種明かし
2日後。
キゼン島に桜木の特任業務と買い物のため寄った。
甲上は給仕官2人、兵士2人と一緒に買い物に出ていた。
「キャー!」
給仕官たちの悲鳴のあと甲上は意識を失った。
目を覚ますとそこは知らない場所で、暗かったが、家の中のようだった。
兵士2人の姿は見えず、給仕官たちはすっかり怯えきっていた。
部屋の外からは外国語が聞こえてくる。
耳を澄ませていると天井から微かに物音が聞こえた。
降りてきた黒い影に悲鳴を上げる前に口を押さえられた。
「私です」
声の主は桜木だった。
そこには高橋の姿もあった。
音を立てないように3人の手足を縛り付けていたロープを外す桜木と高橋。
「令也、時間稼ぐから、みんなを頼んだ」
桜木はそう言うと扉を開けた。
と同時に激しい戦闘が始まった。
高橋が甲上と給仕官たちを出口へと案内した。
今にも力が抜けてしまいそうな足を甲上たちは必死に動かした。
しばらく走ると見慣れた船が見えた。
強鷲号だ。
船に乗り込むと力が抜けた。
「植村船長、あとお願いしてもよろしいですか?」
高橋はまだ来ない桜木のところへ向かった。
数分すると桜木も戻ってきた。
「大丈夫ですか?」
桜木が血だらけだったため、植村は心配した。
「私の血じゃないから。
こっちは?」
桜木はまだ息が荒かった。
「同行していた兵士2名が怪我をしましたが、甲上監査官、給仕官2名に怪我はありません」
襲われた兵士たちが船に3人が連れ去られたのを知らせたのだ。
「令也!
お前、怪我は?」
「大丈夫です」
「一華、悪いんだけど、本部に連絡しといてくれる?」
「わかりました」
「甲上さん、大丈夫ですか?」
部屋に入ってきた桜木は真っ先に甲上のことを心配した。
甲上は大丈夫であることを伝えたが、胸はまだ早鐘を打っていた。
夜になってやっと落ち着いた。
夕食後、桜木が去ったあと、桜木と高橋の距離がいっきに縮まったことが話題になった。
「急に“令也も一緒に行く?”だもん、びっくりしちゃった」
特任から戻ってすぐ甲上たちが連れ去られたことを聞いた桜木は、一緒に行くと言った植村たちのことは止めたのに、高橋を誘ったのだった。
「しかも戸惑いもせずに“はい”って答えてるし。
この前、笠原少将に言われてたことと関係あるんでしょ?
ねぇ、あの時、なんて言われたの?」
植村が聞く。
「実はあの時、“桜木さんはお前の身を案じておられるんだ。
お前から辞めたいと言い出すように厳しくしている。
少しの間、辛抱しろ。
まっ、辞めたかったら辞めていいがな”と…」
「なるほどね。
補佐を渚から首にすれば傷つける。
だから、自分から辞めるよう仕向けた。
本当、そういうところ不器用なんだから…」
植村はあきれながらも笑っていた。
「侵入する直前まで自分の心配してくださっていました。
自分、頑張ります。
桜木中将と笠原少将のようになれるように」
高橋は生き生きとしていた。
「まぁ、あの2人の関係性も変だけどね」
植村は苦笑いした。




