傷心
それはある晴れた日に起こった。
甲上目掛けて一本の矢が飛んできた。
「しっかりしろ!」
桜木のその言葉で甲上は目が覚めた。
一瞬の出来事に放心状態だったのだ。
矢は桜木の右の二の腕に突き刺さっていた。
他の兵たちが守りを固めたが、それ以降、矢が飛んで来ることはなかった。
言葉を失い、足がすくんでいた甲上を桜木は無理やり立たせ、部屋の中に連れていった。
椅子に座らせると、自分は治療を受けた。
治療を終えた桜木が命を狙われすっかり傷心していた甲上に近づいてきた。
「普段の威勢のよさはどこに行ったのかな~?」
からかい口調の桜木に苛立つこともできない甲上だった。
すると、桜木がいきなり真面目な顔になった。
「自分の命すら守れないのに、心まで負けててどうすんの?」
急に涙が止まらなくなる甲上。
桜木は甲上が泣き止むまで抱き締めてあげたのだった。
その後甲上は自室で休んだ。
夕飯時。
甲上は起きてこなかった。
そんな甲上を桜木が起こしにきた。
「夕飯ですよ」
「いらないです」
甲上の声は元気がなかった。
桜木はため息をついてから、自分のベッドに座った。
「あなたのお父様は王の命を守って死んだ。
結果、この国を守った」
「私は自分の命すら守れない。
この国守るなんて夢のまた夢…
父とは違うんです」
「それでもあんたはこの国を守るため、変えるために監査官になった。
命は私が守る」
「えっ?」
桜木の言葉に甲上は驚いた。
「あんたの命は守ってやるから、あんたはあんたなりこの国を、この海を守って」
桜木からのまさかの言葉に甲上はすぐには返事ができなかった。
だがその後、食事を食べることができたのだった。




