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第32話 コウノトリと黒い鳥

 年が空ける


 アンネさんとドルフ君はもはやAクラス公認である。俺とシルビアさんの時と同じくひゅうひゅうムードなのだ。


 冷やかす者、嫉妬する者、様々な反応がクラス全体からみられる。



 俺から言えることは。……そうだな頑張るなよ! まだ早い、あと3年は我慢なさいね。といったところだ。



 でも、手遅れだった。アンネさんは俺に聞いてきた。拳銃を私にも作ってほしいと。


 アンネさんも拳銃とは何かを勘違いしているようだが、その意図はよく理解したよ。そうだな。お楽しみなんだろう。



 どうしたものか、俺はドルフ君にアドバイスした。アンネさんのご両親に挨拶に行きなさいと。今すぐに。この週末にでも。



 いきなりすぎるとか、そういう体裁はもしものことがあったときには既に時間切れだ。そうだ早ければ早いほどいいのだ。



 そうだ、すぐに挨拶に行きなさい! ドルフ君の持ってる一番いい服で行くんだ。もちろん清潔感のある感じは重要だ。


 そして誠実さを忘れてはならない。アンネさんのご両親なら何とかなるはずだと。力説した。



 アンネさんはぽかんとしている。いや分かれよ! アンネさんも貴族風のやんわりとしたニュアンスでコウノトリとかいってんじゃないって。


 そのコウノトリが君にバードストライクなんだよ!



(マスター、出産祝いには何を準備しましょうか。魔法都市ミスリルからオムツでも送りましょうか)


 ……そうだな、紡績は我が国の主力産業だったな。ってロボさんも、確定しているようなことを言わない。


 二人はまだ交際を始めたばかりだ。それに来年そうなるとは限らない、あくまで俺の思い過ごしだ。


 …………。


 だが。


「ロボさんや。1年分くらいは頼むよ」


(あと妊娠しても着れる学生服なんかを用意すると喜ばれるのではないでしょうか)


「それだ!」



 そうだな。それを想定しておくべきだろう。友達としては応援するしかないのだ。だってそれは幸せの一つじゃん。なにか問題があるのか。なにもない。



 それにアンネさんとは最低でも卒業するまでは一緒に過ごしたい。それは変わりない。だからサポートしよう。


 もちろんドルフ君には自制しなさいといったが、ドルフ君は俺に言った。アンネさんに言ってよとのことだった。


 やはりご両親によく似て情熱的なのだろう。





 ドルフ君は俺のアドバイス通りに、ご両親に挨拶に行ったらしい。


 アンネさん曰く、素敵でカッコよかったということだ、まあ君の意見はそれで100点満点だ。


 実際、確かにドルフ君はいい男だ。魔法学院のなかでも彼以上の身体能力を持つ生徒はいない。学力はAクラスでは最下位ではあるが……。それでもAクラスである。


 そういえば、最下位の生徒はBクラスに移動という無慈悲なシステムがあったっけ。


 いや、俺は今ドルフ君視点だから無慈悲といっただけで。

 このシステムのおかげでBクラスの生徒もAクラスに行けるのである。


 ちなみに今、この国で流行っている物語では。かつての勇者は学生時代に最下位のクラスから卒業までの間にAクラスまで成りあがり、勇者となったと、とても面白く描いた小説なんかがある。


 俺は一度目の転生では学校に行ったことがない……。勇者が学校に行くわけないだろう。

 だがそれはそれだ、フィクションとしては面白かった。俺は俺の偶像に泣いてしまったくらいには面白かったのだ。


 図書館には、そういった流行小説はたくさんあるので皆さん来ればいいのに。



 おっと、話がずれた。ドルフ君はいい男だという話だったな、それはそうだ、地頭は悪くないのだ。


 ドルフ君のAクラス存続の為に勉強会などと青春の一ページみたいなイベントもあった。



 たしかキャンプが終わってしばらくした後だろうか。図書委員として俺が図書館でさぼっていると、


 アンネさんとローゼさんが図書館に訪ねてきたことがあった。


 図書館を勉強会に使ってもいい? ということだった。彼女たちの後ろには落第宣告を受けたドルフ君がいた。



 俺としては全然問題ない。むしろこの施設は貸し切り状態なのでカラオケやってもクレームなんかこないぞ。


 そうだ、この図書館は本当に誰も人が来ない……。大丈夫かよ。まあこれも時代の流れなのだ。


 

