裏切り者の正体
3人が王宮にたどり着いたときには、カイルの本軍も来ていて、にらみ合いが始まっていた。
「伊竜強鷲号副船長、あなたが裏切り者です」
笠原に守られながら、甲上は声を張り上げた。
「何を言ってるんですか?
甲上監査官!」
それは一瞬のことで誰も動けなかった。
伊竜が植村を盾にして首元に剣を近づけたのだ。
「みなさん、動かないでください!
桜木さん、大人しく捕まってもらえませんか?
あなたが動くだけでヒヤヒヤするんですよ。
また、阻止されないかって…」
伊竜の目付きは変わっていた。
桜木は剣を捨て、自らカイル船の中に入り捕まった。
「ありがとうございます。
どうぞ、甲上監査官、続けてください」
甲上は思わず桜木の方を見た。
桜木はゆっくりと頷く。
「伊竜さん、あなたはカイルの行方不明の王子ですね?」
甲上の声は冷静だった。
「ええ、その通りです」
伊竜の声も冷静だった。
「あなたはこの機会を狙っていた。
そうですね?」
「ええ」
「ですが、“ずっと”ではない」
甲上の言葉に伊竜の眉が動く。
「少なくとも4年前の事件にあなたは一切関知していない。
それに、ここ最近になるまで、カイル王と連絡を取り合った痕跡も有りませんでした」
「あなた方の知らない方法でやり取りしていたんですよ」
伊竜はあくまで冷静を装った。
「いいえ、それはあり得ません。
それはあなたが、捨てられた王子だったからです。
カイルには双子の王子がいた。
双子だと外部に知れると、出来の問題から将来が不安視される。
だから、早々にあなたは捨てられた」
「では、なぜ今になってカイルとやり取りをしていると?」
「それはあなたの双子の兄弟が死んだからですよ」
「そんなこと、ニュースになっていませんが…」
伊竜から冷静さが失われていく。
「そんなのニュースにできないでしょ?
だから、一卵性双生児のあなたに連絡がいった。
向こうは顔を知ってる。
探すのは簡単だったでしょうね」
「そこまで分かっているなら、諦めてください」
確かにカイルの本軍の方が圧倒的な数で勝ち目はなかった。
しかし甲上は、
「諦めるのはあなたの方です!
敵味方も分からないあなたに軍を束ねる資格などない!」
「はあ?」




