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第103話 先手必勝

 今回は先手をとるさ、二度とローゼさんをネクロマンサーの揉め事に巻き込むわけにはいかないしな。

 俺は足元に崩れ落ちたドラゴンヘッドの団長モーガンの死体を蹴飛ばす。


「おのれ、部外者のくせに、貴様になにがわかる!」

「わからん、だがお前がこれからするであろうことは悪趣味で俺は嫌いだ、だから止める。お前には分からんだろうがな」


「ふ、いいだろう、ユリウス・バンデルの前に立ったこと、後悔させてやる」


「上位アンデッド召喚! 死者の迷宮・ボーンラビリンス」


 ユリウスが使える魔法の中でも最上位であるネクロマンサーの奥義 死者の迷宮・ボーンラビリンス。


 建物全体があばら骨のような骨に包まれる。

 木造の建物だった酒場は骨と腐った肉の壁につぶされて建物は倒壊を始める。


「ひい、だんなぁ、待ってください! アタシはまだ生きて……」  

 腕を折られてうずくまっていた女盗賊は絶叫しだした。

 だが次の瞬間絶命し、動きを止めたかと思えば、再び動き出す。

 どうやら生きている者を強制的に殺してアンデッドにしてしまったようだ。

 それに先ほど殺した大男や団長もゆっくりと起き上がる。


 ユリウスが両手を広げて薄笑いを浮かべながら俺に向かって言った。

「ほう、死者の呪いに引きずられないとは、貴様は強い魂を持っているようだな。

 だがそれはある意味で不幸だといえる。

 ようこそ亡者の楽園へ、これからこの国は亡者に覆われるのだ。

 予定が狂ったが些細なことだ、亡者が生者を殺しさらなる亡者を生み出す、永久に続く死者の楽園、生き残ったことを公開させてやる!」

 

「あ、そう、ならその楽園は俺とお前と愉快な盗賊団の三人だけってことになるな、随分とこじんまりした楽園で爆笑だよ」


「私を甘く見るなよ。この魔法の効果範囲はこの建物に限定されるが、亡者たちは生者を襲い仲間を増やすのだ」


「いや、それは聞いたし知ってるよ、でもな、この世界にはお前らしかいないんだよ」

 俺は骨と腐肉でできた壁を勇者の魔法、プラズマボールで吹き飛ばす。


 壁一面に空いた穴はみるみると塞がっていくが、ユリウスは見た。

「なんだ、何もない! 貴様! 何をした!」

 ユリウスは見たのだ。外には何もないただ広い空間が広がっているだけだった。

 地平線の先に、放ったプラズマボールが着弾したのだろうか大きなきのこ雲を上げているのが見えた。  


 俺はこの酒場自体をテレポートによって別空間に転移している。

 そこにはワンドさんのゲートの魔法と、魔王のダンジョン創造の力をかりて、完全に閉じた空間を作り出している。


 酒場の建物が奴の魔法で周辺を巻き込みながら、死者の迷宮と呼ばれるに相応しい腐肉の森になったとしても。

 その外側には何もない、無限に続く別次元の空間が続くだけだ。

 この死者の迷宮がオアシスともいえるくらいに何もない無の空間が広がっているのだ。


 ユリウスは状況を理解すると絶望した。

「こんなのは知らない、お前は、いったいなんなんだ、頼む、私が悪かった、助けてくれ!」


 戦意を完全に失ったユリウスに対して、言う事は何もない。


「自分の過ちに気付くのが遅いんだよ。お前の罪をいちいち調べるのも面倒だが、お前はローゼさんに良からぬ事をしようとしたのは確かだ。だから今回は先手で動くことにした、そこに慈悲はない」

 そう、慈悲などない。こいつはこの街の無関係な人を巻き込もうとしていた。

 最低最悪な魔法を躊躇なく行使したのだ。


「くくく、終わりだ。ならば、出し惜しみはしない。感謝するぞ、小娘、これは我がバンデル家の禁忌のすべて、俺も使うのは初めてだからどうなるかは分からん、お前が死んだらあの世で教えてくれ」

「なにいってんだ?」


 ユリウスは懐から赤い宝石を取り出すと、何かつぶやく。


「これは死の秘宝だ、これがどうなるか俺も知らんのでな、説明はできない。

ではいくぞ! 秘術『完全なる不死への渇望、暴食の君』!」


 次の瞬間、ユリウスの身体は膨張し始めた。

 最初は太っただけに見えたが、皮膚が裂け、その裂けた皮膚から肉体が溢れだし、新たな身体を構築する。


 それは膨張をくりかえし、また皮膚が裂け、新たな肉体がでてくる。


 数秒でそれは建物よりも巨大な肉塊になっていた。

 もはや人の形ではない。それに無数の顔や腕や足が不規則に肉塊から覗いている。


 化け物だ。

 しかもそれは膨張を止めない。どんどん大きくなっていく。

 かろうじで残っていたユリウスの顔面が悲痛に歪みながら言葉を発する。


「ははは、まったく、これのどこが秘術だ。我が祖先がバンデル家から追放されたのがよくわかる。こんな醜い魔法があるか! グハハ、コレデハ、タダノ、バケモノダ、シカシ、ハラガヘッタナ、ワタシハ、ダレダ、グブブ、ヴォアア、ウウ」


 膨張を繰り返した肉の塊はいつの間にか城よりも大きな球体になっていた。

 なるほど球体が自然界で安定した形だってのはわかった。


 それにこいつはもう人じゃないしな。このまま俺を押しつぶすだけだろう。

 無数に生えた手は俺を取り込もうと空を掻きながらもがいている。


「うぇ、キモイな。ロボさんや、ちなみにあれは生きてるのか?」


(定義によります。しかしながら、もはや知性は残っていないでしょう。それにあの肉塊の中心にある死の秘宝に込められた魔力が続く限り膨張を繰り返すと思われます。醜いですからさっさと処分するのがよいかと)


 なるほどな、ならば生物に効く攻撃。

 そうだな、奴も奥義を見せたのだから俺も出し惜しみはなしだ。


「ロボさんや、アレを使うわ!」

(ええ? ああ、その振りは理解しましたが。アレがなんなのかは理解しかねます、まさか稲妻の蹴りでも放つのですか?)


「……いや、何とも言えない反応ありがとう。久しぶりに乗ってきたから少しだけ調子に乗っただけだ。アレとは全開却下された俺が考えた最強の攻撃を試すのさ」

(なるほど、ガンマ線レーザーですね。それなら増殖を繰り返す生物に対しての効果は抜群だと判断します)

「よし、ならばやる。この隔絶された空間でしか出来ない最強の攻撃をお見舞いするぞ。喰らえ! ガンマレイバースト!」


 前に構えた両手から目には見えない、可視光を遥かに超えた電磁波のレーザーを放つ。


 効果は抜群、それどころか、消し炭すら残らず目の前の肉塊は蒸発してしまった。あっけないものだ。


 でも奴が、地上でそれを使っていたら被害はとんでもなことになっていた。侮らなくて正解だったのだろう。

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