消えて
元帥室。
「今回の件は不問に付すそうだ」
桐生が桜木に言った。
桜木はソファーでくつろいでいた。
「よかったな!」
喜ぶ今吉の横で神矢は黙り込んでいた。
「なぜ、我々にぐらい話さなかった?」
桐生は真剣だった。
「言ったでしょー。
知らないほうがみんな幸せに生きられた真実だって。
それよりも、問題はこれからだ」
桜木は起き上がった。
「問題?」
神矢が顔をしかめた。
「カイルの連中が動き出してる。
今度こそ、決着をつけなきゃいけない」
室内は静まりかえってしまった。
甲上と甲上の母のことは王宮護衛隊が守ることとなった。
次の日。
桜木は朝早くから慰霊碑の掃除をしていた。
「良かったですね、また、海に戻れて」
甲上は後ろから話しかけた。
桜木は答えなかった。
「ありがとうございました。
私と母のことを助けて頂いて」
甲上は深々と頭を下げた。
「消えて」
微かにそう聞こえた。
「えっ?」
聞き返す甲上。
「私の前から消えて」
振り返った桜木の目は真っ赤に腫れ、涙が流れていた。
「甲上隊長にあんたを守って欲しいって頼まれた。
でも、出会わなければ、あんたに関わる気もなかった。
それなのに目の前に現れた。
運命だと思ったよ。
でも、もうその約束も果たした。
だから、私の前から消えて。
あんたを見てると4年前のことを思い出す!」
甲上はショックを受けた。
“側にいていい”“命は私が守る”そう言ってくれた人に“消えて”と言われた。
ショックでしかなかった。




