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第31話 ローゼ・ヨハンソン

 私の家は貴族の中でも上でもなく、かといって下でもない、子爵家といえばそこそこの身分なのだろうか。


 別に生活も何不自由なく過ごしてきた。だから世間からしたら何が不満なのかと思うかもしれない。


 それでも身分相応に悩みはあるのだ。



 その一つに、我が一族の汚点である。


 私の先祖はかつての邪悪な魔導士であるネクロマンサーの一派であった。この国を内側から支配したとされている歴史上の大罪人である。



 このことは門外不出で、だれにも知られてはいけない。でも私は16才になったころにそれを両親から聞いたのだ。


 私の父方の家系、つまり子爵家はネクロマンサーを祖先に持つと父は私に言ったのだ。


 今さらなんで? と問うたが。お前も大人になったのだからといった軽い調子で話した。



 お父様もおじい様から16才になった頃に同じように聞かされたそうだ。同じようにお父様もびっくりしたと笑いながら話していた。


 その程度の話なら聞き流したが。問題は先祖はこの国の英雄であるツインズ様に反逆して敗北した一族の末裔だといったのだ。



 笑えないわよ、お父様。


 私はお母様に聞いた。お母様とお父様が婚約したのは16才だと聞いていたからだ。



 そんな家系を持つお父様をなんで好きになったの? と聞いた。


 お母様は懐かしそうに話した。


 そんな秘密を隠すことなく話してくれて、それでも真剣に付き合ってくださいって言われたらことわれないでしょ? とのことだった。



 それから母は思い出したのか恋愛話をこれでもかと聞かされてうんざりしたが。おかげで一族の歴史については気にならなくなった。


 両親は貴族には珍しく恋愛結婚だったそうだ。……そうね。私もいつか、そんな素敵な旦那様に出会えるかもと少し明るい気持ちになった。



 私も16才だし。魔法学院でも問題なく過ごしている。お友達もできた。シルビアさんにアンネさんそして遠くの国からきたアールさん。


 アールさんとはまだ距離感があるけど。シルビアさんとは仲良しみたいだし私も頑張らないと。



 あ、でも女の子同士で仲良くしたら素敵な旦那様とは出会えないのかしら。でもそれはそれ、次のキャンプでなにか出会いがあるはずよ。



 お父様は初めてキャンプでお母様と知り合ったといってたし。きっといけるはず。



 カールは……、そうね、あの人は変わってしまった。忘れましょう。シルビアさんと婚約しているんだし。もうただの幼馴染よ。



 でも、あんなに仲良しだったのに。私を嫁にするって言ってたくせに……。 まあ、私も子供の頃の口約束を真に受けちゃって馬鹿みたい。


 それでもシルビアさんと婚約の話があったって、私に言うのは酷過ぎよ。でも馬鹿なりに誠意をつくしたつもりなのかしら。



 それに相変わらずの馬鹿なんだから。学院2位なんてあなたに勤まるわけないじゃない。ほんと馬鹿なんだから。


 そう、私は知ってるのよ。あなたは馬鹿なんだから。……シルビアさんを不幸にしたら許さない。


 それになに? 馬鹿の癖に、いや馬鹿なのねハーレムなんて作ろうとして。あろうことか、アールさんみたいな子にもちょっかいをだすなんて。


 死ねばいい。カール、あなたは何がしたいの? 死ねばいいの? いけない、私はいったい何を考えているのか。



 さっきお父様からネクロマンサーについて聞いたからだろうか。こんな不謹慎なことを考えるなんて。



 夏休みが終わったらまた皆で仲良く過ごしたい。シルビアさんには同情しかない。けど、私は少し焼いてる。でもアンネやアールさんには関係ないこと。


 それにカールはシルビアさんを16才の誕生日にデートに誘ったという。そうね、私の感情はただの嫉妬だ。二人の幸せを願わなくては。


 でなければ私の幸せもこないのだわ。泣いているのか。いろんなことを考えてしまって今日は少し感情的になりすぎてしまった。



 子供の頃の初恋が叶うなんてありえない。お母様にはそんなこと言われたっけ。割り切りなさいって。


 それに初恋が叶ってしまったら、私は料理人の娘になっていたそうだ。



 たしかに母は料理が得意だ。貴族の娘だった母は子供の頃に誕生日で高級レストランに行ったことがあるそうで。


 そこで食べたシチューがあまりにもおいしかったから。料理人の嫁になるといって必死で料理を勉強したそうだ。


 それにコックさんがイケメンだったと……。お父様には内緒だといってたっけ。


 なるほど、だから母は子爵夫人なのに今でも厨房に入って料理を作るのだ。私も母の影響で料理は好きだ。特に香辛料の調合は魔法に似ていて好きだった。


 

 初恋はかなわなかったけどお母様は今が一番幸せだといった。ならきっと私だって幸せになれる。カール、シルビアさんが幸せになってくれれば。


 私は次にいける気がするの。



 そうね、今度のキャンプで香辛料を持っていくものいいかと思う。実際、私の調合した香辛料は家族はおろか使用人にも大変好評だった。


 お父様なんかは、これは商品になるといってた。ふふ、これで未来の素敵な旦那様に出会えるかも。


 お母様も応援してくれた。この味が分かる確かな舌を持った婿殿を見つけなさいって。目安は皿に残ったスープをパンで拭きとってくれるくらいのことをした殿方がベストだと。



 なぜそんなマナーのなってない、というか、婿探しの基準に具体的な動作を限定したかというと。お母様は実際にやったのだ。


 皿に残ったシチューをパンでふき取って綺麗なお皿にしたという。


 母方のおじい様はそんな無作法をとても叱ったそうだ。その時、店のコックが出てきて、お母様にお礼を言ったそうだ。料理人としてこれ以上の名誉はないと。


 イケメンのコックが10才の母に帽子を脱いで跪いたそうだ。それは惚れてしまう。素敵な話だった。



 なら私も次のキャンプでは。素敵な出会いを求めて。そうねこの香辛料ならきっとキャンプに最適だと思う。


 さすがに皿をパンで拭くは無理だと思うけど頑張らないと。


 カールはカールで、私は私で幸せになる。こうして二学期に向けて決意を新たにした。

 



 …………。



 なのに、カール……あなたはなんてことをしてくれたのよ。


 私は応援してた、なのに裏切った。最低な男、強姦魔。最低、最低よ。



 私は寮に戻ると。アンネから夏休みの出来事の一部始終を聞いたのだった。


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