 あ、いけない。管理者のバンデル先生は……? 隣にいた、おや珍しくお客さんの対応をしている。というか俺も珍しくお客さんの対応をしているのだが……。


「図書館では静かに……いや、好きにしたまえ。だが目的をたがえるなよ? 彼がAクラスに存続するための勉強会だというから許可するのだから……」


 バンデル先生の許可を得たので勉強会は始まった。正直言うとアンネさん一人で十分だった。というか付き合わされたローゼさんは……。


 これは親友とはいえ軋轢が生まれるのではと俺は思う。


 ただのデートに友達を連れてくるなよ。アンネさん……。悪気がないのがよけいに質が悪い。


 ローゼさんとしても嫌だけどアンネさんは親友だから付き合ってる印象がある。


 しかしイチャイチャ勉強会にぽつんと隣で座ってるローゼさんの気持ちを考えるといたたまれない。


「ローゼさん、よかったらちょっと手伝ってほしいんだけど、今、時間ある?」


「うん、いいよ、アンネは今夢中になってるから暇だったのよ」


 即答だった。ほっとした表情のローゼさん。


 手伝う仕事などなかったが目的は連れ出すことだ。とりあえず俺はローゼさんを救出することに成功した。


「ローゼ・ヨハンソン、そういえば君は召喚魔法に適性があったな、少し僕と話でもしないか? 今後の君の将来の為になると思うが……」


 バンデル先生いたのか。ローゼさんは「ひっ!」と言ってうつむいていた。ローゼさん……さすがに失礼だ。


「ローゼさん、バンデル先生はローゼさんの進路についての話をしようとしてるんだよ……」


「は、はい、ごめんなさい。でも今はアンネとドルフ君の勉強会の手伝いを……」   


「ローゼさんや……。あそこに戻るのかい?」


 アンネさんとドルフ君。ラブラブ勉強会である。そのラブラブ具合はオーラとなって見えそうになっている。 


 こうしてローゼさんは苦手意識があるバンデル先生と召喚魔法についての特別講義を受けたのだ。俺は羨ましいがローゼさんの顔は暗かった。



 なぜ、バンデル先生は嫌われてるのか。顔か? しかしこれで少しは意識が変わるだろう。男は顔ではない。


 それにバンデル先生は怖い系だが、どちらかといえばイケオジだと思う。


 二人そろってる姿を見るとまるで親子みたいだ。二人とも黒髪だし。

 案外お似合いな気もするんだけど……。


 やっぱ家柄の問題なのか。

 ネクロマンサーがこの世界では嫌われてるのは理解できない。ゲームでは人気ジョブなのに。


 俺は図書委員の仕事に戻った。さぼっているわけではない。こちらとしても情報収集はかかせない。読書は必要なのだ。 



 ローゼさんもバンデル先生と会話できるくらいになっただろうか。



 いや、今はドルフ君の問題だ。いや問題ではないだろうな。もうラブラブオーラが見えてしまっている。


 あれは誰も寄せ付けない絶対防御壁である。


 

 ということがあってドルフ君の学力は上がり無事Aクラスに残ることができたのだった。



 あ、そいうことか、ローゼさんとバンデル先生のダンスフラグはこの時に立ったのか。


 カール氏よ、相手は手ごわいぞ。勝てる部分は家柄しかない。しかも君は廃嫡されてしまった……。頑張んなさいね。



 アンネさんとドルフ君のことを回想しているうちにローゼさんとバンデル先生のことも思い出してしまった……。



 話を戻そう。


 というわけで学力も申し分のないドルフ君はアンネさんのご両親に挨拶に行ったのだった。 

  


 結果は、もちろん大成功だと言わざるを得ない。アンネさんのパパとママもとても乗り気であった。


 アンネママなんかは妊婦用の学生服なんて当時はなかったと愚痴をこぼしていたくらいだというのだ。


 そうだ、アンネさんのご両親は今のアンネさんよりも若いころにこうなったのだ。うーむ、俺からは何も言えない。


 それにアンネさんはこんなに素敵な人に育ったのだ。



 うむ、もう当人どころか家族間もOKだ、そうだな、なら俺達も堂々と応援しようじゃないか。




 あれ? というか、アンネさんは本当に妊娠したのか?


 ……そうなのだ。うわさに尾ひれが付きすぎていつの間にかそういうことになっていたが当人は妊娠などしていない。


 というかドルフ君は自制していたのだ、彼は紳士だということを忘れていた。



 アンネさんが思わせぶりな態度を取るものだから周りが勝手に勘違いしたのだった。



 今時ないぞ? キスしたらコウノトリが来るのかい?


 それになぜ俺に拳銃を作ってくれと言ったのだ? 未だにエッチな道具だと思われているこれを……。 いや、それは俺の勘違いだった。


 彼女は純粋に護身用の道具が欲しいといったのだった。あ、俺もこの騒動の犯人だった。 

   


 ちなみにアンネさんは幼いころから両親にきかされてきたこの手の話は、コウノトリレベルであった。


 ご両親もすねに傷があるのか、子供の作り方はぼかしたまま忙しく過ごし、教育がおろそかになり今に至ったようだ。



 なんだ……。なんだこれは。取り越し苦労ではないか、それに今回はドルフ君が一方的に可哀そうだぞ。


 俺はドルフ君に問い詰める。結局アンネさんとはどこまでいったのか。


 ドルフ君は照れながら、キスまでは……と。うむ誠実な男で安心した。


 それに、実家に挨拶しに行ったときに正式に婚約をしたということだった。



 なるほど、キスしたからなのか。あのアンネさんの思わせぶりな態度は……。



 アンネさんはのほほんとしている。この騒動はなんだったのか。ちょっとイラっとしてしまった俺は二人に言った。


「この場でキスだ! キスです!」



 周りも徒労感も相まりキスコールはクラス全体に広がった。こうしてアンネさんの寿卒業は回避された……。


 が、アンネさんは直に理解するだろう。というかうすうす気づきだしているな……。好奇心旺盛な顔をしている……。


 次の長期休暇は危険だ……。警戒しないと。いや、やめておこう、二人の問題だ。頑張んなさいね。


 オムツはもう発注してしまったのだから……。  

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