いじめ
次の日、高橋令也補佐官(少尉)が乗船した。
「よろしくお願いします」
「ごめーん、遅れて」
高橋がみなの前で挨拶した頃、ようやく桜木がやってきた。
「高橋少尉であります。
よろしくお願い致します」
高橋は桜木に挨拶をした。
しかし、桜木は無視した。
それが、始まりだった。
それから桜木は高橋の話を全て無視した。無視しない時は素っ気ない態度を取った。
また、特任明けには、報告書の作成を押し付けては、高橋が書いたものを、直すところを指摘もせずにやり直させたのだった。
「やり直して」
桜木は提出された報告書を突き返した。
戸惑う高橋に再度「やり直し」と言って去ってしまった。
その量はすごいものだった。
桜木の特任が増えていたからだ。
戦闘訓練ではしごいた。
「まだ、まだ!」
もうヘトヘトになっていた高橋に桜木が声をかける。
「…はぁ…はい」
何とか立ち上がる高橋。
夜、一人で泣きながら報告書の作成をしていたり、傷だらけになっていく高橋を哀れに思った一同は、また桜木への不信感を強めていたのだった。
「見損ないました!」
ある夜、甲上は2人きりになった際、桜木に怒った。
「見損なうも何も、あなたは私の何をご存じなんですか?」
桜木は冷たかった。
「確かに私はあなたの全てを知ってるわけじゃない。
でも、あなたが無慈悲な人間だと思えない」
「私は冷酷な人間ですよ」
桜木は笑った。
次の日。
神矢大将一行がやってきた。
離れた場所で神矢と桜木が話をしていたため、甲上は神矢船に乗っていた監査官に怒りをぶつけた。
それを聞いていた笠原が一瞬笑ったのを見ていた全員が驚いた。いつも無表情だからだ。
笠原は高橋に近づくと耳元で話し始めた。
「…」
何を話しているかわかなかった周りはきょとんとしていたが、高橋の顔に少しだけ元気が戻った様子だった。
話を終えた桜木が笠原に抱きついた。
「また、悪いクセが出ているそうで」
笠原はまた無表情だった。
「なんの話し?」
桜木は本当にわかっていない様子だった。
「それよりもさーりょうちゃん、例の件さーやっちゃっていいからね」
「かしこまりました」




