行方不明
瀬野の事件の翌日、桜木の姿が見当たらなかった。
「桜木は何を考えてるんだ?」
桐生は怒りながらも呆れていた。
何も話さずにどこかに行ってしまった桜木に対して、甲上も植村たちも切なさを感じていた。
仕方なく待機兵の中から一人応援の副船長を配置して強鷲号は出港した。
また、平凡な日々が訪れる。
誰もがそう思っていた。
いや、甲上は違った。
間もなくして、神矢大将船から連絡がきた。
神矢は声を荒らげていて、受話器から離れたところにいても声が聞こえてくる。
「戦況図を見ろ!
カイルの狙いは王宮と海軍本部だ!」
一気に緊張が走る。
「俺と今吉は王宮へ向かう!
お前たちは海軍本部だ!」
「はい!」
植村が返事をする。
出港して、まだ何時間もしていない。
すぐに戻れる。
間に合うはず。
でなければまた元帥を失うことになりかねない。
それは避けなければ…
「それで、桜木は見つかったのか?」
「まだです」
「こんな時に何を考えてるんだ」
神矢がぼやいた。
本部に着くとカイルとの争いは既に始まっていた。
しかし、負けている様子ではなかった。
「なぜ支部のメンバーこんなにたくさん…」
植村が呟く。
海軍本部を守っていたのは支部のメンバーだった。
そう、宗谷派の人たちだ。
植村たちもすぐに参戦した。
激戦を船の中から見守る甲上。
空から光が消える頃、ようやく戦闘は終わった。
時を同じくして、王宮からも一段落したとの連絡が入いった。
「本番これからだろ」
桐生のいう通りこんなで終わるわけがなかった。
相手はカイルだ。
またすぐに軍を、おそらく本軍しかも大群で王宮へ送り込んでくるだろう。
「桜木はこんな時にいったい何処へ…」
桐生の呟きに一同共感した。
「まさか、ですけど一人でカイルに乗り込んでる訳じゃないですよね?」
それは植村からの思わぬ一言だった。
「本当なのか?」
宗谷派の一人に桐生が聞く。
「はい。
しかし、桜木を信じて待ってください。
お願いします」
一斉に宗谷派がお辞儀をする。
その光景に思わず甲上は身震いした。
「ダメだ。
桜木一人にこの問題を任せて、4年前の過ちを繰り返すことはできない」
桐生の意思ははっきりしていた。
「行かせません」
笠原がいきなり現れた。
いつもの無表情とは違い、真剣な面持ちだった。
「また、桜木一人に背負わせろと言うのか?」
「今まで桜木さんの話の何を聞いてきたんですか?
あなたのやることは、この国を守ることじゃない。
海軍を守ることだ。
だから、あなたは元帥に向いてないと桜木さんに言われるんです。
あなたは宗谷大将じゃないんですよ。
それをわかってください」
「なら、尚更、行くべきです」
甲上の声にみなが響いた。
「今の海軍にとって桜木中将を失うことは、マイナスにしかなりません。
だから、桜木中将を守るべきです」
甲上の言ってることが正しいことが誰もがわかっていた。
そして、桐生を突き動かす一番の理由でもあった。
笠原も宗谷派もそれ以上言うことはしなかった。
そして、カイルに行ったことを話した。




