いらない
次の日。
桜木はいつもの笑顔だった。
みなにも「心配かけてごめんね!」と明るく振る舞っており、それを見ている側の方が複雑な感情を抱いていた。
そして、心配しているのは強鷲号のメンバーだけではなかった。
とっかえひっかえ、桜木を心配した人たちがやってきたのだった。
神矢、今吉、相馬、神楽、薪、来れない人からは連絡が来た。
桜木の人気の高さを知った場面だった。
しかし、全員に桜木は素っ気なく返したのだった。
「正直に言います。
今のあなたが私には羨ましいです。
多くの人が心配して様子を見に来てくれる。
監査官は基本一人。
あなたには仲間がいる。
なのにどうして正直にならないんですか?
甘えないんですか?」
甲上は疑問に思ったことをそのままぶつけた。
「仲間ですよ。
でも、あくまで仕事仲間だ。
今のカミには海軍を守る力も、この国を変える力もある。
今吉にはカミを守る力がある。
そして、私の役目はあくまでその2人を守ること。
私が2人に守られてはいけないんです」
「じゃあ、他の人たちは?」
「きーきには立場が有る。
藍沢さんやミドリンには甘えたくない。
りょうちゃんや一華、相馬、かぐちゃんには未来がある」
「あなたにも未来は有りますよ」
「いらない。
生きてる時に頑張れる力さえ有れば、未来なんかいらない」
甲上の言葉が詰まる。
桜木は話を続けた。
「必要だって、言ってくれるのは嬉しいですよ。
でも、私がいなくなったって、なんとかなる。
実際、1年前までなんとかなってた。
だから、私はいなくてもいい存在なんです。
そして次期に私はいなくなる」
桜木の急な言葉に驚きの声さえ出なかった。
「しばらく私は船には戻れないでしょう。
もしかしたら一生…
私のことは気にせず、あなたはあなたのことをしてください」
桜木が言った意味が甲上にはさっぱりわからなかった。
下船時、桜木は植村を急に抱き締めた。
「なっ、何?」
驚く植村。
「ううん、なんでもない」




