九曜沙耶香の日常 ※ 幼馴染視点
「紗耶香、おっはよー」
「おはよう九曜さん」
夏休みが終わり、高校が始まった。
教室に入ると仲の良い女友達やクラスメイトたちが声を掛けてくれる。
私は電車(啓一さんは「あれは電車ではない。列車だ」というけれど)に乗って隣街にある高校に通っている。
「ねぇねぇ、今月号見た?」
「あっ、まだ見てない」
「じゃあ、貸してあげるね」
クラスメイトで仲のいい女友達とはファッション雑誌の貸し借りをする仲だ。
啓一さんは都会に住んでいるから少しでも都会の情報を得ようとこうして情報収集に励んでいる。
私の家の近所には書店はなくて、本を買うなら電車で隣街の書店にいかないといけない。
今はインターネット通販もあるけど、私はどちらかといえば書店で本を買いたいというタイプだ。
事前に買うものが決まっていればネット通販でも大丈夫だけど、並べられている本を見て気になるものが意外と当たりだったりする。
「沙耶香はホント髪が艶々だね~」
一番仲の良い祥子ちゃんがわたしの髪を見てそう言った。
女友達でもあまりわたしの髪に触って欲しくないので、そのことは伝えている。
その、啓一さんだったらいくらでも触ってくれていいのだけれど。
「ああ、九曜さん、尊い……」
「マジ九曜さんいいわ」
聞こえないふりをするけどクラスの男子からの視線を感じる。
でもそんな視線を受けても何とも思わない。
私にはクラスの、ううん、啓一さん以外の他の男性はジャガイモにしか見えない。
そんな私に告白してくる男子はときどきいる。
高校に入学したばかりのときは結構多くてそんな人たちにはみんな丁寧にお断りした。
今では誰とも付き合わない鉄壁の女と呼ばれているみたいで告白されることは少なくなったけれどそれでもときどきはある。
そこで私は親しい友達に夏休みに私が啓一さんと婚約したことを話して噂を流してもらうことにした。
短いですが感想欄で希望をいただきました内容を投稿しました。