反対派に…
強鷲号に戻った桜木はとことん甲上を無視した。
何があったか知らない強鷲号のメンバーたちは、2人の間を取り持とうともしたが、無駄だった。
ある夜、甲上は伊竜と2人きりになる機会があった。
「ずっと疑問だったんですけど、伊竜家と言ったら名家。
なぜ、海兵なんかに?」
「自分は養子なんです。
捨て子で、死にかけていた自分を本宮さんが、助けてくださった」
「本宮元元帥がですか?」
甲上は驚いた。
「本宮さんが、子供のいなかった伊竜家の養子にと。
父も母もすごくいい人です。
ただ、ずっと恩人にもう一度会ってみたいと思っていました。
だから、伊竜の両親にわがままを言って海兵に。
ただ、自分が海兵になった翌年、本宮さんはなくなってしまいましたが…。
まっ、でも、会えただけ良かったと思っています」
伊竜は笑顔だった。
次の日、甲上に志摩から連絡が入った。
他の船に乗っている監査官たちが襲われたという内容だった。
「植村船長、航路を変更していただけますか?
戻ってやらなければならないことがあります」
甲上は真剣だった。
「やらなければならないこととは?」
植村たちも仕事なのだ。
簡単に航路を変更することなどはできない。
「キャリア体制推進の内容変更です。
反対派をおさえられる唯一の策です」
「間に合えばいいけど…」
相変わらず、桜木が甲上の思いを蔑ろにした。
「それにもう一つ策はある」
桜木は無表情だった。
「何ですか?」
「武装闘争」
それは恐ろしい四文字熟語だった。
「できるんですか?
仲間だった人たちに対して…」
甲上は恐る恐る聞いた。
桜木は何も答えようとしなかった。
「そもそも、海軍はもう反対派のメンバーを把握してるんですよね?
なのになぜ何も対応しないんですか?」
甲上は興奮し始めていた。
「反対派のリーダーは瀬野という男です」
そこで桜木は一旦間を置いた。
「実は誘われてるんです。
反対派に…」
それは、思いもよらない桜木の一言だった。
「はあ?」
「この事はきーきも知ってます。
だから、何か対応策を考えていても私には連絡は来ません。
まっ、私から話したんですけど…」
桜木はそう言うと出ていった。
追いかけようした甲上を植村が止めた。
「今、一番辛いのは渚です」
「どういうことですか?」




