一本取る
「やめてください!
お願いします」
その声で戦闘は中断される。
声の主は桜木だった。
桜木は土下座していた。
「なぜ止める?
なぎちゃん!」
瀬野の目は赤くなっていた。
海軍本部に攻め込むことも、桜木に止められることも本当は望んではいないのだ。
「宗谷さんが生きていたら、こんなの悲しみます」
桜木の目からは涙が流れていた。
「宗谷さんの目指した海軍はこんなじゃないだろう!」
「本当に宗谷さんが何を考えていたかなんてわからないじゃないですか?
あの人には立場があった。
本音を簡単には話せない立場だ」
「それはなぎちゃんもだろう?
なぜ、わしの仲間にならない」
瀬野の表情は切なそうだった。
「仲間になりたいです!
でも、それは海軍のためにはならない!」
その言葉で瀬野の戦意は喪失した。
捕らえられる瀬野たち。
桜木はそれを泣きながら見つめていた。
事が落ち着くと桜木の目からは涙が消えていた。
「有言実行ぐらいしろ!」
桜木が甲上に怒鳴った。
「武装闘争にはさせない。
そう言わなかったか?」
桜木は怒っていた。
「結果的には有言実行しましたよ。
あなたが止めてくれましたからね」
甲上の涼しい表情に桜木が珍しくムッとする。
「信じてました。
だって、あなたはキャリア体制推進派ですから」
桜木は複雑な顔をして去った。
「一本取られる桜木の姿初めて見たな」
桐生ニヤニヤしていた。
甲上は本当に信じていたのだ。
桜木なら止めてくれると。
桜木の言葉なら止まると。




