遠距離恋愛
『……っ、もう1時間になるね』
時計を見てそう確認した。
サヤちゃんとの再会と婚約。
そして始まった遠距離恋愛。
あれからもう1週間が経った。
『啓一さん、また明日』
『うん、また明日』
『…………』
『…………』
毎日電話で取り留めもない話をする。
しかし、あまりにも恋愛にのめり込み過ぎて諸々が疎かになってはいけない。
そういうわけで二人で話し合って電話で話をするのは毎日1時間だけとルールを決めた。
だからもう電話を切らないといけない。
そうは思いつつも自分からはなかなか切ることができない。
そんなわけでいつも相手が切ってくれるのを待ってしまいお互い無言になる。
『……おやすみサヤちゃん、好きだよ』
『はい、私も大好きです。おやすみなさい』
後ろ髪を引かれる思いを振り切り男らしく俺の方から電話を切った。
これが最近の毎日のやり取り。
サヤちゃんとの婚約は俺の両親にもきちんと話をした。
まあ、事前にばあちゃんから連絡があったらしく既に二人とも知っていた。
二人とも喜んでくれて俺としてはホッと一安心だ。
逆に、遠距離恋愛は大変ね、と言ってくれるほどだった。
両親たちは『昔は電話代が高くて大変だった』とか『公衆電話で硬貨を連投した』という話を懐かしそうにしてくれて時代の違いを感じる。
今は通話し放題だったりするのでお財布的にはありがたい。
「さて、勉強しないとな」
俺は机についてテキストを広げた。
こっちに帰ってから直ぐに俺は自動車学校に通い始めた。
都市部に住んでいれば公共交通機関が発達しているので必ずしも自分で自動車を運転する必要はない。
そのため帰省するまでは直ぐに免許をとる予定はなかった。
しかし、サヤちゃんと婚約した以上、将来どこで暮らすことになるのかわからない。
あの田舎では自動車免許は必須だ。
どちらにしても自動車の運転免許はとっておいた方がいいだろうということになった。
というかサヤちゃんと一緒にドライブデートをしたいというのが一番だったりする。
田舎では自動車がないと行動がどうしても制限される。
しかし、自動車があれば選択肢ははるかに広がる。
――ぴこんっ
スマホからメッセージ着信の音が鳴った。
サヤちゃんからかと思ったが違った。
俺の友達。
高校時代のクラスメイトであり友人の藤嶋慎吾からだった。
『女子高生が婚約者とかふざけるなよ! それは犯罪だろ』とあった。
(やっぱりそう思うよな~)
俺は高校時代から女っ気がなくて仲間うちから『啓一はそんなに顔も悪くないのにモテないよな。性格に問題があるんじゃないのか』と遊び半分でそう言われてディスられていた。
そんなわけでこっちに帰ってから親しい友人たちに彼女どころか婚約者ができたぜ(どやぁ)と連絡してやったのだ。
ふはは、ざまーみろ。
そんな訳で最初は真偽を確かめるものやエイプリルフールにはまだ早いという内容のメッセージが多かったが、最近は本当に俺に婚約者ができたという前提で色々とやっかむメッセージが殺到している。
ただ、みんな根っこはいい奴なので、最後には「おめでとう。末永く爆発しろ」と祝ってくれた。
それにしても慎吾の奴はこっちを羨むというのは筋違いというか烏滸がましい奴なのだ。
こいつはスーパーリア充野郎。
周囲には秘密にされているが奴には高校時代から付き合っている彼女がいる。
まあ、それだけなら別に普通なんだろうけどその相手が問題だ。
何と、その相手の子は芸能人。
しかも神女優とか言われているらしい同い年の女優さんで藤嶋紗良という子なのだ。
正直、俺は芸能関係に疎いのでその凄さがぴんとこないのだが超有名人で付き合っているのがバレたらちょっと面倒なレベルらしい。
それでも特に親しい俺たちには教えてもらえているのでその信頼は嬉しかったりする。
『犯罪なのはお前も一緒だ。俺はせいぜい執行猶予。お前の場合は一発実刑だ!』
そんなメッセージを慎吾に送って俺は勉強を再開した。
おまけのプロローグみたいなものです
本話は前作『神女優の幼馴染はなぜか平凡な俺に依存している』のおまけと連動しています。
そちらも是非ご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n0269ha/
【新作のご案内】(7/2投稿完結済み)
ジャンル違いで恐縮ですが新作を投稿しました(全6話・約1万5000字)。
『王太子殿下は真実の愛を貫きたい』
https://ncode.syosetu.com/n4251hb/
実質短編作品です。
初めての異世界恋愛ジャンル作品です。
女性向けジャンル作品ではありますが、男性の方も楽しめる内容の作品です。
むしろ私が書いているので男性の方が共感できるかもしれません。一応純愛ハッピーエンド(のつもり)です。ちょっと大人の風味かもしれません。
是非一度覗いてみて下さい(できましたらいろいろとご協力下さい)。
これ本当にお前が書いたのか? とおっしゃっていただける仕上がりになっていると思います。
(ありがたいことに現在ジャンル別日間ランキングに載っていますので内容がひどくて読んで損したということはないと思います)。