えない。



 俺たちが知らないだけで、家同士では合意の上だ、人さらいではない。しかしローゼさんはもう学院には来ないそうだ。


 やはりおかしすぎる。調べる必要がある。場合によっては……。


 バンデル先生……何をしようとしてるんだよ。



「なら、皆でバンデル先生の実家にいってローゼとお話でもしましょうか」


「そうね、当事者がいないのに結論なんかでないわ。ローゼさんに聞いてみれば解決するわよ。ねえ、カールさん」



 アンネさんとシルビアさんの会話。俺も同意だが。それに皆カール氏の発言をまだ疑っているようだ。たしかにカール氏は大げさなのだ。


 付き合いの長いシルビアさんやアンネさんならなおさらである。


 信じる理由もないしな。……でも、俺も男だ……だったのか。今のカール氏は信じてもいい。……信じてるぞ? お前はローゼさんが好きなんだよな? 


 裏切るなよ? カール氏よ。



 結局は俺達でバンデル先生の邸宅に訪ねてローゼさんに直接聞けばカール氏は納得するだろうという流れで話は進んだ。


 きっと事件性などない。カール氏のただの嫉妬の案件なのだとみんなは思っている、嫌な予感がするな。


(マスター。これは警戒レベルを上げるべきです。マスターの望まない状況になる可能性が高いと思われます)


「そうだな……。その通りだ。もしものことが起きたら。なければいいが……」


「アール大丈夫よ、バンデル先生って怖いけど……悪い人じゃない……でしょ? アール?」


 シルビアさんは俺に問いかけてきたが。正直言えば……分からなかった。



 もし、バンデル先生が敵だったら。


 その可能性に思いたったなら。やるしかない。

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