13 エピローグ
お祭りの翌日(帰省6日目)。
明日は俺がここを立つ日だ。
つまり、今日が実質ここにいられる最終日ということになる。
この日俺たちはいつもの沢にいた。
「「ちゅっ、ちゅっ、んちゅっ、はむっ」」
いつもの沢の淵縁の岩に揃って座って最初は話をしていた。
しかし、会話が止まるともうお互い我慢ができなかった。
どちらともなくお互いがお互いを求め唇を貪るようにキスを始めた。
「サヤちゃん、おいで」
「はい……」
俺はサヤちゃんに俺の太ももの上に座るように促した。
サヤちゃんが立ち上がってワンピースについた埃を軽くはたくとスカートの部分を押さえながらゆっくりと俺の太ももに腰を下ろした。
太ももにサヤちゃんの柔らかい感触がして、ふっと香る甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
「あの、重たくないでしょうか……」
「全然重たくないよ。むしろ軽いくらいだ」
病気が治って健康的になり肉付きがよくはなってもサヤちゃんは気を付けて理想的な体型を維持しているのだろう。思ったほどではなかった。
「「ちゅっ、んちゅっ」」
サヤちゃんが俺の方へと振り向き、先ほどの続きとばかりにキスを再開した。
「好きっ、好きっ、啓一さん、大好きですっ」
「俺もだよ、サヤちゃん。サヤちゃんのことが好きだ。愛してる」
お互いに抱き合い、キスを重ねて、愛を囁き合った。
そうしてひとしきり思いを確認し合ったところで一涼みすることにした。
いくら木陰で沢の縁だとはいっても真夏の昼間に好きな人とはいえ身体をくっつけていると汗の一つも流れるというものだ。
俺たちは揃って靴を脱ぐと沢へと入った。
水深10センチやそこらで足首のちょっと上まで浸る程度だがこのくらいの水量がちょうどいい。
「あ~、水が冷たい。気持ちいい~」
俺は水を掬って顔を洗い、首や腕に水を掛ける。
サヤちゃんはワンピースの長いスカートを摘まんで裾が濡れないようにしながら沢の中を歩いて移動する。
サヤちゃんが歩く度にパシャパシャと水飛沫が散る。
風が吹いて木の枝が揺れて日の光が木漏れ日となって差し込みサヤちゃんを照らした。
そんなサヤちゃんを俺はぼーっと眺めた。
「啓一さん、どうされました?」
「いや、サヤちゃん、やっぱり綺麗だなぁ~って」
「もうっ、そんなこと……」
サヤちゃんがそう言って顔を逸らした。
正直、サヤちゃんが水辺で戯れる様子が絵になりすぎて水辺の妖精かと思ってしまったほどだ。
いや、ここまできたらさすがにバカップルだと我ながら思う。
「サヤちゃん、毎日電話するから。メッセージも送るから」
俺はサヤちゃんにそう宣言した。
「はい。私もします」
サヤちゃんとは遠距離恋愛になる。
「長期の休みには帰ってくるから」
「私も啓一さんの住んでいる街に行ってみたいです」
俺たちはそう約束し合う。
遠距離恋愛は正直寂しい。
しかし、この会いたいけれど会えないという時間はきっと俺たちの関係をより深めるものになると思う。
たとえ離れていても大丈夫。
だって俺たちは、幼馴染で気持ちの繋がり合った婚約者だから。
本編完結となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
【新作のご案内】(7/2)
ジャンル違いで恐縮ですが新作を投稿しました。
『王太子殿下は真実の愛を貫きたい』
https://ncode.syosetu.com/n4251hb/
今夜中(午後9時30分まで)に完結する予定で全部で1万5000字前後の実質短編作品です。
初めての異世界恋愛ジャンル作品です。
どちらかというと女性向け作品ではありますが、男性の方も楽しめる作品にしたつもりです。
一応純愛ハッピーエンド(のつもり)ですが少し大人向けかもしれません。
是非一度覗いてみて下さい。
【本作について】
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前作同様、おまけ(後日談的なもの)は不定期更新となります。
ブックマークをしていただけますと更新の通知代わりになりますのでされていない方は本編完結ではありますがこちらもよろしくお願い致します。
【前作のご紹介】
前作から本作に来られた方も多いかとは思いますが一応ご紹介です
『神女優の幼馴染はなぜか平凡な俺に依存している』
https://ncode.syosetu.com/n0269ha/