うるさい!
次の日。
本部に戻ると甲上は志摩に報告した。
「では、カイルの連中に連れ去られたんだな?」
「はい、間違えないと思います。
あの時聞こえてきたのは確かにカイル語でした」
「わかった。
しかるべきところに報告しておく」
志摩は思い詰めた顔した。
カイルの話しになれば、大抵の人間はこうなるのだ。
それがリアンとカイルの関係だった。
昼食時。食堂。
「塩谷に会ってきたよ。
お前が紹介した国境警備隊で頑張ってた」
相馬が嬉しそうに話をする。
桜木はそれを黙って聞いていた。
「あと少しで研修期間終わるんだと」
桜木の表情が少しずつ変わる。
「お前に感謝してたよ」
「うるさい!」
急に桜木の怒号が鳴り響く。
そして重なるように食器が割れる音も鳴り響いた。
給仕を手伝っていた雑用係りの少女が食器を落としたのだ。
少女の目には涙が浮かんでいた。
それぐらい迫力が有ったのだ。
相馬はもちろん、その場にいた全員が目を丸くしていた。
「悪かった。
裏切り者の話なんか聞きたくなかったよな」
相馬が謝る。
「別にそういう訳じゃなくて…」
桜木が頭をおさえた後、無理に笑顔を作った。
「ごめん。
ちょっと、疲れてるみたい」
そう言って立ち上がると、雑用の少女に「驚かせてごめんね」と声をかけて、食堂から出ていった。
「…なんか、桜木らしくないな」
藍沢が呟いた斜め前で相馬が頷きながら同意し、横では桐生が桜木が出ていった出入り口をじーっと見つめていた。
その翌日、桜木は王宮護衛隊に逮捕された。




