第13話 入学式
【ツインズ共和国魔法学院】
ツインズ? そういえばこの国はツインズ共和国という、今さらだが双子となんか関係があるのか。
俺達生徒は今、この学院で一番大きな大講義室に来ていた。
大学の入学式を思い出す。なかなかに緊張してきた。俺はこれから人生で二度目の学生生活を送るのだ。
校長先生らしき人物が新入生歓迎の挨拶をしている。この手の入学式の挨拶云々は苦手なんだよな。
しかしファンタジー要素があると面白く聞けるから不思議だ。疑問だったツインズという名前の由来も話していた。
俺は初めて聞く建国神話なのでとても楽しく聞けた。周りの新入生は個人差はあるとはいえ退屈している様子がうかがえる。まあこの国では常識なのだろう。
話によればツインズという偉大な魔導士が4000年前の突如現れ、王と腐敗貴族の全て抹殺をしたそうだ。それから時間をかけて今の共和制としての国家が誕生したという。
4000年の歴史か…… 料理が旨そうじゃないか。俺は地球にあった中華料理の味を想像していた。
この世界にはあるだろうか旨い飯が、4000年の歴史があるのだ期待してもいいじゃないか。
新入生代表の挨拶が始まる。やはり首席であるシルビアさんだった。なるほど、制服もよく似合う。
ツインドリルだと違和感がないだろうかと少し疑問に思っていたが、そんなことはない。
まごうことなきお嬢様そのものであった。
しかし、俺が首席になってたら、あれを俺がやるはめになっていたのかと思うと、俺の判断は間違ってなかったと確信できる。
入学試験の順位は3位だった。無難だな、2位ではなく3位だ。世の中にはナンバー2不要論というものがある。
それで非業の死を遂げる可哀そうな英雄の伝説もあるくらいだ。
やはり日本の偉い人が言ったとおりだ。2位ではダメなのだ。しかし、俺が3位ということは当たり前だが2位の人がいる。
まだ顔を知らないが。その人には優しくしようと思った。
こうして無事、入学式は終わり。各教室に案内される。全寮制なので学生寮の案内も行われた。
案内された部屋は二人部屋でルームメイトはなんとシルビアさんだった。これは好都合だ。俺たちはすでに仲良しなのだ。
しかしシルビアさんは顔を赤らめてうつむいている。俺と目を合わせてくれない。
そうだった。昨日の猥談のせいだ。誤解をとかないと。
俺は制服のスカートを捲り、太ももに装備している拳銃を取り出し彼女に見せた。
「ひ、待ってください。いきなりそういうことは。まだそういうのには慣れてないと言うか……心の準備が」
この状況でスカートを捲る俺はもはや痴女である。なぜスカートの中に銃を装備したのか。いや今はシルビアさんの誤解を解かないと。
「ち、違うん……の。これ魔法道具、昨日言ってたやつ。シルビアさんは誤解してる。これは護身用の道具で――」
俺は必死だった。当たり前だこの展開は間違いなく俺が悪い、説明したおすに限る。改めて拳銃とは何かを説明した。
エッチな感じにならないように。今度は専門用語を多用した。それに実物を見せれば何とかなるだろう。
俺は銃のメカニズムを詳細に説明した、彼女に伝わるように。これはエッチな道具ではないのだ。俺は真剣だった、ひたすら言葉でまくしたてるのみ――。
――ふう、なんとか誤解は解けたようだ。シルビアさんは落ち着きを取り戻した。よかったなんとかなったようだ。
しかし銃に関してはそんなに興味はなかったようで残念だ。というか自分が誤解していたという事に気づくと、シルビアさんはますます真っ赤になってしまった……。
あとは彼女の問題だ。一晩たてば元通りになるだろう。
ちなみに学年2位の生徒は男子だった。部屋割りは成績の順位別だったらしく、もし女子だったらシルビアさんのルームメイトは俺ではなかっただろう。
まだ顔を知らない2位の彼には感謝だ、少し優しくしてもいいかもしれないと思った。
翌日、授業は始まった。
特に問題はない、なんせ俺は人間で言うと100才は超えている。今さら学校など余裕のはずだった……。
あまかった。おれは半分以上引きこもっている、いや人生の8割以上引きこもってないか?
ここで俺のコミュ障が発動した。サポートロボをもってしても突然先生に質問されても即座に回答などできないのだ。
もちろん成績3位であることに疑いをもたれてはまずい。
先生の質問には正確に回答してはいたのだが。あまりに俺がおどおどしているので。
周りは自然と心配してくる状況だ。これでは目立ってしまう。
うつむく俺。だが、それが功を奏したのか周りがやさしくフォローしてくれる。薄幸のお嬢様設定がいきているかもしれない。
この設定でしばらく過ごすことは確定か。とうか設定ではなくガチだった。コミュ障を克服するのが俺の課題となってしまった。
この国は歴史が長い。当然、歴史の授業にはかなり力が込められている。それはいい、歴史の授業はわりと好きな部類だ。
しかし、なんだこの国の歴史は、この国はいまだに勇者様信仰なのだ。
しかも勇者は魔王を討伐した後、王国の姫と結婚したとか。それが今の公爵家の始まりだというのだ。
おいおい、それは捏造だぞ、俺は結婚したことがない。それが本当だったらシルビアさんは俺の子孫という話になってしまうぞ。捏造もいいところだ。
そもそも俺がいたのは5000年前だ、いくら神話とはいえごちゃまぜがすぎる。そもそも俺はツインズとやらにあったことがない。
(マスター、ツインズ様とはマスターが亡くなって1000年後くらいにお会いしたことがありますよ。おそらく4000年前より以前の出来事に関してはかなりぼんやりとしているようですね)
なるほど、神話にいちいち突っ込んでも無粋というものか。しかし勇者の伝説は5000年たつと、とんでも設定てんこ盛りになるのだな。
俺は随分と子沢山で、その子たちは貴族としてこの国の建国に寄与したとか。しかも200年も生きているのはさすがにおかしいだろう。
こうして一日のスケジュールは終わった。
どっと疲れが押し寄せた。歴史の授業は勇者時代が終わるまでは、俺の恥ずかしい捏造伝説が続くのだろうと思うと今から憂鬱だ。
いろんな先生がいたがどれもヨーロッパ風味の名前で俺は憶えられなかった。とにかく貴族の人の名前は長い。
しかし魔法学科の先生だけは別格だ。もちろん魔法が好きなのもあるし、これからもっとも重点的に学ぶべき科目には変りはない。
だがそんなことよりも名前が最強だったのだ。
ジャンクロード・バンデル先生。おしいな。だが俺はヴァンダム先生と呼ぶことにした。心の中で。




